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noteで書く小説②

 創作大賞2023が始まった時には、特に興味がなかったのですが、フォローしている渡邊有さんが投稿なさった作品を拝読して、自分も過去作を書き直して投稿してみようかなと思い始めました。
 
 本当のところ、プロの作家になりたい方は、創作大賞よりも普通にどこかの新人賞を目指した方がいいと思います。これは、私の勝手な思い込みではなく、小説限定ですが、ジャンル問わず有名賞の最終選考orそれに近い選考に残った経験のある方は、創作大賞にはほぼ応募なさっていないはずです。ジャンルも不明、最終選考に残っても作家の方々に読んでもらえるわけでもなく。スキの数で選考というのも、かなり謎ですよね。

 でも、賞をとることにこだわらなければ、創作大賞は魅力的なイベントに思えました。noteは連載物には向かないサイトだと思っていたのですが、イベントの期間なら、普段よりは連載物が目立ちやすそうですし。

 太宰賞の一次を通過した時、一番嬉しかったのは「私の小説を他人に読んでもらえた」ということです。村上春樹さんの『1Q84』で得た知識で、作家の卵である下読みの方が読んで、「そこまでひどくはない」と思って下さったんだなと想像したりして。
 嬉しかったけど、そこまでなんですよね。どこかの誰かに読んでもらえただけ。これは、その上の選考を通過しても同じです。最終選考に残らない限り、名前のない誰かに読んでもらって終わり(エンタメ系だと、一次選考通過で評がもらえる賞があったと思います)。
 もちろん、プロの読み手の方は、一定の評価基準をお持ちですから、その方々に読んでもらえるのは意味のあることです。でも、一度ぐらいはnoteという、もう少し読み手との距離が近い場所で小説を投稿するのもありかなと思ったのが、応募のきっかけです。

 その割に、元盗撮犯が主人公の私小説(不倫話付き)というおよそネットで公開する作品としてふさわしくないものを選んでしまった自分を蹴飛ばしたいですが……。

 最初に投稿するつもりだった作品は、ややエンタメ側の作品なのですが、この作品に限らず、エンタメ色が強いものは、文字数が多く、登場人物も多く、筋も複雑という、noteの連載には不向きな作品ばかりで。

 ゾンビ物やパラレルワールド物のように、特異なジャンル作もnote向きじゃない(けっこう本格的なSFを投稿している方をお見かけしましたが、コアSFファンがフォロワーさんに多いのでしょうか。それに、ゾンビ物って今更古いですよね。パラレル物はマルチバースに変えられるけど)。

 また、高校生が主役の小説は、未成年のいじめ・自殺等重い話も登場するので、私如きが軽々しく投稿すべきではないと迷ってしまって。

 要は、私の作品がネットのような幅広い方の目にとまる場所で公開するのには向いていないということなのですが。


 それにもかかわらず、私の小説を読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。一日のうちの数分とはいえ、知らなくてもいい、暗い話に時間を割こうと思って下さった方々に、心から感謝します。
 その中でも特に、読了後にコメントを下さった方々とその方々の作品について、少し書いてみます。

  渡邊有さんは、私とは好きな作家や小説が重なる部分が多いのですが、それでいて、私の感想とは全然違う感想をお持ちなので、渡邊さんの感想文を読むと、自分の読書世界が大きく広がるのがわかります。一つの文章に込められた作家の想いを拾い上げ、それを自分の世界を結びつける、そんなステキな読み方をなさる方です。
 
 そんな渡邊さんが投稿なさった小説が『弦月』です。抒情豊かな世界観、透明で少しはかなさも感じる余韻など、非常に渡邊さんらしい作品になっていると思います。同じ芥川龍之介(特に後期作)ファンなのに、なぜ渡邊さんの世界観はこんなにも美しく、私の世界観はあんなに殺伐としているのか……。そんなことを考えながら、読んだ作品です。

 渡邊さん、憂鬱な小説を読んで下さってありがとうございます。渡邊さんのおかげで、小説投稿に踏み切ることができました。

 吉穂みらいさんは、別名のみらっちさんとしても活動なさっている方です。
 吉穂さん名義では、最初に読んだ短編はダーク・ファンタジーというのでしょうか。背筋が寒くなるようなところさえある美しい作品なのですが、次の作品はまた違う作風で。日本の古典にお詳しいようで、それを踏まえた作品もいいですし、SFタッチの作品、無頼風の作品……。どんなジャンル、どんな作風でもお書きになれそうです。

 創作大賞には、他の作品も出していらっしゃるのですが、私はこの『GOLAZO』がお気に入りです。自分の若き日に思いを馳せる世代だからかもしれません。若い日の記憶と、今現在の自分。夫と、記憶を彩る男たち。主人公のような経験はしていないのに、同じ経験をしたような錯覚にかられる小説でした。

 吉穂さんのような読書巧者から感想をいただけて、光栄です。ありがとうございました。

  コニシ木ノ子さんも創作大賞に応募なさっていたと思うのですが、記事を見つけられなかったので、去年読んで感動した短編を紹介します。
 コニシさんの感想文などを読むと、硬質な文章と、没入のさなかに醒めて自分を見つめようとする眼差し、女性に弱そうなところまで(私の勝手な印象です)、ハードボイルド小説の主人公が綴っている文章だろうか? と思ってしまいます。大江健三郎さんはじめ、難関な作家と格闘するような本との向き合い方も、非常に興味深いです。
 『道徳アプリの道標』は、これを読んで「ホラー短編のコンクールに応募しなくてよかった……」と心から思ったぐらいに、桁違いに素晴らしい作品です。この短編が賞をとらなかったのは、私にとってnoteの七不思議の一つです。
 
 女性である私が男性視点の小説を書くことは大きな挑戦なので、それを男性に読んでもらえた上に、感想までいただけて、小説を投稿して良かったと心から思えました。ありがとうございました。


 その他の方々も、つたない小説を読んで下さって、本当にありがとうございました。
 


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