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夜のお店でふたり

その日の夕飯は二人だけだった。
ラーメンを食べに行こうと意見が一致したのだが…


どこへいこうか

ラーメン激戦区の我が町では、春に入って新しく3店舗がオープン。そして夏にもう1店オープン予定と店が増え続けとどまることを知らない。私はnote記事にもあるように、初見の店に突撃することを生業としているため、非常に楽しみなのである。

しかし、それはランチタイム限定なのだ。

妻は私よりもグルメで、食に関して彼女の右に出るものは二の腕を「ギュッ」とツネられてしまうくらい、人に譲ろうという穏やかな気持ちが全くなくなるタイプなのだが、ラーメンに関しては非常に保守的なのだ。新しい店や新しい味にチャレンジすることは稀で、いつも決まった数店をローテーションすることしか選択肢にない。

曰く「ガッカリしたくない。食べてから後悔しても遅い」ということだった。おそらく、彼女の中では「ラーメンを食べに行く=はいはい、あの味ね」が頭の中で完成されてしまうため、口の中がラーメンを食べる前から、まるでもう、ラーメンを食べ終わったかのように再現されてしまうのだ。そこにサプライズはいらない。そう、例えばメロンと思って齧ったフルーツが実はサバの味噌煮だったらブチ切れるだろう?そういうことなんだと思う。



さすがに違うだろうが

とにかく、今後の私の明るい食いしん坊万歳、未来のためにも、ラーメン店のレパートリーを増やしておきたい。そこに急に降って湧いた天啓。二人きりで夜にラーメンだとぅ!?これはもう連れていくしかない、彼女の初体験となるお店へ!

とはいったものの、初見のお店というものは非常にリスクが高い。もし失敗すれば、彼女に「ギュッ」とつねられて、明日の私の二の腕は真っ赤に腫れ上がっていることだろう。運悪く、もうすぐ衣替えなので絶対に失敗は回避しなければならない。



自らの経験を踏まえて

人の口コミやレビューなんかあてにはならない。彼女の好みは彼女以上に私の方がよく知っている。それでも気分屋の彼女に振り回されること二十数年、私の頭の中の消しカスを再集合させた結果1つの答えにたどり着いた。

ブヒー! (ここは豚しかない)

マガジンにまとめられている記事、”突撃!初見の昼ごはん”の中で特に注目を集めていたのが ( 豚編 )だった。これはマガジンのみならず私の全記事の中でもぶっちぎりのビュー数を稼いでいる。もちろん何かの応募だったか、タグだったか、なにかで誤って誘導された哀れな人たちの数であることは承知している。

しかし、数字というのは一定数以上あれば、そこに指標データとしての信憑性のようなモヤがかかるため、伝えようによってはイケなくもない。まして私は以前より中年細長詐欺師を公言しているように、説明や紹介をすることはお手の物。胡散臭さにかけては定評があり、右に出る二の腕を(ry

いつもと違うところに行こうか

そういって切り出した私のセリフは、少し震えていただろうか。緊張しているのか?いや、たまたま整備状況が悪い路面を走行中だったからだ。問題ない。

彼女は即答せずに少し考えているようだった「う~ぬ…」
気のせいか一瞬、世紀末覇者を相手にしているかのように感じたが、路面状況のせいで「むむむぅ☆彡」が一子相伝の暗殺拳マスターみたいに聞こえただけだ。妄想もここまで行くと日常生活に支障をきたす。私の可愛い彼女が黒王号に乗っているわけがない。


デデン!

おや?隣にいるのは

中年細長詐欺師の本領が発揮され、見事に目的のお店へ連れ込むことに成功した。しかし、本領はもっと他のところで発揮してもらいたいものだが、ラーメンが冷めるのでその話は次回の会議までにまとめておくとして、

滑らかで深い味わいの豚骨スープ。豚特有の臭みやクドさが一切なくクリーミー、さっぱりとした濃厚さという2面性を成立させている。白濁したスープは見た目と違い、口に入れた瞬間「なんと澄み切った上湯か!」と気分がアガること間違いなし。麺は細麺、ちゅるちゅると啜る口元も不思議と脂っぽくならないのがうれしい。夜だというのに店内は満席で、女性二人組のテーブルが3つもあった。もう、夜のラーメン店は男たちの憩いの場という時代ではない。おしゃれで清潔な店内、毎日ラテアートをアップするカフェで流れていそうなBGM、女性も気軽に入れるお店なのに味は研究しつくされた超絶本格派。もちろん一発で彼女のお気に入りのお店となりました。

ミニパイカ丼(豚軟骨)

トロっトロに煮込まれた豚軟骨のミニ丼が今回初参戦している。2日間煮込んだ豚軟骨を甘辛く煮て、煮卵とともにトッピングしてある。これが驚く程やわらかく、骨とはいったいなんなのかと考えさせられるプルプル食感。コラーゲンを効率よく摂取する最適解として学会で発表されているであろうこのミニ丼は、めでたく彼女から合格点を出されていました。

まとめ


このように慣れ親しんだ夫婦の間柄であっても、毎日が小さな発見の連続である。そしてそれを二人で楽しめるかどうかが重要なのだ。最後に今回の戦いの中で、世紀末覇者様から「ニンニク入れてみ?マジでヤバイww」といきなりマウントを取られました。ここは今後、彼女が発見したお店として認識されるようになりましたことを報告いたします。
私からは以上ですブヒー。

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