木偶の縫子

赤く火照った月の夜　
ガラス細工の子猫が鳴きだし
子供さらいの魔笛とともに　
木偶の縫子の犯罪が始まる

午前０時に渡した恋文　
片思いのフランス人形
彼女ったら読まずに私を　
青い瞳でジロリと見つめる

なにさアンタも無視するの？
嗚呼、どうせ誰にも愛されず
嗚呼、ボロボロと朽ちていく
現実は死んだ、幻想さようなら

縫子はフラれた腹癒せに　
尖った鉛筆握り締め
片思いのフランス人形　
青い瞳にプスリと突き刺す

なんてブザマいい気味ね
嗚呼、咽ぶピアノに寄り掛かり
嗚呼、ボロボロと涙を流す
現実は死んだ？

幻想のタンゴが鳴る前に　
此処から逃げ出して人形に　戻ろう

ねぇ、気付いてた？　
幻想ドラマの行く末を
ねぇ、感じてた？　
縫子が後ろにいる事を

濡つな愛の絹を私にください　
夢現に抱かれたあの日よさらば！

ねぇ、解っていた？　
縫子があの娘を殺したと
ねぇ、どうかしてるわ！　
人形愛憎劇だなんて
さっきから　鉛筆持って　あなたを見つめ

ねぇ、騙された？　
私が人形と思ったの？
ねぇ、終わりにしましょう！　
明かりがついたらそれまでよ
ねぇ、終わりにしましょう！　
明かりがついたらそれまでよ

魔法が解けた 鏡の向こう
すすり泣く夜に 手を差しのべて
確かに触れた あの日の言葉
消しゴムで消して さようなら

2009年
血の濫觴/ストロベリーソングオーケストラ
作詩/宮悪 戦車　作曲/キリヒラ ランセ