見出し画像

大学広報におけるオウンドメディア運用の価値

「今さらオウンドメディアの話?」という気もするけど、大学広報に関わると、改めてオウンドメディアというプラットフォームの価値に気づく。先日書いた「大学広報のおもしろさと難しさ」でも触れたが、とにかく大学の中にはコンテンツ化できる素材が扱いきれないほど眠っている。ただ、日の目を見ないまま見過ごされてしまっている数も膨大だ。そんな素材を活用しきるために使えるのがこの「オウンドメディア」だと考えている。大学広報におけるオウンドメディア運用の価値については大きく3つ。そのあたりを今日は書いていこうと思う。

オウンドメディア運用の価値〜その1「多くの人に『認識』してもらうための情報発信ができる」


継続的に発信することで、Web上での認知・理解獲得につなげられる

いきなり当たり前すぎる話だけど、オウンド運用の最も大きい価値は「情報発信のプラットフォームを得ることができる」というところだ。もちろん今や大学でWebサイトを持つことは当たり前だし、SNSも活用できるので、それで十分なのでは?と思うのも理解できる。ただ、大学のWebサイトは基本全ステークホルダーが対象になり、内容が広範にわたる。その分、「広く浅く」「抜け漏れのないように」作ることが求められると言っていい。内容もやや堅めになりがち。SNSはそのプラットフォームの特性に合わせることが必要になるため、伝える深さには限界がある。

一方オウンドメディアは、自分たちの伝えたいメディアとしてのテーマを定める必要はあるものの、比較的自由に発信することができる。さらに構成も記事、動画、インフォグラフィックスなどさまざまな形を取ることができる。

何より重要なのは「大学が主語になりすぎないコンテンツ」が作れるということ。オウンドメディアの鉄則として「読み手のニーズを踏まえたコンテンツづくり」が必要になってくるが、となると必然大学の話だけをするような内容にしてはいけない。社会的に関心のあるテーマを踏まえながら、その中に大学の話を盛り込んでいくような形になる。一方的に「伝える」のではなく「伝わりやすい」コンテンツを意識して生み出すことができるようになるため、読みやすく、結果としてその大学の理解につながりやすくなってくるのだ。

そういったコンテンツには、社会的に関心の高いキーワードが入ってくる。通常の大学Webサイトは「○○大学」「○○大学 ×××」といった検索による流入がほとんどであるケースが多く、すでにその大学に関心を持ってくる人しか見にこない、ということになりがちだ。さまざまなキーワードが盛り込まれたコンテンツをオウンドメディアを通じて継続的に発信することにより、大学以外のキーワードで検索したユーザーが記事にたどり着くようになる。結果より多くの人が情報に触れ、その大学に関心を持つという流れを生み出すことができるのだ。

メディアからのコンタクトが増える

情報発信という意味では、単にオウンドメディアのアクセス数を追うだけではない。メディアの編集者・記者・リサーチャーなどは常に取材すべきテーマを模索しており、その検索ツールとしてWebを積極的に活用している。オウンドメディアで良質なコンテンツを発信していけば、その分メディアの目に触れる回数も増える。一般的にメディアに対してはリリースという手段を使ってコンタクトするケースは多いと思うけど、これには「新規性」が絶対的に必要になるので、大学の中でも頻繁にリリースできるようなテーマが見つからない、という課題を持っているところは多い。

オウンドメディアを使ってコンテンツを蓄積していき、記者が関心を持っているテーマについて検索したときにその記事がヒットすれば、取材につながる可能性も生まれるのだ。

オウンドメディア運用の価値〜その2「さまざまな広報施策に転用できる」


オウンドメディアで生み出されるコンテンツは、オウンドメディアの中に留める必要はない。いや、むしろ留めてはいけない。

大学広報では、いろいろな形での接点づくりが求められる。そういった意味で、広報誌やリーフレットなどの紙ツール、イベントなどのリアルの場づくりなども当然検討していかなければならない。

ただ、これはあくまで施策の「外身」であって、当然「中身」をしっかりと作り込むことが必要になる。そこで、オウンドメディアの活用だ。日々更新しているコンテンツをうまく転用して広報ツールが作れないか、うまくテーマ化してイベントを企画できないか。そんな形で、施策の検討をするときにあわてて中身を整理するのではなく、すでに公開しているコンテンツを活用しながら組み上げていくことができるのだ。このようにコンテンツの蓄積があることで、ほかの施策もより円滑に進めることができるようになるのもオウンドメディアの強みと言える。

オウンドメディア運用の価値〜その3「学内外ステークホルダーとの関係構築・モチベーションアップ」


全員ではないだろうけど、メディアに取り上げられてうれしいと思わない人の方が少ないのではないだろうか。メディアで取り上げるということは、すなわち「その人の価値を認めた」ことによる結果だからだ。

大学では人や活動、成果などを告知するとき、一般的にリリースや大学Webサイトのニュースコーナー、広報誌などを活用する。ただ先に書いたようにリリースには新規性やインパクトが必要になるし、広報誌については制作回数を一気に増やすことは難しい。せっかく広報チームに上がってきても取り上げられず、日の目を見ないままになってしまっている情報も多いのではないか?このようなことが続くと当然「どうせ取り上げられない」「こんな情報は渡すほどのものではない」と各自が判断してしまい、貴重な広報素材が眠ったままになってしまう・・という結果になってしまう。

そこで、オウンドメディアだ。何でもかんでもは難しいが、リリースや広報誌に比べれば取り扱える幅も数も広げることができる。取材を通じて学生や教員・研究者といった学内はもちろん、企業や有識者といった学外の方とも関係を作るきっかけを生み出せる。オウンドメディアで取り上げることによって取材対象者のモチベーションを高められれば、「情報を渡すことで、取り上げてもらえるかもしれない」という機運を高めることにもつながるだろう。そうなればしめたもの。リリースや記者発表会につながるような情報も集まってきやすくなり、結果として広報活動全体が積極化していくことになっていくだろう。

このように、オウンドメディアは単純に情報発信のプラットフォームを広げるというだけではなく、広報活動全体を活性化させることにつなげられる可能性を秘めた取り組みと言えるのだ。とはいってもオウンドメディアの運用はコストも人手もかかり、気軽な気持ちど取り組むのは難しいのもまた事実。機会を見て運用のコツなんかもまとめていこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?