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バス置き去り事故を二度と起こさないために、何ができるか。

こんにちは、かじつそろばん教室代表の高橋よしろうです。

2022年9月5日、静岡県の川崎幼稚園にて、3歳女児がバス内に置き去りになり、熱中症で亡くなるという大変痛ましい事故がありました。

ちょうど私、保育園に3歳の娘を通わせています。それもあり、人生で一番ショックを受けたニュースと言っても過言ではありません、正直2日間仕事できませんでした。

そして話を詳しく見てみると、運営側の気持ちもわからなくはないです。なぜなら、自分も教育業の端くれ、コストと安全性の兼ね合いを日頃からかんがえているからです。

完全に『消費者』だったら、いっそ良かった。でも自分は経営者です。

感情論だけで終わらせてはいけないし、「気を付ける!」「ダブルチェック!」のようなヒューマンエラー&継続を考慮しない意見で終わらせてはいけないなと。

Twitterにて「自分ならこうする」をたくさん書きました。

ただTwitterは後から見返しづらいフロー型のため、自戒を込めて、定期的に自分の目につくところに記事を置いておきたく、noteに転記します。

自分はもちろん、この記事を見た方の心に少しでも想いが届いたら嬉しいな。

本編

3歳の娘を園に通わせる親であり、一方で、未就学児も多い教室の経営者であり。共通点が強すぎて、自身の共感性がズタズタになるとわかってるのに、両者の苦悩や心情が浮かんでは、狂いそうになる。親として、教育業の経営者として、二度とこんなことを起こさないためには、どうすれば良いのか考える。

親として。バスの話は一旦置いて、まず『1人にならない』よう、日頃から徹底して言い聞かせること。騒いで、泣いて、まわりに疎まれるかもしれないけど、そこは親の愛でカバーできると思う。まず生きててくれれば、他はいいよ。

バスや車で置き去りになったら。これはもう色んな所で言われてるけど『クラクション』は絶対伝えておこう。これは事故か何かで、自分以外動けないときも有効だしね。非常時、気が動転してても想起できるよう@yaco1981さん作のシールとか車内に貼っておくと良いんじゃないかな。

ただクラクションは子ども、しかも3歳の力じゃ押せないことも多いので、お尻で押したり体重かけて飛び込んだりとか、そういう練習もさせておきたい。言葉のやりとりがちゃんとできるようなら、歳がもう少し上なら、252とか教えておくと、知ってる人は確実にすぐ飛んできてくれる。

「人間は意外とすぐ死ぬ。特に子供は」ということ、忘れちゃいけない。「なぜエアコンや床暖房のリモコンは、高いところに設置されてるのか」もちろん、大人が操作しやすいというのもあるけど、幼児の手が届かないようにするためでもある。『外気温36℃のときに暖房押してた』をなくすため。

川崎幼稚園の実態はどうだったのかな。外から見て、入園前説明会を聞いて、おかしいと思える要素はあったのかな。クチコミもHPも、今は確認できない。職員の人数は足りていたのか。研修は、笑顔は、余裕は足りていたのか。園選びに悩んだ経験もある手前、思いを馳せずにはいられない。

一方、経営者として。ひとつの事業、ひとつの施策を始める前には、できる限りの想像をめぐらせたい。人はミスをするし、「めんどくさい」に弱い。だからヒューマンエラーとサボりを前提に、それでも事故が起きないための、仕組みを、仕掛けを、文化を。社員から鼻で笑われるくらいのビジョンを。

ハインリッヒの法則「1件の重大事故の裏には、29の軽微な事故と300の怪我に至らない事故がある」というもの。今回の園長は「いくつものミスが重なった」って言ってるけど、これはそもそもの前提が間違っていて、1件の重大事故なんて、そんなものはない。

小さな小さな『怪我に至らない事故』が積み木のように重なり、一定の高さになると『軽微な事故』へと名を変える。さらにそれが集まり『重大事故』と名を変える。まさに氷山の一角。

だから経営者として考えるべきは『怪我に至らない事故』を一個一個つぶしていくこと。理念と現場の声を擦り合わせ、フェールセーフ・フールプルーフを埋め込んだ仕組み化をすること。今回のバスに限るなら、添乗員が後ろに座る、園児のバッグを預かる、靴を脱いでもらうのは有効だと思う。

あとは置き去りが発生しても早く気づける仕組みもセットで考える。バス搭乗の際に連絡帳を預かって、先生がお昼記入する流れにする。あと搭乗前・降車後で点呼すること。各バスは園に到着後、その人数を記帳。朝の会で各クラスで取った出席数と照合するなど。せめてあと2時間、気づくのが早ければ…。

限られた予算の中で、どうサービス品質を上げていくか。優先順位を付け、何を選び、何を捨てるか。とはいえ「ウチは給食を最高にするので、安全性は捨てます!」は許されない。が、『最低限』だけの導入でも、人手・お金・手間・時間はかかる。じゃあ、月謝や保育料を上げる?

いやいや、相場がある上、保育系は過剰に取れない規定がある。では、どうするか。しっかり考えたいけど、テクノロジーの発展は無情にも待ってくれない。年々便利になる世の中。「◯◯に対応してないの?」問い合わせは増える。

ここで場当たり的に、新サービスを導入してはいけない。それが後々、今後の発展を妨げることに繋がるかもしれないから。ヘタに論理的思考力や問題解決力が高いと、今時点での所持カードで根本解決したくなる。不安やストレスをサッと解決して、他のことに創造力を回したくなる。

『ネガティブ ケイパビリティ』という概念がある。不確実さ、不安の中で、性急に答えを出さない力。正しく問題を把握するには、未来を想像するには、関係各所と話し合うには時間がかかる。すぐに解決しないで『未来を楽にする根本解決』のために、一時しのぎ策を選択することも大事。

話が長くなってしまった。いずれにせよ、結論は「コミュニケーションから逃げてはいけない」「情報発信は優しさ」「経済的に追い込まれるな」ということ。施策の理由や取り組みは、HPやSNSで公開する。保護者様も安心しやすいし、話し合いをするときの土台にもなる。乗っかってもらいやすくなる。

システムとして外注するならウン百万するものも、保護者様にひと手間分お願いすることで解決できることも多い。ただお願いするにも、日頃から良い関係が築けていないとむずかしい。だから日頃から教室、園を知ってもらえるよう発信する。

そして発信だけじゃなく、相互的なコミュニケーションを取れる仕組みも用意する。ただ電話のようなリアルタイム1on1ツールは安易に導入すべきではない。電話を受けてる際、他のこどもを見れないから。導入するなら専属スタッフ1名分の人件費、かつその人に情報が集まるよう全体の仕組みを作らないといけないから。

「経済的に追い込まれるな」人ががんばることで高められるものと、高められないものがある。そして安全は完全に後者。どれだけ凄い人でも、部屋の仕切りがあるなかで、2クラス同時に見れないでしょ?『お金はなくてもがんばれる。でも人は雇えない』こと、心に留めておこう。

「お金じゃない」を実践し続けるには、利益を積み重ねないとダメ。チリの軍人ピノチェトの聖職者に対する言葉「あなた方は哀れみ深く情け深いという贅沢を自分に許すことができる。しかし私は国家元首として、国民全体に責任を負っている。」優しい世界をつくるなら「良い人と思われたい」は捨てよう。

今は検索全盛で下調べしてから、コンタクトを取るのが常識の『第0印象』が大事な世の中。だから情報は出そう。もちろん整形の手間は必要だけど、それも思考の整理にもつながるから。透明性の確保にも繋がる。未来の新入社員へのバトンにもなる。優しい世界をつくっていこう。

終わりに

「川崎幼稚園ひどいね」と思った方も多いのではないでしょうか。

ただ多くの幼稚園を取引先としている企業の取締役が私に言いました。

「正直、同じようなところは多いです」
「幾つも幾つも思い当たる」
「思ったよりこの業界、ヤバいです」

だそうです。

教育含めサービス業は、境目があやふやになりやすいですよね。親切心でおこなったことが、いつしか当然だと思われてしまう。利用料金内でのサービスだと思われてしまう。

そこをあやふやなまま長く続けることで、どんどん自らの首が絞まっていく。

だから、やらないことを決めましょう。

あなたが個人事業主で、かつ独身であれば良いと思います。

ただ組織をつくるなら、家族がいるのなら、線引きを明確にしておかないと、あなたの従業員や家族に、しわ寄せがいきます。

あなたの決断と行動が、大事な人を守る。

優しい世界をつくっていきましょう。

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