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装画・挿画『なぞときワールド オパール&アンバー』-メイキング

全4巻の装画・挿画(カットイラスト)を担当いたしました。

何(難)問クリア!? なぞときワールド(全4巻)
『オパール&アンバー』
著:児島勇気 氏
刊:汐文社
発売日:2024/02/28
デザイン:Gibbon 小沼 宏之 氏

4巻ぶんをまとめたnoteはこちら↓

本作は「なぞなぞ本」であり、明確なストーリーがあるわけではないので、4冊のどれから入っても大丈夫です。


冒険衣装ラフ

全体的にベージュ、茶色の落ち着いたカラーリング。
イメージカラーの赤と青はワンポイント的に。

冒険衣装のテーマは「採掘者と考古学者」
調べてみて初めて知ったのですが、クールくんがかぶっているこれ「ピスヘルメット」というんですね。今回は省略してますが細いベルトがついていたりもします。
「探検隊」ぽさを出すならサファリシャツも定番ですが、今回はパッションちゃんに活発さ・クールくんにインテリ感を出したくてこんなかんじに。
懐かしのインディ・ジョーンズみたいな…といいつつ、私にとっては『モンタナ・ジョーンズ』の印象の方が強いかも。ほかに、比較的最近?の作品だと『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』とか…
『ターザン』のジェーンみたいなロングドレスも好き。また別の機会にそういうのも描けたらいいな。


装画ラフ

1巻のレイアウトを元に、タイトル周りを判読しやすいよう気をつけつつ構成。
ご依頼当初は「鍵」や「パズル」など「なぞとき」っぽいモチーフをいろいろ盛り込むかな〜と思っていたけど、意外と描く機会はほとんどなかったです。

「琥珀の中に鍵が閉じ込められている」ビジュアルがパッと浮かんだのでそれを中心に、私の中の古代ロマンを詰め込みました。
映画『ジュラシック・パーク』では「琥珀の中に閉じ込められた蚊」の中に残っていた血液から恐竜を復活させていたな、などと思い出しつつ。
個人的には野梨原花南さんのライトノベル『ちょーシリーズ』に登場する「琥珀楡」も思い出深いです。ちょーシリーズは登場人物の名前も宝石に由来するものが多い。

オパールは、白い石の中に虹がゆらめく「ホワイトオパール」のイメージが強いと思います。が、実はものすごーくたくさんの色バリエーションがあります。

僕たちの骨がオパールになるほどの遠いひかりの果てであいましょう

蒼井杏さんの短歌

いろいろ調べているうちに恐竜の骨や貝がオパール化することがあると知ったので、それも盛り込みました。骨格全体がオパール化することはないでしょうが、もし巨大生物が丸ごとキラキラのオパールになっていたらワクワクするでしょうね。いつか描いてみたい。

ちなみに、今回描いたのはイクチオサウルス
イギリスの初期の化石採掘者で古生物学者のメアリー・アニングが発見した魚竜です。


「アンモライト」…宝石と化したアンモナイト

これもときめく。リンク先に飛ぶと、すっごい色のアンモライトが色々見れます。イラストではあまりギラギラさせすぎると全体のバランスが崩れるので抑えめに。


「月のお下がり」…巻貝の中のオパール

宝石と呼ばれるものにもいろいろありますね。


装画-完成

質感を描き込み、ハイライトも入れてラフより明るい印象に。
宝石の他に細かな石も描き込んで、宇宙のような地層のような。
「虫入り琥珀」はロマンですよね。
でもあまりリアルな虫描写は苦手な人もいるので、あっさりめに。

扉・まとめイラスト ラフ

扉は各巻でモチーフになっている宝石の説明をしつつこれから冒険に行くぞ!と盛り上げるページ。
デザイナーさんが作ってくださったレイアウトラフを元に、どうイラストを構成するか決めていきます。

※文章など、この時点では仮のものなので完成版とは異なります。

オパールもアンバーも、宝石なのに有機的なのがおもしろいです。


扉イラスト-完成

CMYKだとオパールの「遊色効果」をなかなか理想の色にできなくて難しかった〜
ラフよりも明るく白っぽいかんじ。
昔読んだ小説で「乳白色の虹」と表現されていたのが記憶に残っています。
琥珀ってのは樹脂が化石化したものなんですよ〜と示したくて、
虫ではなく松ぼっくり(植物)が閉じ込められた琥珀。
(この他、バラの花が閉じ込められた琥珀も実在します)
形も涙型で、樹液をイメージ。

完成した見開きページ↓

問題ページ(右側)の右上にも「レベル」を表すオパールのカットイラスト。
レベル2のなぞを解いたら、宝石が2個手に入るというわけです。

まとめイラスト-完成

カバーでは描けなかったタイプのオパールも。
このページを見た子が「これもオパール?」と調べてくれたら、その多彩さに面白がってもらえるのではと。
(赤・オレンジっぽいファイアオパールなんてのもありますが、今回は装画に合わせて青っぽいのをチョイス)
1色ページはグレースケールで納品。
お宝を持って帰るぜー!ひゃっほー!

オレンジ色のインクで刷られた後半のページはこんなかんじ↓

このほか、「なぞ」に関する小さなカットをいろいろ描きました。


作業のおとも

小学生の頃、『まんが伝説の化石ハンター』『まんが世界ふしぎ物語』が大好きだったんですよ〜
恐竜を描きたいな〜と調べ始めて、懐かしくなって久しぶりに図書館で借りようとした…ら、もう古すぎて廃棄されてしまっていた…
歴史・生物系の学習本はどんどん情報が更新されるからしかたないのですが…
私の中の「古代の遺跡」っぽいものへのロマンの源流はたぶんこのシリーズ。

今回、あまり恐竜を全面に押し出しはしませんでしたがこの絵本もおもしろかったです↓


それとこちらの『化石になりたい』という本。
細部まで読み込む余裕はなかったのですが、本気で「死後、化石になる」方法を追求していておもしろかったです。世の中にはいろんなフェチを抱えた人がいるのだな…


『ポビーとディンガン』 著:ベン・ライス

酒井駒子さんの装画が印象的なこちらの小説。
納品後に思い出して、小説と実写映画を引っ張り出しました。
映画版のタイトルは『Opal Dream』(邦題は原作と同じく『ポビーとディンガン』)。
オパールの採掘地に住む少年アシュモルには、ケリーアンという妹がいる。彼女には空想の友達「ポビー」と「ディンガン」がいたのだけれど、ある日いなくなってしまった。ケリーアンは日に日に弱っていく。アシュモルは妹のために、存在しないふたりを探し始める…

オパールの色彩の秘密は石じたいにではなく、その不在にある。

オーストラリア・ジオグラフィック誌1998年.7〜9月号

という引用文がじんときました。
オパールのゆらめく遊色効果は、実在性と非実在性を共存させてくれるのかもしれない。


このシリーズ、ラフはほぼリテイクなしで通ったので
イラストの「描き方」を語るメイキングというよりは、その絵面に至るまでの発想の元ネタ紹介というかんじですね。
楽しんでいただけたら幸い!




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