見出し画像

455○ いと

「いと」

言葉を知らないことで
泣くしかなかった時
それからずっとずっと遠くの
見知らぬ街にたどり着いた頃には
覚えたはずの言葉を
忘れていく絶望を抱えながら
口を縫い付けていた

自分の声はどんなだったか
幾年も忘れ去られた蛇口からは
掠れた音が虚しく響くだけ
遅れてはや
幾何かの月日の中で
わずかに滴る水を受ける両手があった
受け取ってくれた
見つけてくれたのは
紛れもない
唯一の愛するあなた

//////////

なかじ

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?