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【官能小説】放課後は社会勉強93

「棚橋さん、お会計のとき、キャンペーンのサービス券を僕に渡し忘れていたよ」
それだけ?
「…そうでしたか。たいへん申し訳ございません。そうしましたら、次回ご来店のときに…」
「サービス券の配布は今日までだったね?」
「あ!?でも、店長に報告いたしまして、次回来店の際にお渡しするように…」
「その次回の来店が、いつになるのか分からないのでね…」
「ぇ?」
「いやぁ…僕も明日から海外出張なんでね…仕事の進み具合で、いつ日本に戻れるのか…」
それだと…期限内にサービス券を使う機会もなさそうだけど…
「あの、私の持ち合わせが今、ありますので…よろしければ…」
「そういうことではないんだ」
「え?」
「例えばお客さんから『お釣りが五千円足りなかった』と言われて『そうでしたか』って手持ちの五千円を渡せる?渡せないね?」
「…はぃ…」
「僕だって、僅か数十円程度安くなるサービス券の渡し忘れに目くじらを立てることはしない」
「金額の問題では…ありません」
「そうなんだ。で…もしかしたら他のお客さんに対しても同様なことがあり、他のお客さんは面倒だからと連絡もしていないかもしれないし『もう二度と行くか!』と怒っているかもしれない」
「それは、困ります」
「そうだね?だから僕はこのままにせず、あえてキミに連絡したんだ。今後のよりよい店内サービスのために今回の件を活かしてくれればいいから…サービス券はもう手配しなくていい」
「お申し出、ありがとうございます。この件については店長に報告し、全従業員で情報を共有しまして…」
「あ…そこまでしなくていい」
「え?」
「いや、あの…僕が次回、店を利用しづらくなる。気を使わせる」
何で私だけ…
「そのようなことは…」
「それに、どのようにその申し出を受けたのか?ってことになる。ややこしいことになる」
「そうです…けど…」
「だから、彼女にはそれとなく伝えて…キミ自身は他人事と捉えず、今回の件を活かしてくれればいい」
「はぃ…」
このヒトはただの女子高生アルバイトに何をどこまで求めているのだろう?
「じゃあ、改めて…」
「え?あ、はいっ…この度は…」
男性常連客に向かい、姿勢を正し、両手を前で重ねる。
「いや、もっと改めてもらおうか?」
「それは…どういうことでしょうか?」
「テーブルの上に立ってごらん?」
「え?」
「大丈夫、キミが乗ったくらいでは壊れないよ」
「?」
「これは店頭に置かれたステージだ。キミはキャナルコーヒー駅ビルショップの店頭で、今回の件で多くのお客様に迷惑をかけたことを謝罪するんだ」
「私が…ですか?」
「キミはキャナルコーヒー駅ビルショップの一従業員だね?」
「はぃ…」
「そして、駅ビルショップはキミを目当てに多くのお客さんが来店している」

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