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詩 祈る男

祈る男がおりました
神社へゆき お寺へゆき
手を鳴らし あるいは合わせ
拝殿には後ろに並ぶ人たちもいますから
急いで慌てて祈ります
彼が心で訴えかける その内容は
あながち不可能ではない未来
神仏はきっと助けてくださると
そう思って 信じて祈ります
もとより もう祈ることしかできないところ
賽は投げられたと わかっておりますから
あとは運だと 考えておりますから
そこへお力添えをと どうかなにとぞと
彼もなかなか必死です
祈りを終え 帰るとき思うことには
さて 人事は尽くしてきたものか
天命を待つだけのことなのか
そういうことが彼には疑問です
神仏が手を差し伸べてくれるほど
きちんとがんばってきたのだろうか
追い求める夢のために
どれだけのことができただろうか
鞄の取っ手のあたりで お守りが揺れています
いくつものお守りは さりさりと音を立ててこすれ
何か語るわけでもなく
それでも彼を助けるでしょう
帰り道 午後の日差しのもと
神様に仏様に 今日は祈ったぞと
すっきりした気分でいるようで
もうじき 彼は報われそうです
そう思わないと かわいそうでしょう

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