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装画・挿画『三毛猫ホームズの事件ノート』シリーズ(全5冊)-メイキング

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三毛猫ホームズの事件ノート(全5巻)
『三毛猫ホームズの宝さがし』
『三毛猫ホームズの幽霊退治』
『三毛猫ホームズの古時計』
『三毛猫ホームズの殺人協奏曲』
『三毛猫ホームズの水泳教室』
著:赤川次郎 氏
刊:汐文社
発売日:2021/01/25 〜 03/02
デザイン: 西村弘美 氏

装画・挿画を担当いたしました。

『三毛猫ホームズ』は赤川次郎 氏の推理小説シリーズ。
タイトル通り、主人公は三毛猫のホームズ(♀)。
1970年代から半世紀近い歴史をもつロングセラーにしてベストセラー。
『三毛猫ホームズの事件ノート』は往年のファンのみならず小〜中学生が楽しめる本を目指し、再編集された短編集です。

登場人物-_OL

三毛猫---扉カット-web-m


1:ご依頼

・四六判ハードカバーの装画(表1のみ):5点
・本文挿絵(モノクロ):22点
・本文扉カット(モノクロ):12点

・納期:約3ヶ月

・猫が主役なので、とにかく猫をかわいく!
・ヤングアダルト向けに人物も魅力的(どことなく今風)に描いてほしい
・5冊にシリーズものとしての統一感を出したい
・小説の内容に忠実にするよりは、
 パッと見で「おもしろそう・楽しそう」なイラストにしてほしい

過去に『本を守ろうとする猫の話』『猫町くんと猫と黒猫』『猫の惑星』など猫の装画、ミステリー、若年層向けのお仕事を手がけていたのでお声がけいただけたようです。

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児童書はずっとやってみたいと思っていたし主張していたけれど、まさか一度に5冊のシリーズもの・しかも超有名作の三毛猫ホームズなんて!!
と、ご依頼メールをいただけた瞬間飛び上がりました。ありがたや…

今回は↑のようなデフォルメ強めのタッチをご提案。
その後いただいたゲラを読みながらネタ出しをしました。
(5冊もあると電子より紙ゲラのほうがやりやすかったです)

2:打ち合わせスカイプ・アイディアスケッチ(約2週間後)

今回はシリーズものなので、編集さん・デザイナーさんとともに
メールでなく通話での打ち合わせ。
まず最初に
・三毛猫ホームズ + メインキャラ3人のラフスケッチ
・前半3冊のアイディアスケッチ

を提出しました。

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みんな個性的で描きやすかったのですが、ギャグ担当(?)の石津刑事の顔はどこまで崩すか少し迷いました。

三毛猫1-ラフ説明1

そして装画について。
このシリーズはまず「主役の探偵が猫」というのが特色なので、思い切ってど真ん中にホームズをドーン!と配置しました。
(参考までに、端に寄せたverもひとつだけ制作)
タイトルが長いので、仮で文字も入れて「イラストの割合はどれくらいがいいでしょう?」とも一応お尋ねしました。

三毛猫1-ラフ説明2

この時点で製作したのは3冊ぶん。
1冊ごとにテーマカラーを決め、
ホームズの顔が5冊かけて1回転する(正面→右向き横顔→後ろ姿→左横顔→正面)ことで統一感とバリエーションの両方を出そうという試みです。
カラーリングも明るくかわいい雰囲気とミステリーっぽさの両方が感じられるように意識しました。
1冊ごとに2〜3話収録されているので、各話に登場するモチーフをごちゃまぜに詰め込んで賑やかにしています。

3:フィードバック&レイアウトラフ(約3日)

・子供向けというのもありイラストを大きく掲載したいので
 タイトルのための余白はあまり気にしなくていい
ホームズの顔が少し怖いかも?もっとかわいくできたらなおよい
・石津刑事は一番柔和な顔つきのもの
・3〜4冊めには石津刑事も登場させてほしい
本シリーズは帯が無いので、下部にも人物を配置していい

今回、こちらがご提案したものはほぼそのまま通ったので
ここからはノリノリで作画をしていきます。

カバー_レイアウトラフ

この時点でレイアウトラフをいただけてテンションが上がりました!
フォントがもうかわいい!背表紙と裏表紙に小さくホームズがいるのも、児童書のシリーズものらしくて好きです。
そして『三毛猫ホームズの事件ノート』という長いシリーズ名がコンパクトにまとまっていてなるほどな〜と思いました。
また、今回初めてハードカバーのお仕事をして知ったのですが、ソフトカバーよりも塗り足しが広めに必要なのですね。
(画像の黄色い線が実際にカバーとして露出する範囲)


4:1巻の修正ラフ&4〜5巻ラフ(約10日)

三毛猫1-ラフ説明3

三毛猫1-ラフ説明3_2

私的に三毛猫ホームズといえば北見隆先生のイラストだったので、ホームズはスリムでピンと背筋を伸ばし、甘すぎないミステリアスなイメージでした。
瞳を大きくするだけでもかなり印象が変わりますね。
(大人向けなら最初の顔の方がウケる場合もあるかな?)

三毛猫1-ラフ説明4

三毛猫1-ラフ説明5

4・5巻は最初のアイディアスケッチより細かく描き込んだものを。
タイトルの余白は気にしなくていいと言っていただけましたが、5冊でホームズのサイズや位置を揃えるので、目安として入れながら製作しました。
背表紙・裏表紙へ単体で配置するので、ホームズ・人物・背景はレイヤー分けしてあります。

5:フィードバック(約4日)

このまま進めてOK
(2・3巻も新たにラフを作る必要はなし)

6:リスケジュール

さてここからはひたすら制作するだけ、
かと思いきやいろいろあってリスケしていただきました。
いろいろ…あったんです…
さすがに冊数の多いビッグタイトルだからか余裕を持ってスケジュールを組んでいただいていたので助かりましたがその節はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

7:装画5点納品(ご依頼から約2ヶ月)

なんやかんや修正も経て、全点完成までけっこうかかりました。

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裏表紙用の単体カット。
サイズ感や柄を合わせるのが地味に大変でした。
(ホームズは「右前足が黒、左前足が白」「顔は白・黒・茶色が三等分」「おなかは白、背中は茶と黒の割合が多い」など細かな設定があります)
ちなみにこのカット、モノクロになって目次ページにも使われています。
しかし主線なしで描いちゃったので、モノクロの白背景にそのまま置くとシルエットや髭が見えなくなってしまう…のでそこも地味に微調整。
たぶん描いた私しか気にしないだろうな〜というところを毎回捏ね回してしまう…

8:扉カット(ご依頼から約3ヶ月)

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各話の扉に使用されるホームズのカット。
ここは話の内容は気にせず、かわいい猫をひたすら量産してほしいとのことでした。ホームズはピンと背を伸ばしているイメージだったのですが、ここでは猫っぽい曲線を意識しています。
最初にざっくりポーズ11点+ほぼ完成品1点提出。
だいたい同じサイズにしようとしましたが、ポーズにバリエーションをつけるとけっこう差が出てしまいました。猫って伸びるんですよね…

三毛猫---扉カット-web-m

12点まとめるとこんなかんじ。装画よりお茶目な雰囲気かも。
こちらも白背景でポーズがちゃんとわかるように影の調整と、柄を間違えないように気を配りました。

9:本文挿絵(ご依頼から約5ヶ月)

1冊につき4〜5点で合計22点。
大幅にリスケしていただいて随分遅くなってしまいましたがなんとか描き切りました…全部載せるときりがないので、各巻から個人的に気に入っているものを。

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ちなみに『三毛猫ホームズの水泳教室』には、
永井夕子というキャラクターが登場します。
彼女は赤川先生の別作品「幽霊シリーズ」の探偵役。このお話では探偵猫・ホームズと女子大生探偵・夕子の共演が楽しめます。
夕子は晴美と同じく好奇心旺盛でとってもアクティブ。外見は晴美と被らないように、けれど魅力的に見えるように…とキャラデザしました。

いっぱい描きました…!

10:発売(ご依頼から5ヶ月ちょっとで1冊ずつ刊行開始)

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ご依頼時点では表1(表紙)のみのはずでしたが、楽しくて袖から背表紙・裏表紙までまたがるイラストになりました。
自分的に一番かわいくできたなぁと思う袖は『古時計』です↓

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挿絵はこんなかんじ↓

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三毛猫---扉カット-web-c

扉カットに簡単に着色してみたり。かわいい(自画自賛)


刊行順に並べていますが、
短編集なので基本的にはどこから読んでも大丈夫。
もしかしたら3世帯くらいでいっしょに楽しめそうなロングセラー。
初めて三毛猫ホームズを読む!という方も
昔読んでたな〜久しぶりに読んでみるか〜という方も
ずっと読み続けてる!という方もよろしくです。


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