異訳Japonca-Türkçe Tanka 2024/03/03
昨日、千葉県松戸市でzineフェスがあった。どの方の出店も面白く、会話の苦手なわたしであるが、交流させてもらった。出版流通ということでなくとも、個人、グループでなにかを発信するということができる時代なんだな。zineのみではなく、色々な面で、個のあり方を追求することがしやすく、その重要性が高まっている時代でもあるかも知れない。
さて、今日も短歌日和、語学日和だ。
じつは、この谷川さんの短歌を選んで、異訳作業を始めたその日に完成してしまった。そう、してしまったのである。その初稿をここに記す。
この短歌異訳、わたしにとって色々問題がある。
第一に、実作の時間の実感。スムーズに進みすぎた。抵抗を感じつつ、ああでもないこうでもないと考える時間を味わっていない。これでは何のための異訳実作なのかわからない。
第二に、翻訳の仕方。吐き捨てた→tükürdük と訳した。が、である。これは以下の手順を経たものだ。
オンライン辞書で
吐き捨てる→tükürmek
接続させるために文法規則に従って、変化させ→tükürdük
たとえば「背中を押す亅を英訳する状況を考えてみよう。
「背中を押す」例を二つ挙げる。
友人と列に並んでいる。列が進んだようだ。が、友人は手元のスマホを覗き込み、気付かない。わたしは進んだぞ、と言いながら、背中を押した。
友人が柔道の試合に臨む。緊張した面持ちをしている。「がんばれ、お前なら最善を尽くせる。なぜってお前だからだ。やってやれ。緊張が、お前の力を引き出してくれるぞ、いけっ!亅と背中を押した。
おそらく対応する英単語は
1 push
2 encourage、 cheer、 raiseあたりか
もしかしたら、pushにも2のニュアンスはあるかも知れない。しかし、状況1を英訳する際encourageは誤訳だろう。
もっとわかり易い例が、池上嘉彦氏の「<英文法>を考える亅にある。「辞書を引く亅の引くの英訳にdrawを使う誤答の例を挙げておられる。
一対一対応ではないのだということ。当たり前だけど、かなり重要なことだろう。こういうことを、外国語を初めて学ぶ生徒に懇切に説き明かすことは、あって良いことのように思う。
ちなみに、池上氏言及の誤答は中学生ではなく、ある年度の東大入試に多く見られた誤答だそうである。
話を戻して、私の訳す「吐き捨てる」は台詞を吐き捨てるのだ。台詞を「吐き捨てる」とき、唾を「吐き捨てる」とき、同じでいいのか。100%アウトと断言はできない。日本から遠く離れたトルコの地で話されている言葉は、日本語との間になぜか、共通性が結構あるのだから。とはいえその可能性は低いのではないか。
明示する問題点の最後、谷川さんのオリジナルは全体が名詞句になっている。前半が節、後半名詞句ともとれるが。わたしの初稿では、二つの節にしてしまっている。わたしは、それが嫌だ。
再考。
まず、オリジナルをもっと味わってみよう。
捨て台詞とある。慣用表現ではあるが、ふたりの口論が衆目を集めているように感じる。
ふたりとある。わたしはこの文字列を見ると、かつての朝ドラ「ふたりっ子」を連想した。本当は、いつも仲良くしてる、仲良しコンビなのだろう。
そして、ことのはずみで口論になる。どっちも衆目のなかで引くに引けない。なんとかかっこうをつけようと、投げつける言葉。でも感情が先走り、言葉が捨て台詞として様にならない。
ちょっと可愛らしさも漂う。ユーモアラスな感じ。
そこで、ふたり→iki kişi ということばに一行使うこと
にした。
言葉が様にならないのを、焦る→acele etmekで表現。
aceleの発音はアジェレ。もしスペルがaçeleだったらアチェレになる。ちょっとかすってる。ほんとにトルコ語はこうゆうのが多い。
あら、あら→Allah allahでちょっとユーモアな感じを。(これも間違いなく、トルコ語です、ダジャレ目的ではないよほんとうだよ)口論を見ている人を感じさせる意図もある。
そして、出来上がったのがこちら。(再掲)
反省
全体を名詞句にはできず。でも節二つだった初稿に対し、完成版では、前半を節、後半は名詞句に。
若干、オリジナルの形式に歩み寄れたと思う。
文法的なことで、いまだ不明なこと。
進行形+完了形
という形つまり ıyor+du→ıyordu
という文法使用は、妥当か否か。
なぜか、トルコ語異訳をしていると、(まだこれが二作目だけど)この進行形+完了形を使いたくなる。
そろそろいい加減確かめないといけないな。
ということで、はじめにお読みください。にも書いたのでだが、文法の正確さは保証できないのです。ご容赦を!
誉め
一旦は一日で終わった異訳実作を、ここまで引き伸ばし、時間を楽しめた。よかったぜ。
さて、つぎはどの短歌を異訳しようかな♫
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