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出木杉くんは"理想のお友達"なのではないか

前回はドラえもんを題材にしましたが、今回は出木杉くんについて触れていきたいと思います。前回の記事を読みたい方は、こちらから是非。


ちなみに筆者は平成元年生まれなので、平成の大山のぶ代版アニメ・映画(のび太の結婚前夜まで)をもとに考察しております。
新・劇場版は見ていないため、全く考慮していません。ご了承ください。

0.出木杉くんってだれ?

そんな方は、なかなかいないかと思いますが、ひとまずここではさらっとおさらいしましょう。

ざっくりいうと、のび太くんのクラスにいる成績優秀な男子生徒ですね。Wikiによると、

  • 学業優秀でスポーツ万能、かつ誠実で容姿端麗な優等生である。

  • 趣味は、料理、写生、映画鑑賞、絵画鑑賞、野球、サッカー、交換日記、昆虫観察、天体観測、読書、演劇、文通、と幅広い。

というわけで、もはや非の打ち所がないキャラクターなわけです。

さて、では優秀であれば『理想のお友達』でしょうか。
いいえ、そんなことはありません。
優秀有能で嫌味なキャラクターなどいくらでもいます。

容姿端麗だから?
優秀なのに鼻にかけないから?
格好つけてないから?

いいえ、違います。
というわけで、どうして違うのかについて触れていきましょう!

1.頭ごなしに否定しない

基本的には映画に登場しない出木杉くん。
恐らくのび太達とは、絶妙な距離感のクラスメイトなのでしょう。
メタ的に言うのであれば、出来すぎるがゆえに参加させられないとも取れます。

さて、そんな出木杉くんだからこそ説得力のある会話を、のび太と交わしているシーンがあります。

そう、『ドラえもん のび太の魔界大冒険』です。
この映画では、ドラえもんとのび太がひみつ道具のもしもボックスで魔法のある世界を生み出し、その世界で冒険を繰り広げます。

ただ、その少し前。
のび太くんが出木杉くんに魔法について相談するシーンがあります。

「魔法が使えないか?」と考えたのび太くん。
ドラえもんには「本気でそんなことを」と頭を抱えられ、しずかちゃんには「誰だって空想はするけど、空想は空想」「魔法なんてない」と言い切られてしまいます。

しずかちゃんは普段ならそこそこ優しいですが、結構ばっさりですね。(ドラえもんは科学の結晶なので、そりゃそうなるよねという感じではあります)

「本当にそうかな」とふたりのもとを去るのび太くん。
じゃあ、昔から世界にある魔法の話は嘘なのか?と考えたあと、物知りの出木杉くんに確認しようと家に突撃します。
(その行動力はなんなんだ?という気もしますね!)

「笑われるかもしれないけど」と魔法の実在を相談するのび太くん。しかし、出木杉くんは「笑わないよ」と返した上に、

魔法も昔はちゃんとした学問として研究されていたよ、と教えてくれます。

昔の人は神や悪魔などの人間以外の大きな力で支配されていると考え、やがてその力を味方につけたいと考えた。古代人はかつて星の動きで運命を占い、それが天文学の基礎になった。錬金術も科学の進歩に役立った。

科学も魔法も、根はひとつなのだ。と出木杉くんは言います。

まず、この言い回しがすごいなという話もしたいのですが、
脱線が著しいので、ここでは一旦やめておきます。

さて、ここまで出木杉くんは魔法の存在を一切否定しないわけですね。その上で、のび太くんにも分かりやすいように「かつては研究されていた」という事実を説明してくれています。

しかし、やがて魔法が『神に背く悪魔の学問』として扱われたとして、魔女狩りの話にも言及します。そして、あとから発達した科学が魔法に関連していた迷信を暴いてしまったことにより、魔法は学問ではなくなってしまった──というわけです。

もちろん、そのあとで「魔法はもうないの?」という問いに、「ない」とはっきり答えていますが、

魔法もかつては学問のひとつだったが、科学によって息の根を止められた

という話をした上で、「あるはずがない」と笑いもせずに説明してくれるわけです。

頭ごなしに否定せず、笑いもせず、きちんと話を聞いた上で答えを返してくれる。

理想的なお友達すぎる印象です。

2.「知らない」といえる素直さ

次に、『ドラえもん のび太の大魔境』でも、ちらりと出木杉くんが登場します。

ここでも、衛星写真に写った秘境の人工物について、
のび太くんが「出木杉に見せよう!あいつ物知りだから!」という雑な感じで見せに行くわけです。大人より信頼してる……。

「こんなの初めて見た」と出木杉くんは言います。
大体の場所をドラえもんから聞いた出木杉くんは、そこが『スモーカーズフォレスト』でNASAが名付けたのだと、大人も真っ青な知識を披露してくれます。お前は何者なんだ?

さて、ここのポイントは

  • 相手から物知りとして頼られている

  • 相手は何も知らない状態である

にもかかわらず、出木杉くんは知ったかぶりをすることもなく、
知らないものは知らないと伝え、これではないか?という情報を与えてくれます。

これによってドラえもんとのび太くんは「魔境を見つけたぞー!」とテンション爆上がりになるわけなので、冒険のきっかけを出木杉くんが作ったことになります。

3.遊びにもしっかり参加する

ここまで博識キャラとして映画に出てきていた印象の出木杉くんですが、『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』ではスネ夫やジャイアンと一緒に特撮映画の製作に勤しんでいます。

SFは永遠のロマンだからな……。

しかも、出木杉くんは確か発火装置を担当していました。
君、すごいな……?

勉強だけではなく、遊びにだって参加してくれるわけですね。
たぶん、火薬の量とか爆破のタイミングとか装置の設計とかまでしてくれていたかもしれません。

4.彼は「理想的なお友達」

映画では都合良く博識キャラとして使われているだけ。
大人(や、新しいキャラ)を出すのが面倒くさいだけ。

そういう見方もできますが、それなら「魔法なんてない!」と最初から否定して「科学によって打ち負かされたのだ!」「そんなものは有り得ない!」と知識総動員で論破してくれてもいいわけです。

しかし、そうしない。
それが、出木杉くんの魅力なんじゃない?というわけで、
ここでは出木杉くんは「理想的なお友達」といえるだろうと結論づけました。

のび太くんにとって、とも言えますが、

むしろ、大人になってからの方が、こういう人間性を持ったお友達の存在が助けになってくると思います。

大人も、彼のようになりたいものですね。

否定せずに傾聴すること
知らないことを誤魔化さないこと
遊びの誘いを無下にしないこと

このあたりは、大人になっても、
いや、大人だからこそ、学べる部分ではないかな、と思います。

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