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オープンロジの資金調達が凄い7つの理由

はじめまして。TAKA(@Murakami_Japan)です。

今日、株主であり資本業務提携をしているオープンロジが資金調達を発表しました。総額17.5億円、累計調達額27.5億円!!

金額も大きいのですが、それだけだとここ数年のスタートアップファイナンスの大型化のトレンドからすると然程ニュース性はないかもしません。それでも今回オープンロジの資金調達は(手前味噌ですが)結構凄いと思います。特筆すべき7点をご紹介したいと思います。スタートアップ経営者を中心にエコシステムに関わる方の参考例となれば嬉しいです。

はじめに: オープンロジの概要

グローバルでEC化のトレンドは拡大するばかりです。生活の利便性が向上する一方、物流インフラには大きな負担が発生しています。運送会社のドライバー不足は社会問題に発展しており、倉庫業界のDXの遅れも指摘されています。そんな社会課題の解決に向けて、急成長するEC物流に対応した、すぐに始められて、必要なだけ使える、EC購買システムに簡単に接続できる、システム&オペレーション(保管・配送を請け負う)を提供しているのがオープンロジです。

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IT業界との比較のアナロジー
90年代はインターネットが普及し始め、合わせてWEB上の様々なサービスが勃興しました。所謂ITバブルという奴です。その頃はサーバーやデータセンターを構築するだけでも専門知識が必要で、また大きな投資が必要でした。インフラ整備それ自体がIT産業にとって大きなビジネスであり、またインフラを活用するサービス提供者としては大きな負担でもありました。サービス提供者にとって、より良いサーバーやデータセンターを構築できていること自体が競争力になっていた時代です。それが今や、アマゾンが提供するAWSなどのクラウドサービスで置き換わり、誰でも、簡単に、インターネット上のサービス提供が構築できるようになりました。まさにAWSは「敷居を下げる」サービスと言えます。

オープンロジのサービスもAWSと同様の特徴(「敷居を下げる」)があります。倉庫をネットワーク化し、配送網と接続し、それをEnd-to-endでデジタルに接続することで、EC事業者にとってボトルネックである物流の敷居を下げたのです。物流のプロでないEC事業者が、物流に悩むことなく、競争力のある物流サービスを活用できるようになります。アマゾンが物流に積極投資していることからも、物流がいかにEC事業者の競争優位性に関わる重要なものかわかると思います。オープンロジは物流をAWSのように誰でも使えるサービスとして提供しています

ECのEnablerという意味では、サービスは異なりますが、BASEや Stores.jpと同類です。EC化のトレンドを支える黒子企業でもあります。

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物流費に占めるIT費用は大きい
物流コストで外部からは見え難いのは、単に保管し配送する以外のシステム開発費用やその後のシステム運営費用です。実は物流総費用において、ITコスト負担が大きいのが実態です。EC事業者がサービスを変更すると、システムだけではなく物流オペレーションも含めて全体を見直す必要があります。加えて、リアルにモノが動くため、オペレーションの安定性が非常に重要になります。確実かつスムーズに動くためには、システムとオペレーションを統合的に管理する必要があり、安定性の確保に大きな人的負担と費用がかかっています。

商品が急に売れ出したり、SKUが増えると、物流のキャパシティ確保やオペレーションの複雑性が増すことへの対応が必要になります。高度成長期のダイエー等の伝統的な小売事業においては、物流そのものが競争力であったため、商流の最適化に多大なコストをかける意義は存在していました。一方、EC事業者の粗利率が高いため、物流効率化で利益率を0.1%改善するよりも、サービスの磨き込みやユーザーを獲得への投資の方がリターンが高く、物流への投資は二の次になる傾向があります。

ECも全国配送をするようになると、物流ネットワークもそれに応じて分散したくなります。分散化は通常は大規模EC事業者でないと享受できませんが、ネットワーク化したオープンロジのサービスを使えば、メリット享受が可能になります。

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①:コロナ下での資金調達

背景
本格的に調達活動を始めたのは2020年3-4月、緊急事態宣言前後のタイミングでした。タイミング的には、いきなり出鼻を挫かれたわけです。物流サービスなので、倉庫等の感染症対策の確認など、オペレーションの対応も含めて大変な時期にも重なりました。(※これらは持ち前のオペレーション力で迅速な対応で乗り切ってくれました)

各投資家の反応が不透明だった時期で、資金調達完了までの時期が読みづらいタイミングでしたが、経営陣は焦らずしっかりとプロセスを進めていました。

早い段階で幅広い投資家候補をリストアップして、各投資家候補の期待値はポイントなどを早めに確認できたことがよかったのだと思います。現実的な選択肢を絞り込みながら、複数の選択肢を比較し進めることができていました。

また、調達完了までのリードタイムについても一定の余裕があったのがよかったと思います。比較的キャッシュフローが回りやすい事業でもあり、時間的な余裕を持ったプロセス設計はうまく行った点だと思います。

②:デット性と資本性の組み合わせ

今回17.5億円を調達しています。詳細は非公表ですが、かなりの部分をデット性の資金調達で補っています。これは大きな特徴だと思います。

実は、今回合意したバリュエーションは昨年時点で経営陣が想定していたよりも低い価格です。コロナを含めた外部環境変化など、当然様々な背景があるわけですが、昨年対比の期待値ではそれが実態です。

ただ、それを持ってこのラウンドが失敗だったとは捉えていません。寧ろ、無理にバリェエーションを引き上げるよりも、以下の2つの点を重視していました。

1)必要金額をしっかり調達し、希薄化をコントロール(無理して取りすぎない)

2)エコシステムの拡大を狙う(事業会社からの資本調達)ため、全員が参加できるバリュエーション目線で実施する

この2つの点を軸に意思決定し、プロセスをハンドリングしていました。この2点がなければ、もっと金額を最大化したり、もっとバリュエーションを引き上げる選択肢はありました。この2点をしっかりと見定めていたからこそ、ブレることなく資金調達をやり切れたのだと思います。

デット性と書いていますが、純粋な資本ではない形でできる限り多くの金額を調達することに成功しています。デットの選択肢を並行して固めていったことで、希薄化を抑えつつ、無理せず最適なバランスで必要な資金を集めきることに成功しました。

③:エコシステムを拡大する資本提携戦略

オープンロジのオペレーション&ITシステムは2013年の創業以降、数々の磨き込みによりかなり完成されたものになっています。今後のグロース期に向けて、オープンロジ・エコシステムを拡大させることも今回の資金調達の狙いの1つでした。

EC物流としての競争力を高めるためには、荷主、倉庫会社、配送会社といった3つのステークホルダーをできる限り巻き込んでいくことが重要になります。もちろん自前で拡大することもできますが、アマゾンや楽天のような大手EC事業社の物流への影響力は非常に大きく、それと同等以上の物流ITサービスを提供するには、大手企業のネットワークを活用することが重要だと考えました。

これまで調達を通じて、住友商事、双日、伊藤忠商事という商流において大きなネットワーク(倉庫含む)を有する大手商社、と大手物流会社セイノーという4社とのアライアンスを強化するスタートラインに立つことができました。今後も、事業拡大に合わせて効果的にアライアンス戦略を活用していくことになると思います。(※アライアンスに興味がある方、是非ご連絡ください)

オープンイノベーションの難しさ
これまでも大手企業1社と強固なアライアンスをするようなオープンイノベーションは複数事例があります。
一方で、大手企業を複数社同時に巻き込むアライアンス戦略を資本を絡めて実施した例はそれほど多くないのではないでしょうか。このような難しいかじ取りを経営陣は実行仕切ったと言えます。その背景には、プロダクトやサービスの魅力が高い状況を事前に作り込めていたことが影響していると思います。
おそらく、もっと早いフェーズで、等距離外交で複数大手企業と交渉しようとしてもうまく行かず、もっと特定企業との独占的なアライアンスになっていたかもしれません。その意味で、今回のラウンドまでできる限り大手企業からの資本参画を受け入れてこたなかったことが経営判断として大きかったと思います。

④:強化してきた経営チームによる資金調達

オープンロジの特徴として、大幅な経営体制強化を行ったことが挙げられます。創業以来の成長を支えたメンバーに加えて、2019年以降、経営チームを少しずつですが大幅に強化してきました。昨年以下の3名に入社いただきました。

及川さん(CMO):電通、ネットイヤーCMO、マッキンゼーを経て、電通コンサルティング元社長、APT(マスターカード買収:クラウド分析企業)日本元代表
湊さん(COO):NTTデータ、ミスミ、シグマクシス、RIZAP
御園さん(ロジ開発):UPS、Amazon(14年勤務シニアOPマネジャー)

2019年を成長に向けての準備期間とし、既存メンバーでできる限り短期的な(売上)成長を追求するのではなく、経営陣のリソースを採用であるとか、プロダクトや戦略の見直しに振り向ける経営判断をしています。これは売上高成長をある意味抑えるという判断をしているため、今回の資金調達における投資家説明の観点では、大きなネガティブになる材料でした。それでも、長期成長の実現可能性やその中身の具体性を詰めていくこと、単なる売上の数字ではなく、売上の中身や利益、顧客の構成など、今後の成長につながる部分をより磨き込むことに注力しました。

この経営判断が本当に正しいものであったかは、今後の結果をみなければわかりませんが、こういった経営判断を行い、しっかりと資金調達をまとめあげたのは、中身の成長戦略(=エクイティ・ストーリー)を投資家に評価してもらえたからであると考えています。言うは易し、スタートアップにとって短期的な成長とのトレードオフは非常に悩ましい問題ですから、簡単なことではありませんでした。

2020年に入り、柳さん(VP o fBizDev 兼 Finance)と弘島さん(CPO)が加入したことで、より精緻な戦略議論と資本調達、今後調達した資金を振り向けるテックカンパニーに向けての成長への布石としての体制整備を行い、ラウンドに挑む体制が完成しました。(※あくまでラウンドに挑む体制であり、拡大に向けてはまだまだ体制強化が必要です!!)

柳さん(VP of BizDev 兼 Finance):野村證券、ハーバードMBA
弘島さん(CPO):ソニーグローバルコミュニケーション、DeNA(モバオク代表取締役社長、DeNAヘルスケア事業担当CTO/エンジニアボードメンバー)

⑤:資金調達プロセスを通じて、成長戦略をさらに磨き込み

ステップ1:
今回のラウンドを設計するに際して、昨年末から年末年始を挟んで、幾度となく経営チームと株主が一丸となり議論を重ねてきました。事業計画の数字を作成する前に、まず成長戦略そのものを幾度となくブラッシュアップしてきました。

ステップ2:
ある程度、事業戦略が固まった段階で、事業計画に落とし込み、今度は定量的な議論を幾度となく繰り返しました。なにがマスターKPIになるのか、成長戦略に整合した計画の枠組みを議論し、定量的な議論をしました。定量的な議論をすることで、見えてくる課題を戦略的に詰めていくというPDCAを回しました。

ステップ3:
出来上がった事業計画をベースに、今度は資金調達のストーリーを練り込んできました。単なる調達のための事業計画ではなく、成長戦略そのものから経営メンバー全員で議論を重ねることで、様々な論点やアイデアが浮かび上がってきました。コロナ以降も、どんどん出てくるアイデアやデータを起点とした戦略は、当初からしっかりと議論を重ねてきた土台があったからこそだと思います。

ステップ4:
この土台をベースに、ラウンド開始以降は提携候補先でもある事業会社とのアライアンスの議論を並行的に行い、また有力VC/キャピタリストの方々との議論を通じて、どんどん戦略が磨かれていくこととなりました。しっかりと準備をしたことで、より有意義な対話が生まれ、そのヒントを生かしながら、経営にフィードバックしていくことがある程度できていたと思います。

この資金調達プロセスは、結果的に過去一年をかけて強化してきた経営チームの戦略的意思統一にも寄与し、やもするとバラバラだったものを一本筋の成長戦略に落とし込むことができたのは非常によかったと思います。オープンロジのように、オペレーションとソフトウェアが両輪をなす会社で、部門や担当を超えた全社的な議論の重要性が高い企業にとっては、この価値は非常に大きなものであったと言えます。

⑥:テックカンパニーへ向けて、採用への積極投資

この資金、何に使うかというと、圧倒的に採用!!とにかく優秀なメンバーを大量に募集しています。アライアンスなど事業側、オペレーション側、エンジニアリング、全て強化します。特に、エンジニアの活躍の機会はますます拡大していて、これだけデータを保有して、活用余地の大きい業界はなかなかないと思います。

ゆくゆくはアマゾンのように圧倒的なデータを保有する企業になっていくことを期待しています。この大量のデータを分散型のネットワークで最適化するだけに留まらず、そこから新しい商流(オープンロジは「未来の物流」と呼んでいます)を生み出していける可能性を秘めています。そうなれば、アマゾンですら実現できない(※closedなエコシステムであるがゆえ)最高に面白い社会実装のサービスになると思います。この価値がわかっているからこそ、会社はサービスを生み出す人材に大きく投資をしていくのです。既にある程度完成されたシステム/プロダクトである一方、まだプロダクトの拡張性が山のように残っており、データの活用の幅も無限大です。だからこそ、積極的なテクノロジー投資の価値があると経営判断しています。

⑦:EC化のトレンドを受けた今後の事業追い風

コロナは短期的な資金調達には逆風でした、正直今からスタートしたらもっと良い条件だったかもしれません。一方、BASEの成長をみても明らかなように、足元ECの追い風が強烈に吹いてきています。

その意味では、丁度良いタイミングで資金が手に入った。最適なタイミングで投資を行うことはリターンに大きな影響を及ぼします。資金はバリュエーションが高いことも大事ですが、同様にタイミングも非常に重要です。これは結果的ではあるが、今回オープンロジは非常に良いタイミングで攻めの資金を獲得できた可能性があります。間違いなく物流ネットワークのDX化は加速する、特に遅れた倉庫事業者のDXは間違いなく加速していく。EC化とDX化のダブルの追い風をしっかり捕まえることができます

成長のイメージ補足
EC物流が増えれば増えるほど、裾野が広がり、結果的に大手だけではなく、小口物流も増えていきます。全体の物量のECシフトに応じて、倉庫業者もEC物流に対応しなければ生き残っていけなくなる。これは細分化された倉庫業界全体に分散的におきるからこそ、IT化/ネットワーク化した物流網が力を発揮していくと考えています。

オープンロジはフィジカルインターネットを標榜しています。これは、その存在自体が世界中の誰にとっても有意義で、誰にとってもつながりやすい、インターネットのようなものです。まさに物流もそうあるべきだという考えに立脚し、物流のインターネット化、つまり「未来の物流」を目指しています。2013年に掲げたミッションに、時代が追いついてきた。今回のラウンドはその実現を少しでも手繰り寄せるための大きな一歩となったと感じます。

私もこの資金を活用してさらに成長するオープンロジを全力で支援していきたいと思います。

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宇宙開発→ゴールドマン・サックス→シニフィアン創業。ポストIPOスタートアップ発で「未来世代に引き継ぐ産業創出」を目指す。テックビジネス、企業経営、ガバナンス&ファイナンスの専門家。思いついたらざっと書いてnote。間違えることばかりですがそれ含め楽しんで下さい。写真文章自前主義

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