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装画・挿画『なぞときワールド』シリーズ(全4巻)-メイキング

何(難)問クリア!? なぞときワールド(全4巻)
『ダイヤモンド&エメラルド』
『オパール&アンバー』
『スタールビー&スターサファイア』
『コーラル&アメシスト』
著:児島勇気 氏
刊:汐文社
発売日:2023/12/21 〜 2024/03/22
デザイン:Gibbon 小沼 宏之 氏

なぞなぞ本の装画・挿画を担当いたしました。
なぞを解きながら宝石を集めていく、ゲーム形式になっています。

今回のお仕事は、東京へ持ち込み営業をして編集さんたちと直接お話しさせていただいたのがきっかけでした。営業、大事!


1:ご依頼

・ハードカバー/A5サイズのシリーズもので、全4巻
・各巻を2種類の宝石のモチーフでまとめる
小学生で男女のキャラクターを描く

・1巻につき4点の中面イラスト(いわゆる扉絵)
・各巻で共通して使用するキャラクターカット4点
・1巻につきカットイラスト15〜20点ほど?
・書籍の前半は4c、後半は1c
 (白黒ではなく、緑や紫などそれぞれの宝石をイメージしたカラー)

納期:1巻刊行まで約3ヶ月。2〜4巻は1ヶ月遅れで刊行していく。
   ただし装画は4巻ぶん先に揃える。

ご依頼時点では不確定な部分も多かったので、しばらくは宝石などの資料収集をしつつ待機。
絵柄は、輪郭線を引いてクッキリさせるイメージで…とこちらを参考にお話を進めました↓


2:オンライン通話で打ち合わせ

「1巻の宝石はダイヤモンド&エメラルド」とうかがっていたので
エメラルドモチーフの叩き台と、キャラクターのアイディアスケッチを事前に作って臨みました。

エメラルド→『オズの魔法使い』を連想。
背景に気球を飛ばしてみたり、エメラルドの柱が伸びて城っぽい構成にできたらおもしろいかな〜と。補色が好きなので緑×赤のカラーリング。(ダイヤモンドについては一旦わきへ置いておく)
宝石のキラキラ感を強調するならバックはガッと黒くしたい!…けど児童書だしあんまり暗いと良くないかな?と思いつつとりあえずジャブ的な一枚。
キャラクターへのオーダーは「あまりステレオタイプに寄らない方がいいですかね〜」くらいで、私の好みで描いたものをそのまま通していただけました。
「基本はオーソドックスななぞなぞ本なので、イラストで今風な雰囲気を演出して欲しい」とのことでしたが…今っぽさ、出せてるでしょうか。
この時点ではどんな宝石を描くか確定していませんでしたが、
ガーネット、ラピスラズリ、アメシスト…でざっくり描いてみたもの。

ご依頼時点はどういう装画にするかはまだ固まっておらず
同じ汐文社さんで児童向けミステリーの『三毛猫ホームズ』みたいな雰囲気になるかな〜と想像していたのですが
 ↓

キャラクターと、物語にまつわるモチーフで構成。
袖や裏表紙にもまたがっているけれど、基本的には表紙のみのイラスト。

担当さん・デザイナーさん達だけの事前打ち合わせでは、
私が持ち込みの時にお見せした『病気の魔女と薬の魔女』のイメージからふくらませていたとのことで驚きました。
 ↓

主人公キャラをメインに、表紙から裏表紙までまたがった1枚絵。
(※これはお仕事イラストではなく、それっぽく描いた個人制作です)

「表紙から裏表紙までぎゅっと密度がある絵が欲しい」
「オープンワールドのゲームで冒険するような、ファンタジックで壮大な風景が広がっていて、ワクワクするかんじ」

「Oh…だいぶハードルが上がったな…」
という思いと、
「めちゃくちゃ楽しそう。描きたい!!」
という気持ちが同時に湧きました。
『病気の魔女と薬の魔女』は風景が描いてあるわけではありませんが、空間の広がりを感じさせつつキャラクターの可愛さも見せる…ということを意識すればいいのかなと。
風景をしっかり見せようとすると人物が小さくなる、人物を大きく見せようとすると風景が隠れてしまう(1人ならまだしも2人なので)…バランスが難しいだろうなぁと思いました。

そして今回は横書き・左開きの本なので、右側が表紙になります。
帯は無し。イラストの重心は下寄りに。

通話しながらざくざく描いたものを、少し手直しして通話後に提出。
タイトルの文字数が多いので、私の方でざっくり文字入れをして「だいたいこれくらいスペースがあればいいですかね〜」と確認もしました。
(この時点ではタイトルも未確定。最終的にあんなに長くなるとは思いませんでした)

また、お話ししながら「どんな宝石を使うか」も決めました。
前半が4c(フルカラー)・後半が1c(1色刷り)なので、後者は、単色でも読めるハッキリしたインクの色で表現できる宝石でなければいけません。
使えるインクは緑、オレンジ(濃い黄色)、濃い青、紫…あたりで、そこから逆算して…それでいてマイナーすぎない宝石で…と決めていきました。

先方から「この宝石を描いてください」と指定されるのかと思っていたら、「この色で描けそうな宝石はありますか?」と聞かれて一緒に考える…というかんじでした。お互いに探り探り。

3:ラフスケッチ

なぞなぞ本それ自体には明確なストーリーがないので、
イラストから物語性を感じさせて欲しい、とのことでした。
アイディア出しは大変でしたが、とても自由に描かせていただきました。

エメラルド→『オズの魔法使い』イメージで緑色の気球
ダイヤモンド→『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』のダイヤモンドの谷
みたいな連想で、ファンタジックな冒険活劇っぽい雰囲気にできたらいいなと。
基本の現代服とは別に、各巻の冒険服も。
1巻のテーマは「スチームパンクの冒険家」。
先方から「衣装替えしてください」とオーダーがあったわけではなく、「冒険をするなら相応の格好をしていないとだろう」と私が思ったので。
装画だけでなく冒険をスタートする扉イラスト・宝石をゲットしたまとめイラストがあるので、設定画があったほうがやりやすいな〜と4巻ぶん作りました。
こちらは全巻共通のカットイラストのラフ。

4:全巻共通のカットイラストを納品

「なぞ」に挑戦して考え込んでいたり、「そうか!」と閃いたりのポーズ。
本の前半用にフルカラー、後半用にモノクロのデータで納品します。

5:装画を納品

Gibbonさんのデザインでよりきらびやかに。
どのあたりにサブタイトルが入るか〜なども確認しながら進めました。
イラストだけを見せられるスペースが狭いので、構図を決めるのが難しかったです(宝石のキラキラを表現するために明暗差も激しいしな〜)。
楽しくカラフルな冒険活劇!感を出したくて、普段よりも賑やかな演出になりました。

エメラルドとダイヤモンドを求めて気球の旅へ。
オパールとアンバー(琥珀)を求めて採掘の旅へ。
スタールビーとスターサファイアを求めて海賊の旅へ。
コーラル(珊瑚)とアメシストを求めて死者の国?へ。

6:扉絵を納品

各巻でモチーフになっている宝石の説明をしつつこれから冒険に行くぞ!と盛り上げるページを制作。
最初に作ったエメラルドの叩き台に「むしろ扉絵をこういうイメージで描いてください」と言われたので、「でっかい宝石&両サイドにキャラクター」の構図でまとめていきます。

1巻は前半でダイヤモンド、後半でエメラルドを集めていく2章構成。
Gibbonさんのデザインがとてもワクワクするのです!
各巻の冒頭はweb上で試し読みできます。

事前に各ページのフォーマットをいただき、
文字の入るスペースとの兼ね合いを考えながら制作しました。
明確に「⚪︎mm × ⚪︎mm」とサイズ指定されていたわけではなく、こういうレイアウトならこれくらいかな〜と私の匙加減でやらせてもらいました。
完成版はGibbonさんデザインで後光のようなエフェクトが入って、より華やかな印象です。

最初は宝石の王者・ダイヤモンド。
たぶん一般的に連想されるのは無色透明なのでしょうが、
実際にはピンクダイヤ、ブルーダイヤ、イエローダイヤ…など様々なので、その多彩さもイメージさせたいと思いました。
エメラルドは『オズの魔法使い』のイメージで、グリーンのゴーグルを。
説明文の邪魔にならない程度に、下部へ反射光を入れたいな〜と。
なぞを解いて宝石を手に入れたら、ゴール!というかんじのイラストページもあります。

後半は1c(1色刷り)で、1巻はこんなかんじ。
Gibbonさんの鉱石標本っぽいデザインがとても好みです。
エメラルドの緑、
アンバーのオレンジ、
スタールビーの青、
アメシストの紫…と、各宝石を表したカラーリングになっています。
納品はグレースケールなので、見本をいただいて「こんな色になるのか〜」と感慨深く。


6:カットイラストを納品

いっぱい描きました!
「しっかり描き込んだ1枚絵」と「小さなカットたくさん」を両方こなすのは今回が初めて。
装画や扉絵と、1〜2cm角のカットの雰囲気を合わせるのは難しいですね。
ご依頼を受けた時は装画などの作画コストがもっと低い想定だったので、あとからスケジュールや点数を調整していただきました。ほんとはもっともっとイラスト盛りだくさん!にできたらこども達に喜んでもらえたのかな〜と思いつつ、この時できる最大限でがんばりました。
楽しんでいただけると幸いです。

よろしくです〜



サポートしていただいた売り上げはイラストレーターとしての活動資金や、ちょっとおいしいごはんを食べたり映画を見たり、何かしら創作活動の糧とさせていただきます。いつも本当にありがとうございます!!