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装画・挿画『なぞときワールド ダイヤモンド&エメラルド』-メイキング

全4巻の装画・挿画(カットイラスト)を担当いたしました。

何(難)問クリア!? なぞときワールド(全4巻)
『ダイヤモンド&エメラルド』
著:児島勇気 氏
刊:汐文社
発売日:2023/12/21
デザイン:Gibbon 小沼 宏之 氏

4巻ぶんをまとめたnoteはこちら↓

1巻にあたる『ダイヤモンド&エメラルド』については上記のnoteでも比較的くわしく触れています。

本作は「なぞなぞ本」であり、明確なストーリーがあるわけではないので、4冊のどれから入っても大丈夫です。
描き手としては、やはり最初に着手した『ダイヤモンド&エメラルド』が「冒険のはじまり」っぽいイメージがありますが。


このふたりは誰?どうして冒険しているの?

何かしらテーマがあったほうが作りやすいので、便宜上「パッションちゃんとクールくん」と呼んでいました。でももしかしたら「パッションくんとクールちゃん」だったりするかも?

なぞなぞや読書といったインドア寄り?の趣味と、冒険というアウトドア嗜好の両方を持っている。と言われたらすんなり納得できるビジュアルにできたらいいな〜と。
なぜこのふたりがファンタジックな世界で冒険しているのか?
は、本編では特に説明はないのですが、自分の中の裏設定では
たむらしげるさんの『水晶山脈』のようなイメージでした。

語り部の「私」が鉱石標本を手にしていると、いつの間にか幻想世界=「PW(パラレル・ワールド)」に繋がって…という短編集。
そんなかんじで、
小学生ふたりが自分の宝物だか親のアクセサリーだかの宝石を眺めているうちに、その宝石にまつわる幻想世界に入り込んでしまう→なぞ解き・冒険を経て、夢から醒めるように現実世界へ帰って来る…
というサイクルがあるんじゃないかと。
ざっくりとでもそういう設定を作った方が筆がノるタイプです。


冒険衣装ラフ

エメラルドグリーンの中で映えるように、反対色の赤色でコーディネート。

冒険衣装のテーマは「スチームパンクの冒険家」
「スチームパンク」とは1980〜90年ごろに生まれ、今なお人気なSFのジャンル。超進化した蒸気(スチーム)機関が使われている、未来感とレトロ感が共存した不思議な世界観です。
特にクールくんの服装がヴィクトリア朝(『不思議の国のアリス』の頃)を参考にしています。パッションちゃんは飛行艇乗りっぽいかんじ。
もっとゴテゴテと謎の歯車や機械っぽいものをくっつけたほうがスチームパンクっぽくなるんですが、宝石の印象が弱くなりそうなのでそこそこに。


装画

作業BGMは懐かしのNHKアニメ『モンタナ・ジョーンズ』の「冒険者たち」。
THE ALFEE、めちゃくちゃかっこいいです。

エメラルドは『オズの魔法使い』からの連想でけっこうすんなりアイディアが湧いたのですが、ダイヤモンドは難しかったです。
『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』に出て来る「ダイヤモンドの谷」のように、剥き出しのダイヤがキラキラしているかんじ…か?と広げていきました。
ダイヤは白(透明)のイメージが強そうですが本当に様々な色があるので、絵にするなら「白っぽい虹色」にしたいな〜、しかし宝石っぽくカットしていないとクォーツ(水晶)っぽく見えちゃうかも…と悩みつつ。

ところで。
気球の下に広がる大地は、見栄え重視で濃いピンクの川を描いたのですが。
(普通の草原と川だと、エメラルドの緑色が埋もれてしまうし)
こういう「ピンクの川」、実在するんですね。
ペルーのクスコでは、雨季に大量の酸化鉄を含む赤い砂岩の土壌が流出し、川の水が真っ赤に染まる「パルケッラ(小さな枝)・プカマユ(赤い川)/Palquella Pucamayu」という自然現象が起こるそうな。
知ったのはこの絵を描いた後です。へぇ〜。


扉・まとめイラスト ラフ

扉は各巻でモチーフになっている宝石の説明をしつつこれから冒険に行くぞ!と盛り上げるページ。
デザイナーさんが作ってくださったレイアウトラフを元に、どうイラストを構成するか決めていきます。
古文書のようなテクスチャが敷いてあったり、鉱石標本みたいなデザインになっていたりとこの時点でとてもワクワクするものだったので、考える作業が楽しかったです。

※文章など、この時点では仮のものなので完成版とは異なります。

まとめはなぞを解いて、宝石を手に入れたぞ!と喜ぶページ。
ここに関しては特に「こう描いてください」という指定はなかったので、毎回「こんなかんじで〆たら楽しいのでは〜?」と提出したものがそのまま通るかんじでした。

※まとめページラフは完成版と比べると背景色や文字の入る位置も違っていたりします。

扉イラスト-完成

「ブリリアント・カット」のダイヤモンド。やはりダイヤといえばこの形。
パースを引くのが地味に大変でした。
六角柱のエメラルド原石。ロマンを感じます。
鮮やかさと透明感を出したかった。

完成した見開きページ↓

問題ページ(右側)の右上にも「レベル」を表すダイヤモンドのカットイラスト。
レベル2のなぞを解いたら、宝石が2個手に入るというわけです。

まとめイラスト-完成

まとめページは比較的デフォルメ強め。
「白っぽくもカラフル」なダイヤをかわいく描きたかった。
(あまりリアルに描くと軽やかさが出ないので…)
1色ページはグレースケールで納品。
まとめページでは四角っぽい「エメラルドカット」も。
この形はエメラルドのために特別に開発されたカットなのだそうです。

緑色のインクで刷られた後半のページはこんなかんじ↓

このほか、「なぞ」に関する小さなカットをいろいろ描きました。


作業のおとも

ご依頼があってから実際に作業に入るまで、宝石関連の本や映像をいろいろと漁りました。
最初は「宝石のキラキラした質感をのせたキャラクターメインのイラスト」をイメージしていたので、市川春子さんの『宝石の国』を見返してみたり。

「どんな宝石を描くか」も決まっていなかった頃は、ひたすら宝石・鉱石図鑑を眺めていたり。
あくまでメインは「なぞとき」なので、あまりマイナーな宝石は選べないのですが、個人的にはバイカラーのアメトリンや、当てる光によって変色するアレキサンドライトなどにロマンを感じます。


雑誌BRUTUS「珍奇シリーズ」鉱物編(珍奇植物とかもあるらしい)。
この動画は2022年発売の号の紹介だけど、2023年版も発売されています。


こちらはラグジュアリーな宝石というより、ファンタジックな冒険RPGの魔法鉱物!という趣のビジュアルや実験がたくさん載っていて楽しい↓

色別でどんな宝石があるか知りたいならこれがわかりやすくて楽しかった↓


最後は余談(しかも他社さんの本)でしたが
本シリーズをきっかけに「宝石・鉱石」に興味を持ってもらえたり、何かを知る・考えることが楽しいと感じてもらえたらいいな〜とも思いながら制作していました。
「ダイヤモンド」「エメラルド」をお子さんにもわかるように簡潔に説明しよう、とすると実はすごく難しいし(色・成分・硬度などの特徴だけでなく名前の由来、宝石言葉、逸話や伝説など…調べれば調べるほどおもしろい情報がゴロゴロ出て来る)、1ページごとにいろいろ気を配って作られています。
楽しんでいただけたら幸い!



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