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麦茶とチーズと冷蔵庫

夜中、無性にお腹が空くことがある。寝ているときは感じないが、遅くまで作業をしていたり映画を観たりしていると、はじめは気づかないふりをしていても、次第に自覚せざるを得ないほどの大きさでお腹が鳴り始める。ぐるぐる、ギュルギュル、まるで雷の音のようだ。

ベッドの上でパソコンと対峙し、しばらくの間考え込んだものの空腹には耐えきれず、私はキッチンへと向かった。冷蔵庫の左ポケットにしまってある麦茶のポットを取り出し、寝ぼけ眼で口にした。キンキンに冷えた麦茶が喉を通り胃に向かって行くのが分かる。徐々に胃が起き、目が冴えていく。

しかし、まだ空腹は満たされない。ふと時計に目をやると、夜中の4時を回っていた。いや、朝と言ったほうがいいかもしれない時間だ。

今から寝たらきっと起きる頃には昼だろう。逆に起き続けていたとしても、明け方には自然と眠りに落ち、1日を無駄にしてしまうかもしれないな。
答えの出ない問いが頭の中を駆け巡る。

麦茶を飲み干し、もう一度冷蔵庫を開ける。外はまだ暗く、電気をつけていないキッチンでは冷蔵庫だけがぼんやりと光を放っていた。
普段であれば、こんなにも冷蔵庫の中身を見つめることなどまず無いだろう。オレンジの淡い光に照らされた調味料や食材たちは、まるで自分たちの活躍のときを静かに待っているようで、少し微笑ましかった。

私は一番上の段に並んでいる6個入りのチーズを手に取り、キッチンの調理台に腰掛けてそれを食べることにした。辺りには冷蔵庫の運動音と私の咀嚼音だけが響いている。

しばらくしてチーズを食べ終わり、ふと時計に目をやるとあっという間に5時を過ぎていた。私の空腹が満たされるのと時を同じくして、外が明るくなってきた。

あぁ、もう一度歯を磨かなければいけないな。そんなことをつい考えてしまったが故に気怠さが染み出してきたが、なんだか今日はその気怠ささえも心地よく感じることができた。


チーズにはワインが一番合う気がしなくもないが、麦茶とチーズと過ごす夜も悪くない。



ではまた、シーユー。

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