一通の手紙(怨源未発表)
生きるのに飽きた 男の衝動
震える手が書く 一つの手紙
恋文でもない 文通でもない
真っ赤に染まった 四十九の文字
それから男は、その手紙を電柱の外灯の光りにボワッと浮かび上がる、いつ誰が取りにくるかも解らない黒いポストに投函しました。
手紙に書かれていた宛先は実在しなかった為、手紙はヒラヒラと時間の狭間をさまよいました…
「郵便番号五七八零九零八」
「海馬郡鏡町仏壇仏具長屋六ノ三上ガル借家」
「宛先不明」
「差出人ノ元二返却致シマス」
「差出人不明」
「差出人ハ小柄ナ男デゴザイマシタ」
「戸籍上ニ男ハ存在致シマセン」
「コレニテ本日ノ業務ヲ終了致シマシタ」
…ユクエシレズ…
キキキ…時計は左傾を差して
ダダダ…手紙は地獄の通関
ヤヤヤ…蛍の放火の明かり
ラララ…この世に宛名はいらぬ
シュシュシュ…汽車は終点目指し
ザザザ…虫籠蛍の死骸
ガガガ…轢死の首見あたらず
ルルル…手紙を不図、思い出す
エイ 生まれついての欲を
エイ 手紙にのこして
エイ 行方知れずの夏を
エイ 犬と一緒に捜して
エイ 首に纏わり付いた
エイ 長い濡髪怨歌
エイ 俺の身体はここに
エイ 俺の身体はここに
ユクエシレズ! ユクエシレズ! ユク…
キキキ…時計は左傾をさして
キキキ…時計は右傾をさして
柱時計は語りかける
「平凡な君にはお似合いだよ、アハッ」
覚醒の少女を血眼に
焼き付けてヒラヒラとさまよう
去年の暮れに出した手紙は
いつ届くのであろうか いつ?いつ?いつ?
「先生…お久しぶりです。私の事覚えておられるでしょうか。先生と一緒に紫色の空に浮かんだ、あの一番星を見つけたあの真夏の夜が未だ忘れられません。
先生と歩いた帰り道、先生が教えてくれた放課後の教室、私の事を抱きしめてくれた先生のあの匂い、、、
先生!私の身体はもうここには無いのです…泳ぐ事を忘れた人魚の涙は、いつ迄流さなければならないのでしょう。
荒れ狂った漆黒の海に、無数の難破船乗組員によるモールス信号。
応答せよ、応答せよ、応答せよ、応答せよ……
先生、いつか又二人であの道を歩ける日が来る事を願っています、いつか必ず。」
必ず…
さまよう
虚構と現実のポストを行き来している
一通の手紙よ
俺の身体はここにあるのだ
顔の無い郵便配達夫から渡された手紙には
宛名が書いてなかった
だがしかし俺の身体はここにあるのだ
応答せよ、応答せよ、応答せよ
時代背景~怪説
当時の演劇公演「少女地獄」2006年度版のフライヤー。
共演者に三上寛さんや、アングラロック方面(どんな方面だ)ではなかなかぶっ飛んだ個性派バンド・組織暴力幼稚園とご一緒させていただきました。今のストロベリーを知る共犯者の皆さんには想像もつかないであろうカオスなイベントに良く出演させてもらってたので、またこんな感じのイベントにも出演したいなあと思っている次第でありますよ。
スケジュール欄を見ても解るように、今では考えられない行動力で全国巡業、お招きいただいたブッキングイベントながらも持ち時間1時間といった演劇公演!という若さ生活ストロベリーアイ満開の公演でした。佐賀県なんかは色々トラブルもあり、ストロベリー内では後々も語り継がれている仁義なき戦い現場でもあり(笑)
今は無き千日前クラブウォーターでの単独公演は、ラスト、ステージ天井に仕込んだ大量の包帯を姫草ユリ子役の蛭磨日出美が包丁で切り裂き、客席とステージに降り注いだ包帯によって出来た壁が出来上がる様は現代のソーシャルディスタンスを予言していたのかもしれません(そんな訳無い)
この一通の手紙という曲は初期ストロベリーからある曲で、当初からプログレ要素強い楽曲に詩をあてはめた物でした。現メンバーで演奏する機会があればやりたい曲ではありますが、ただ尺が長い!!
1999年 発表
2006年/2008年
演劇公演「少女地獄」劇中歌
作詩・作曲/宮悪 戦車
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