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詩)夢

カーテンの隙間から陽がきざしている
日常に刷り込まれた洗濯洗剤のにおい
コップいっぱいのお水
こぼさないよに一生懸命だった
隣の坊ちゃんの夢
今朝、アメリカに旅立ったらしい
傷つけないように優しく
洗ってあげて
ママはもうすぐ弁護士になるの

きめ細かな泡で
包んであげて
淡くおぼろげな記憶
呼び起こさないで
わからないままがいいの
なかったことにしてとは言わないわ
笑ってくれてもいいから
十九の夏は流れた影
踏みとどめようと水を撒く

宙にかすかな軌跡
描いて落ちて
染みとなれ
確かにそこにあったのよ
でも今は見えないわ
口に出しては鬼が笑う
誰かのためにはやっぱりエゴだわ
罪と罰とに賭けてみる
ママは十九を捨ててきたの

ホントと夢は裏表なのかしら
夢はホントの中にしかないわ
だってママがそう言ってたもの
隣の嬢ちゃんはママが大好き
刷り込まれた女の情念は
幼子を徐々にママにしていく
夢は卒業アルバムに飾られ
一生そこから動かない
だから夢はみないことにしたの

全てのものが遠くて
多くのことが夢だった
遠いものと近いものがあって
ホントとニセモノの区別を迫られる
十九になった嬢ちゃんは
ママになりたくないと口にした
口にしたから鬼が笑う
明日彼女はカナダへ行く
明日彼女はカナダへ行く


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