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わたしの書く言葉は、一つ一つが作品でした。

見なければよかった。
知らなければよかった。


そう思った時には、もう遅過ぎました。



たまたま、ポートフォリオの刷新をおこなうため、ほんの気まぐれで、わたしが以前携わっていたプロジェクトの名前を検索窓に打ち込み、検索してしまったのが運のつきでした。






事情廃止と共に、消されたはずのサイトが、新たな形で復活していたのです。






心臓が早鐘を打ちます。
マウスポインターは、そのサイトを指差しています。






頭の中では警鐘が鳴り響いていましたが、わたしは見ることをやめられませんでした。









すっかり生まれ変わったwebサイト。どうやら、別の会社がプロジェクトを引き継いでいるようでした。



元々業務委託でおこなっていたプロジェクトでわたしと先輩は、その事業をおこなうために集められた社員でした。


公務員浪人の後、入社した広告代理店。
わたしにとっては、はじめて社会人として入社し、はじめてライティングをした会社です。



今でも、数々の思い出が蘇ってきます。



毎日3件、名古屋市内の企業を回ったこと。

社長クラスの方々と、面会や取材をしたこと。

取材したことをもとに、知識がないながらも必死に勉強し、キャッチコピーや原稿を作り上げたこと。



全部が全部、大切な思い出でした。




ふと、自動スクロールされる画面に、わたしが以前取材した企業の名前が映し出されていることに気が付きました。



手先はもう、血の気を失っています。



それでも、見ることを止められませんでした。














そこには、一緒に取材に行ったカメラマンが撮影した写真と、わたしが執筆した記事がそのまま掲載されていました。






その時、わたしの中でひどく激しい感情が湧き起こりました。

















とても、悔しい。






業務委託でのプロジェクトだったので、事業の廃止が決定した段階で、著作権は委託主の会社に帰属されるのは、理解していました。





そうとはわかっていても。


わたしがこの身体で面会し、この目で会社の良さを見て、丹精を込めて作り上げた、とても大切な記事でした。




この会社の良さが、伝わりますように。


社長の思いが、伝わりますように。




わたしにとって、言葉を紡ぐことは、一つの作品を作り上げることでした。





今でも、あの頃に戻れたら、と何度でも思います。

ライティングスキルがあの時よりも格段に上がった今ですら、とてもよく書けている文章だと自負できます。


過去の栄光に、いつまでも縋っていてはいけないこともわかってはいます。




それでも。



悔しかったんです。





紛れもない、わたしが作ったキャッチコピーが、滲んでいきます。




そして、わたしの中でもう一つの感情が芽生えました。




わたし、書くことがこんなにも好きだったんだ。





ただの仕事で書いた文章。今ではどこの誰が書いたかもわからなくなってしまったような文章に、悔しいと思ってしまったのです。



普通なら、また日の目を見ることになって嬉しいと感じるはずです。

ですが、わたしは悔しくて仕方がなかったのです。





それと同時に、報酬額を増やすために、誰にでも書けるような、インスタントな文章は、到底書けないことに気がついたのです。





わたしにとって、言葉を紡ぐことは、生きること。

一つ一つが、作品なのです。






わたしにとって文章は、ただの文字の羅列ではないのです。







脳が痺れる感覚がしました。



このままではいけない、と。







わたしは、「作品」を仕上げているんだ。




量ではなく、質の高い、パフォーマンス重視の、文章を書いていくんだ。





わたしにしかできない、言葉を紡いでいくんだ。



とても悔しく、とても悲しく、涙が止まりませんでしたが、わたしの中ではそうケツイがみなぎりました。








これからも、誰の代わりもきかない、わたしだけの文章を、プライドを持って紡いでいきたいと思います。




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