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呵責液
2020年6月21日 17:31
夏至の日、窓枠の額縁に嵌められた黄昏〈トワイライト〉が、蕩けた琥珀蜜の色から、熟れすぎていよいよ腐る一歩手前の果実の色を通り過ぎ、燻る煙の向こうの緋色に変る時、それが現と夢の境、明の幽のあわいに立つもの達の夜会の合図。ある者は釣鐘草の、ある者はカンパニュラの、ある者は蛍袋の、ある者はイワシャジンの形の、中心から自ら光を放つ花を手に持つ。筋脈が見えるほどの薄い花びらの中に、螢蟲をしまい込んだ行灯
2020年6月27日 21:20
濁った色の水晶に似た、石華石膏をくり抜いて作られた、巨大な鳩の塔。金魚の隠れ家をそのまま大きくしたような、海底に沈む人魚の海泡石の城に似て、栄螺(さざえ)状の石の塔は、足元から頭の先に至るまで、各階に鳩達の出入りのための窓が、虫に食い潰された貝殻がましに見えるほど、無数に空いていた。窓には、鳩達とそれを世話する役目の人間の足場が、巻貝の棘のように伸びていた。その棘の足場だけでなく、塔の内部の