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誘導しない、騙されない本物のヒアリング力

こんにちは、独立して3年目の経営コンサルティング、顧問業をやっている松本です。

新卒でコンサルティング会社に入社し、マネージャーを経て、ベンチャー企業にジョイン。役員として数年経営全般に関わり、退任後に複数のベンチャー企業の取締役、アドバイザーをやっています。

経営や投資を通じての日々の学び、気付きや自分の頭で考えたことをnoteにまとめていきます。

今回は、ヒアリングについての記事です。と言っても、いわゆるヒアリングのテクニックではなく、ヒアリングの中に潜む罠と、その罠への対処法についてお話しします。10分程度お付き合いください。w

<要約>
・ヒアリングをする目的は以下の3つ

 1 / 課題の発見やニーズの理解
 2 / 現状の把握や実態調査
 3 / 仮説の検証
・ヒアリングで最も大切なことは、信頼性のある正しい情報を聞き出すこと
・正しい情報が聞き出せない3つの罠
 1 / 誘導尋問になる罠
 2 / やさしい嘘をついてしまう罠 
 3 / 自分をよく見せたい、守りたい罠
・罠からの脱却条件
 1 / 自分の仮説が正しいという期待や願望を疑うこと
 2 / 無意識の遠慮や忖度がうまない環境を設定すること
 3 / 見栄を張る必要がある状況を作らないこと

◎ ヒアリングの目的と最も大切なこと

ビジネスシーンで使われるヒアリングには、相手の要望や意見、意向などを聞き取るという意味があり、相手の話を聞くという受け身の意味合いだけではなく、相手から”聞き取る”といった能動的に情報を引き出す、取りに行くといった行為の意味が含まれます。

そのためヒアリングは、業界や職種を問わず多くの方が活用する機会があり、どんな職種にも必要になってくる重要な行為だと言えます。

ヒアリングには、大きく分けて以下3点の目的があると考えています。

<ヒアリングの目的>
 1 / 課題の発見やニーズの理解
 2 / 現状の把握や実態調査
 3 / 仮説の検証

例えば、1で、誰かから何かを依頼されるような場面では、クライアントはもちろん上司や部下に対して、求められている期待値をきっちりとアウトプットするためには相手の課題やニーズを正確に理解し、自身の認識との整合やギャップを埋めていきます。

また、2のような調査の場面であれば、過去に起きた事実や現状がどのような状況、状態なのか?を正確に実績を把握するために、適切なヒアリング相手の選定やヒアリング内容を検討していきます。

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最後の仮説検証においては、思いついた仮説が本当に的を得ているのか?を検証するために、ヒアリングを通じて、正しいことの確認と修正すべきことを特定していきます。

そんな誰もが避けて通れない、且つ重要なヒアリングですが、落とし穴があります。この落とし穴にハマる原因はいくつかありますが、結果は共通しており、それは『正しい情報を聞き出せないこと』です。

正しい情報を聞き出せているつもりでも、あるいはヒアリングされている側さえも正しい受け答えをしていると認識している場合であっても、このような落とし穴にハマってしまいます。

次章では誰もが行うヒアリングだからこそ気付きづらい落とし穴について、まずは原因から解説していきます。

◎ 正しい情報が聞き出せない3つの罠

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1 / 誘導尋問になる罠

「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。 多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」と言われるように、人には自分の仮説が正しいと信じたい本能が働きます。

例えば、何か仮説を持ってヒアリングにのぞんだ場合、無意識にその仮説の正しさを証明する要素だけに絞って質問してしまったり、都合の良い解釈してしまったりします。ある側面からすると正しいヒアリング内容だったとしても、それが実態をとらえていなければ、効果的なヒアリングになっているとはいえません。

2 / やさしい嘘をついてしまう罠

人は相手の期待に答えたい、嫌われたくないという本能があります。ヒアリングされる際、特にヒアリングする人が上記のような期待を持ってのぞんでくる場合、相手の意向に沿った形式や希望に沿った回答をしてしまう傾向に陥ります。

多くの場合、自分自身がやさしい嘘をついたとすら気づいておらず、むしろついた嘘が真実なんだと後から認識、認知を歪んでしまうことすらあります。この原因も、非常に気付きづらく危険な罠になります。

3 / 自分をよく見せたい、守りたい罠

2とすこし似ていますが、人には、自分をよく見せたいという本能があります。例えば何かミスをしてしまった場合、自分の不注意や能力不足だったりをありのままに告白するのは、すこし躊躇われるものです。自分にマイナスなことだったり、あるいは自分をより良く見せたいという方向づけによって、事実が隠蔽されたり、誇張されて伝わってしまうことがあります。

他にも「○○をご存知でしょうか?」など相手が知っている前提で会話を始めると、見栄やプライドが邪魔をして事実に反したやりとりが繰り返され、実態をとらえるという意味では、ヒアリングとしての信頼性は高くありません。

これらの原因は、聞き取る内容が間違っているとか、聞く技術が足りないから生じるような類のものではないことがお分かりいただけるかと思います。それ故に、社会人経験の長いベテランの方でもハマってしまうことも多く、かつハマっていることにも気づきづらいという厄介なものなのです。

では、ここからはどのようにこれらの罠を回避してゆけばいいのかについて、解説していきます。

◎ 罠からの回避条件とテクニック

罠の回避について、前提となる考え方とテクニックに分けてお話しします。

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1 / 誘導しないためには

誘導尋問にならないヒアリングのやり方として、自分の認識が合っているのか常に疑い、何度でも確認することが必要です。誘導になってしまう原因は、自分の仮説が正しいはずだという無意識による期待で、そこを疑うことが確証バイアスからの脱却につながります。

誘導を回避するためには、この前提に立ち、以下のようなテクニックが有効です

<Tips>
・中立的な言い回しにする
「あっていますよね?」など強い確信や断定するような聞き方ではなく「○○でしょうか?」といった中立的且つ、相手の意見を引き出せる言い回し方にする。

・科学者になったつもりで観察する
観察とは目の前の現象をありのままの状態で客観的に見ることです。科学者の目を持って、語り手の言動を細かく観察してヒアリング目的に合致した正確な情報を入手する。

・二名体制によるヒアリング
誘導したヒアリングをしていないか、中立的な視点、立場でヒアリングを行えているか、ダブルチェックできる体制にする。

2 / 嘘をつかせないためには

嘘をつかせないために必要な考え方は、嘘をつかせてしまう必要や余地をなくすことです。嘘をつかせてしまう原因は、ほとんどの場合相手に対する無意識の遠慮や忖度です。これらが発生しないよう、以下のようなテクニックを用いつつ、嘘が発生する回数を減らしていきます。

<Tips>
・相手を身近な人ではなく普段関わりのない第三者にする
頼みやすい理由で身近な人にヒアリングするのは極力避ける。既に相手と好意的な関係にあり、ヒアリング内容に対して、相手の望む回答や事実ではない解釈が混じった回答になるため、望ましくないです。

・語り手の意見ではなく過去に起きた事実を聞く
記憶が曖昧な意見や未来への願望ではなく、最近何を買ったのか、どこにいったのか、誰といたのかといった5W1Hを活用した過去の体験をベースに事実に基づいた情報を入手する。

・思い込みや曖昧な回答にならないよう数字や図で確認する
定性的な回答は、例えば「頻繁に発生する」などは「週に何回なのか?」数字に置き換えて回答をもらう。また、円グラフなどを用いて全体のうちどのくらいの割合を占めているのか?など図や可視化して正確な情報を入手する。

3 / 自分をよく見せない、守らせないためには

最後に、自分をよく見せたいという本能からくる罠への対処です。これは、要因と同じで対処法も2と似ています。すなわち、相手が誇張をしたり事実と異なる発言をする余地をなくしていくことです。さらに、こちらは自分をより良く見せたいという見栄のような感情も働いているので、見栄を張る必要やプライドが邪魔する状況を作らないということも大切です。

具体的なテクニックとしては以下のようなものが挙げられます。

<Tips>
・語り手ご自身の感じたことや思いを聞く
質問の前に一般論やこちらの意図、背景を伝え過ぎると後に回答する判断がゆがめられ、質問者の意図を汲み取ったり、求めている回答に近づく傾向になります。そのため、語り手ご自身の感じたことや率直な思いを聞ける環境や前提を作り、相手の意見を染めないことを心掛ける。

・カタカナや専門用語や曖昧な表現は避けて言葉を選定する
誰でも理解ができ、認識の違いや理解の差が生まれないように難しい言葉や専門用語を極力使用しない。きちんと理解しないまま、わかったふりをしたままヒアリングが進むと、間違った情報に間違った解釈や事実が積み重なるため、質問に対する回答や情報に全く信頼性がなくなる。

・ストレートで端的な質問を心がける
「○○ご存知ですか?」「○○流行ってますよね?」などの一般常識やトレンドについて、あたかも知っているかの前提での前置きやフレーズは控える。また、自分の体験談やうんちくをひけらかす必要はないです。知らないのに知っているフリをしてしまったり、その後のヒアリングでも見栄を張る必要があると感じさせてしまう可能性があるため、前置きやまわりくどい質問は避ける。

これらに共通するのは、聞いたものや自分自身の考えや意見を鵜呑みにせず、疑ってかかるということです。自分が間違っているかもしれないと考えるのは、少し受け入れ難いかもしれないですが、これを行うことによって本当に役に立つ、正確な情報を入手にすることが出来ます。

◎ まとめ

今回の記事の内容を、箇条書きにしてまとめました。

・ヒアリングをする目的は以下の3つ
 1 / 課題の発見やニーズの理解
 2 / 現状の把握や実態調査
 3 / 仮説の検証

・ヒアリングで最も大切なことは、信頼性のある正しい情報を聞き出すこと

・正しい情報が聞き出せない3つの罠
 1 / 誘導尋問になる罠
 2 / やさしい嘘をついてしまう罠 
 3 / 自分をよく見せたい、守りたい罠

・罠からの脱却条件
 1 / 自分の仮説が正しいという期待や願望を疑うこと
 2 / 無意識の遠慮や忖度がうまない環境を設定すること
 3 / 見栄を張る必要がある状況を作らないこと

最後に、Twitterで毎日ベンチャー経営やエンジェル投資を通じての『学び』や『気付き』について投稿しています。


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