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やりたいことなんて、なくていい

2725文字(約5分で読めます)

福祉サービス事業所で働いているかえるといいます。今日は、下記の本の紹介です。

前回、前々回のnoteに引き続き、伊藤羊一さんの本です。

「やりたいことなんて、なくていい」に込められたメッセージ

ここ数年「やりたいことを見つけよう」「やりたいことを仕事にしよう」といった文章を見かけることが多くなりました。

確かにポジティブなイメージで、間違ってもいないし賛同できる人も多いと思います。しかし、「そもそも、やりたいことが特にない」「どうやったらやりたいことが見つかるのかわからない」と思っている人は多いのではないでしょうか。

そういった、「やりたいことが見つかっていないし、そもそも見つかる気配すらない」と悩んでいる人に対する伊藤さんなりのメッセージが書かれています。

そのメッセージとは、「やりたいことが、今はまだ見つかっていなくても大丈夫。それは徐々に見つけていけばいい(自分もそうだったから)。その見つけ方を伝えるのでやってみてね!」です。

やりたいことの見つけ方

これは魔法のような見つけ方があるわけでもなく、特別な自己分析ツールがあってそれに答えていくと自分のやりたいことが見つかるという類のものではありません。

びっくりするくらいシンプルです。やりたいことは、「今やっていることに全力で取り組むことで見つかる」ということが結論です。

あなたの武器は「目の前にある仕事や経験」の中にある

ものごとには、must・can・ willという分け方があります。
・must:やらなければならないこと
・can:できること
・will:やりたいこと
「やりたいことを仕事にしよう」というのは「will」がすでにあって、それが行動に写せる状態の人です。でも、「やりたいこと」がすでにある人はあまり多くなく、逆にmust(やらなければならないこと)の方が日常には圧倒的に多いのではないでしょうか。

伊藤さんはがいう「今やっていることに全力で取り組む」とはこの「やらなければならないことに全力で取り組む」ということです。

全力で取り組まないとは、「斜に構えて」いたり、「どうせ一生懸命やっても、適当にやっても大差ない」という姿勢で取り組むことです。

「やらなければならないこと(must)」に全力で取り組んでいると、やがてそれが「できること(can)」になり「できること(can)」が増えると、そのうち「やりたいこと(will)」が見つかるという流れです。

「できること(can)」が増えるとというのがミソだと思います。それまでは、「やらなければならないこと(must)」を全力で取り組んで質の高い「できること(can)」をたくさん作ることだと思います。

あなたの武器は、実は「目の前の仕事や経験」の中にある』と伊藤さんは主張します。

わらしべ長者的キャリア

わらしべ長者的キャリアとは
「必要に迫られて始めたことを(←must やらなければならないこと)
 突き詰めて、成果をあげると
 思いもよらない未来がひらける」
ということです。

わらしべ長者のストーリーを知らなかったり、忘れてしまわれた方は下記に概要を書いていますので参考にしてください。知っておられる方は飛ばして読んでください。

ある貧乏な男がいました。働いてもちっとも裕福にならないので、観音様にお祈りに行きました。すると観音様から「最初に触ったものを、大事に手に持って旅に出なさい」というお告げをもらいます。旅に出て、最初に触ったのが、何と転んだ時に手元にあった「わら」だった。旅のスタートはわらです。
しばらくすると、顔の周りを飛んでいた煩わしいアブををわらに貼り付けました。
すると、アブ付きのわらを欲しがる男の子に出会います。男の子のお母さんが子供が欲しがるので、持っていたミカンとわらを交換するよう提案してきます。男の手にはミカンが渡ります。手にする物を大事に旅を続けると、物々交換したい人が次々現れて、ミカンが反物になり、反物が馬になり、馬が屋敷に変わってお金持ちになるという話です。

僕のこれまでのキャリアを振り返ってみると

僕も若い頃(学生時代)全然やりたいことって、なくて学校卒業したら公務員にでもなろうと思って、受験するのですが(国Ⅱ種、県庁、市役所)すべて3年連続不合格(一次試験すら通らない)でした。その後大学が東京だったので、東京でフリーターしてたんですがお金が尽きて、地元に帰りました(2003年 当時25歳)。

その後は、地元でも非正規で働きながら、正規職員で採用してもらえるのは福祉くらいしかないなと思いヘルパー2級を取得します。

就活では福祉関係で探していたのですが、当時は就職できればどこでもいいと思ってましたので、高齢者福祉と障害者福祉では特にこだわりとかはなかったです(というか、対象者が違うこと以外は全くわからないからこだわりようがない…)。今の法人に入ったのはその時の就活がきっかけです。

3年目くらいの時に(2007年)、今でいう強度行動障害のある方の担当になったのが転機だったと思います。自分は長者ではないですが、わらしべ長者的キャリアに当てはめて振り返ってみると、

必要に迫られて始めたことー強度行動障害のある方の支援
突き詰めて成果を上げるー強度行動障害の状態が軽減する
思いもよらない未来がひらけるー研修で講師を頼まれるようになる(お小遣いくらいの収入が入る)

成果を上げるというとおこがましいですが、強度行動障害の方々の支援に関しては、最初は周囲のスタッフに、やり方を受け入れてもらえなかったり、「何やってんだろう?」って思われてたりしてたと思いますし、あんまり居場所なかった時もありました。

ただ、それでも「自閉症」や「行動障害」と名のつく研修には全て自費で参加し、本も読み漁って、実践でひたすらトライ&エラーを繰り返しをしてるうちに周りからも少しずつ理解してもらえるようになったのかなぁと(10年くらいかかりましたが…)。

僕は、まだまだ「できること」の数が足りなりなぁと思います。本書に書かれている「わらしべ長者的キャリアを形成するための極意」を意識しながら、更に増やしていきたいと思っています。

まとめ

伊藤さんも、はじめからやりたいことがあって、今に至るわけではなく、「やりたいこと」なんてなかった。「やらなければならないこと」を全力でやっていたらいつの間にか今が一番楽しく充実していると言っています。

伊藤さんのこれまでの道のりも決して順風満帆というわけではなく、20台では出社恐怖症になり毎朝嘔吐した後に出社し、ついには、うつ症状が表面化します。しばらく休職したのちに復職されます。それからも、山あり谷ありの道のりを歩かれ、現在50代になるまでの伊藤さんの「生き様」を通して「やりたいことの見つけ方」に対する一つの道標になる本でした。



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