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装画・挿画『なぞときワールド スタールビー&スターサファイア』-メイキング

全4巻の装画・挿画(カットイラスト)を担当いたしました。

何(難)問クリア!? なぞときワールド(全4巻)
『スタールビー&スターサファイア』
著:児島勇気 氏
刊:汐文社
発売日:2024/03/13
デザイン:Gibbon 小沼 宏之 氏

4巻ぶんをまとめたnoteはこちら↓

本作は「なぞなぞ本」であり、明確なストーリーがあるわけではないので、4冊のどれから入っても大丈夫です。


冒険衣装ラフ

ひじ・ひざ関節の隠れたゆったりシルエットはかわいいけど、
あとでいろんなポーズで描くのが難しかったです。

冒険衣装のテーマは「海賊の船長と航海士」
4冊のうち1冊は海賊モチーフにしたいと思っていました。
海賊と聞いて私が真っ先に思い浮かべるのは『ピーター・パン』のフック船長。ダスティン・ホフマン主演の『フック』が特に思い出深い。

…のですが、今回あらためて調べてみたら↓に辿り着きました。

『宝島』 著:ロバート・ルイス・スティーヴンソン

「海賊もの冒険活劇」の元祖的?児童文学。
上記のGakken版が短くて絵も多く、サクッと入りやすいかなと。
今作に登場するジョン・シルバーが、現代まで受け継がれる「典型的な海賊キャラ」の元ネタなんだろうな〜と思います。

ジョン・シルバー
左足を失っており、松葉杖を使って巧みに動き回る。
「フリント」と名付けたオウムを飼っている。フリントはよくシルバーの肩に留まっている。
極悪非道な海賊船長である一方、人好きのする性格でもある。料理がうまく、宝島へ向かう船にはコックとして乗り込んでいた。

海賊=眼帯のイメージは
「片目だけ暗さに慣らして、すぐ戦闘可能なようにしておく(船室は暗いので、昼間の襲撃時に外との明暗差に備えて)」という説が納得しやすいかな?
『パイレーツ・オブ・カリビアン』なんかを参考にすると露骨にジャック・スパロウになってしまいそうな気がしたので、古い児童文学をベースにフィクションであるあるな海賊イメージを広げました。あくまでフィクション海賊。

「知」のビジュアル百科シリーズ、大好きです。
画像たっぷりフルカラー大判で見やすく、ぶ厚過ぎないのも良い。


装画ラフ

ぐるんと広げられた宝の地図。
風景画…とはちょっと違う、こういう「冒険世界」の表現も大好きです。

「スタールビー」「スターサファイア」は「スター効果(アステリズム効果、星彩効果とも)」が現れたルビーやサファイア。
宝石に含まれる針状のインクルージョン(不純物)が並行かつ最低二方向並んでいる場合に、つるんと丸いカボションカットに研磨すると、星のように白い筋が浮かぶことがあります。これがスター効果。光の筋が美しい星形であるほど価値が高い。
現実のスタールビーはもっとピンクや紫ぽいものが多いのかなとは思いますが、そこは絵としてのわかりやすさ・印象強さを優先しました。
最近だと『推しの子』のイメージもあるかもしれません。
本作はちょうど左開きの本で前半がルビー・後半がサファイアという構成だったので、ドクロの左目にスタールビーがハマって図らずも推しの子っぽくなりました。


装画-完成

完成版ではキャラクターの光と影を強調して、よりドラマチックな印象に。

裏表紙のスターサファイアはラフの時点で完成版に近い描き込みでした(でないとたぶん伝わらないので…)。
スタールビーはそれを赤色に調整するだけだからちょっとは省エネできるかな?と思いきや全然そんなことはなく、色遣いって奥が深いよなぁと改めて…

帆船やコンパスなど立体的に描くものが色々あってなかなか時間がかかりました。
今回は「宝石」に焦点を当てるために地図そのものはシンプルめにしていますが、そこかしこから木や山が立体的に立ち上がっていてもおもしろいかもしれませんね。

扉・まとめイラスト ラフ

扉は各巻でモチーフになっている宝石の説明をしつつこれから冒険に行くぞ!と盛り上げるページ。
デザイナーさんが作ってくださったレイアウトラフを元に、どうイラストを構成するか決めていきます。

※文章など、この時点では仮のものなので完成版とは異なります。

スタールビーとスターサファイアは、絵としては色が違うだけなので何か楽しい要素を入れたいな〜と、鳥を足しました。
装画にも描いた…ディズニーアニメ『アラジン』のイアーゴみたいなこの鳥。
てっきり「赤いオウム」だと思っていたのですが、調べてみると
コンゴウインコ(アカコンゴウインコ)

だったようです。知らなかった…

ちなみに、見た目がよく似たベニコンゴウインコというやつもいる。
ややこしい…

見栄え重視で「鮮やかな赤い鳥」が欲しかったので、今回は種族までは深く気にしてませんが。
海賊がマスコットキャラ的にオウムやサルを連れている理由は、「当時はエキゾチックな動物がヨーロッパで高く売れたから」ではないか、という説も見かけました。


扉イラスト-完成


ぐいぐい斬りこんでいくパッションちゃんと、地図を見ながら考えこむクールくん。
ラフではクールくんは笑顔ではなかったのですが、完成版では笑顔。
ふたりと一羽で力を合わせて、お宝に辿り着いた!

完成した見開きページ↓

問題ページ(右側)の右上にも「レベル」を表すスタールビーのカットイラスト。
レベル2のなぞを解いたら、宝石が2個手に入るというわけです。

ルビーとサファイアは同じ「コランダム」という鉱物。
クロムの含有率が高いと赤みが強く出てルビー、鉄やチタンの含有率が高いと青みが強く出てサファイアと呼ばれる…そうです。
(コランダムは多彩で、赤以外はまとめて「ファンシーカラー・サファイア」。色ごとにイエローサファイア、グリーンサファイア、ピンクサファイア…などと呼ばれる)
化学的な分析ができる前の時代では赤い宝石はどれもルビー扱いだったらしい。
個人的には、青い宝石の方が神秘的で貴重なイメージがあるかな…?


まとめイラスト-完成

赤いスタールビーに到達したけど、何か変だぞ?と考えている様子のクールくん。
ここから宝の地図を見返して、スターサファイア探しを始めます。
1色ページはグレースケールで納品。
宝が隠されている場所への謎解きをクリアし、もうひとつの宝を発見!
詳しい文章はないけど、そんなストーリーがなんとなく伝わるように。

青色のインクで刷られた後半のページはこんなかんじ↓

このほか、「なぞ」に関する小さなカットをいろいろ描きました。


クリアファイル

3巻の装画は、『なぞときワールド』シリーズ販促用のクリアファイルにも採用されました。パッと見のインパクトが一番強いのは本作かもしれませんね。

クリアファイル用に、宝石やキラキラの位置を地味〜に修正。
全体のデザインは本書と同じくGibbonさん。
裏面には普段着のふたりも小さく掲載。
本と並べるとこんなかんじ。A4クリアファイルです。

作業のおとも

冒険活劇!てかんじの懐かしアニソンを聴きながら作業してました。
あとStrawberry JAMの『希望峰』とか。
これはアニメ『スパイラル-推理の絆-』のOPなんですが、歌詞はアニメの内容とは関係なく、「水平線の向こうへ飛び出そうぜ!」てかんじ。
日本アニメで海賊ものっていったら『ONE PIECE』が不動の一位でしょうが、それだとまじでONE PIECEしか浮かばないので…いろいろ聴きながらテンションを高めていました。

さらに懐かしい『ひょっこりひょうたん島』。
もとの人形劇がどんな話だったかはほとんど忘れてしまったけれど、この歌もめちゃくちゃ覚えています。


楽しんでいただけたら幸い。


サポートしていただいた売り上げはイラストレーターとしての活動資金や、ちょっとおいしいごはんを食べたり映画を見たり、何かしら創作活動の糧とさせていただきます。いつも本当にありがとうございます!!