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自分にとって都合のいい情報を集める「確証バイアス」

自分の見たいものを見てしまう傾向があることを示した論文があったのでメモ(1)。

私たちの認知的過程には判断を歪ませるバイアスやステレオタイプが存在し,その存在を意識しないと事実と異なる解釈をしてしまします。具体的な例を挙げると以下のようなものがあります。

・リーダーシップなどの自分自身の能力は平均以上であると考えてしまう(平均以上効果,2)。
・自分が思っている以上に周りの人は自分のことを見ていない(スポットライト効果,3
・苦労して加入した集団に対しては愛着が強くなる(内集団バイアス,4

このような事実とは違う認識は自己に関連がある場合に多く生じます。では,そのようなバイアスは自分が所属する集団(e.g. 大学,部活)でも生じ,認識が歪んでしまうのでしょうか?

今回紹介する論文は自分自身とは少し離れた所属集団に対するバイアスが確認されたものになります。

サッカーボールが転がっている様子

1954年にダートマス大学の社会心理学者であるアルバート・ハストーフさんらが人間には自分にとって都合のいい情報を集める傾向があるのかについて調べるために実験を行いました。 

実験の対象となったのは心理学入門の授業を取っていた,プリンストン大学161名とダートマス大学163名の大学生でした。

実験参加者には大乱闘が起きたことで当時話題になっていた両大学のサッカーの試合について尋ねました。

まず実験参加者に試合についてどう思っているか、また事件の議論から何を知ったのかについて質問紙で答えてもらいました。 

その後実際の試合のビデオを見てそれぞれの大学の選手の反則の回数を数えてもらいました。

会議をしている様子

実験の結果,試合のビデオを見たダートマス大学の大学生はダートマス大学の選手の反則回数を平均4.3回,プリンストン大学の選手の反則回数を平均4.4回と回答しました。

しかしプリンストン大学の大学生はダートマス大学の選手の反則回数を平均9.8回,プリンストン大学の選手の反則回数を平均4.2回と回答しました。

つまり,所属する大学のチームの反則数を低く見積もり,相手チームの反則数を多く見積もる傾向があるということです。

今回の実験では,事前の試合に対する調査でも相手チームのプレーに対して批判的な見方をすることが多いことが確認されています。具体的には以下のような回答が得られました。

・「どちらが大乱闘になるきっかけを作ったのか」という質問では所属大学のチームよりも相手のチームに問題があると考える傾向がある
・所属大学の選手の反則に関しては「やむを得ない」と答え確率が高かった

上記でも示した通り,自分が所属する集団に対しては楽観的な見方をすること(内集団バイアス,5)も大きく関わっていると考えられています。

男性が並んで会話している様子

(1)Hastorf, A. H., & Cantril, H. (1954). They saw a game; a case study. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 49(1), 129–134. 

(2)College Board (19761977). Student Descriptive Questionnaire. Princeton, NJ: Educational Testing Service.

(3)Gilovich, T., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (2000). The spotlight effect in social judgment: An egocentric bias in estimates of the salience of one's own actions and appearance. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 211–222. 

(4)Aronson, E. et al. (1959). The effect of severity of initiation on liking for a group. Journal of Experimental Social Psychology, 3, 278-287. 

(5)Tajfel, H., Billig, M. G., Bundy, R. P., & Flament, C. (1971). Social categorization and intergroup behaviour. European Journal of Social Psychology, 1(2), 149–178.

■なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか:逃れられないバイアスとの「共存」のために/ハワード・J・ロス (著), 御舩 由美子 (翻訳)

■アンコンシャス・バイアス—無意識の偏見— とは何か/パク・スックチャ (著) 

■「なぜあの人はあやまちを認めないのか 言い訳と自己正当化の心理学」 /エリオット・アロンソン  (著), キャロル・タヴリス  (著), 戸根 由紀恵 (翻訳)

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