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読了「13歳からの地政学」

私は学校で地政学という科目を勉強をしたことはない。今どきの中高生は、地政学を教わったりもするのだろうか。歴史も政治も地理も大切だが、他国との関わりを考えるベースとして、とても大切な内容だと感じた。

田中孝幸・著「13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海」を今日、読み終えた。いつだったか図書館で予約してあった本。高校生の大樹と、中学生の杏の兄妹が、カイゾクと勝手に名付けていた人から7日間、地政学の話を聞き、学びを深めている内容。

内容は、関心を持って過ごしているなら、学校で勉強していなくとも、大人なら知っていることが多いように思った。私も、忘れていた内容もあったが、初めて知る内容は少なかった。

友人は「概論」と表現していた。具体例というよりは、土地・海・民族への考え方、それから、こんな歴史の背景から、という話の展開。

それでも、子ども向けと侮る内容ではない。子ども向けだと感じるのはストーリー設定くらい。出版は今年なので、地政学に関しての時代遅れ感はない。

これだけの内容を常識に近い感覚で持っている大人が、大多数とも思われない。大多数であれば、国内だけでも、もっと違った世の中になってきただろうと思う。

平和・他国理解・他国の人とのコミュニケーションを考えるときに、きっと役立ってくるだろうと思う内容だった。

日本を外から見たら、というのはなかなか想像しにくいだろうと思う。世界最古の王朝が続く国として、皇室に畏怖に近い感覚を持たれる、というような話は聞いたことがあった。

その他にも、日本の立場は書かれていた。

加害者側になったことのある、世界の中では少数派の国であることは、関わった戦争から時間が経ったとしても世界の中では変わらない。法的には解決したはずの問題までもが、今でも問題として出てくる背景も書かれていた。国内向けの戦後の対処と、国外から見た認識は違う。

個人的には、日本が経済大国という前提に違和感を持ったが、実際には大国の仲間ではあるのだろう。世界3位が実感として正しい感じはしないが。3位が正しいかはともかくとして、実感が伴わないのは「大国病」のせいも一部あるということか。

日本は小さな島国だが、海底の深さなど立体的に考えた場合の国内の空間は実はかなり大きい、という話は、忘れていたことも含め少し驚いた。

日本だけではなく、話は新旧の地球儀のあちらこちらに及ぶ。

カカオ中毒気味な私としては、アフリカの話を興味深く読んだ。「5日目 絶対に豊かにならない国々」という章。なぜアフリカ大陸の国々は貧しいのかの背景。その後は、これから必要なことがシンガポールを例に書かれていた。

貧しさの背景は…

欧米のリーダーたちによるイメージ戦略で、アフリカは気候が厳しいから貧しい(天災)とされてきた。
タックスヘイブン経由で、累計100兆円ともいわれる莫大なお金が、アフリカから欧米へ流出している。
流出しているのでは、国内にお金・教育が循環しない。
カカオはたくさん作られていても、チョコレート工場を運営できる設備費・技術・教育が足りない。
同じ民族でまとまりたくなる力を無視した直線的な国境。
欧米では、黒人などの有色人種を、奴隷や劣る人間として扱ってきた歴史の方が長い。

事情は複雑ではあるが、今の時代からは悪意として感じる。

本に出てくる「今の当たり前は未来の当たり前ではない」という言葉は、当然のことと思っていたが、それをいつもより深く感じた。「差別の反対語は交流だ」というカイゾクの言葉も、この章の中で見ると重い。

7日目まで話が終わった後の、カイゾクから兄妹への問題。
私の解答は杏に同じだった。

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