見出し画像

「さあ、温かい一杯のお茶をどうぞ」映画『陶王子 2万年の旅』

うつわの精霊「陶王子とうおうじ」が、
幻想と真実の世界を行き来しながら、
2万年の陶磁器の歩みを語り伝える


美しい陶磁器の人形アニメーションと、
女優「のん」さんのあどけないナレーションが、
器の温もりを心に届けてくれます。

「さあ、温かい一杯のお茶をどうぞ」

この最後の一言に
大好きな器を手したくなる。
優しく穏やかな気持ちで心が満たされます。

陶王子とうおうじ」の父は「火」、母は「土」。
彼の誕生から始まるタイムトラベルをほんの少しだけ覗いてみましょう。

約2万年前、誕生の地は中国。
日本では1万6000年程前に縄文土器が誕生します。

縄文土器 青森県 是川縄文館

単なる道具であった土器は
「神」や「自然」を写しとることを始めます。
鉱物から得た釉薬ゆうやくでその世界を表します。

やがてこの世に金属が登場し始めると、
その輝きや強さ、
響きに負けまいとするかのように、
石のガラス質を取り込んだ「磁器」が誕生します。

そして「陶王子とうおうじ」はアジアから西へと。
メソポタミアでは顔料で線や幾何学文様を描き、
エジプトではラピスラズリの「青」で神聖さを求めます。

人間の美しさを求める欲望は果てしなく、
「白」に憧れ、更にあらゆる色をも求め始めます。

ヨーロッパでは華やかな王朝文化が、
莫大な富と余すことのない技術で
優美で繊細な美しさの頂点を目指します。

白磁染付蓋付はくじそめつけふたつきクーリング・サーバー
デンマーク・ロイヤルコペンハーゲン磁器製作所
1800年頃  愛知県陶磁美術館

エジプトで始まった「青」の魅力は
イスラムに引き継がれ、
貴重なラピスラズリはコバルトにとって代わります。

トルコ イスタンブール トプカプ宮殿

「青」の魅力は西にももたらされ、
中国では「景徳鎮けいとくちん」の壺となり、

青花鳳凰文梅瓶せいかほうおうもんめいびん
中国・景徳鎮窯 1573~1620 愛知県陶磁美術館


日本では「染付そめつけ」として、
ずっと愛される存在へと。

陶王子とうおうじ」のタイムトラベルはここまで。
きっとこれからも「美」と一緒の旅が続くのでしょうね。

さあ、お気に入りの器で、
ゆっくりとお茶をいただくとしましょうか。

※この映画は昨年封切りされ、現在は公共施設などでも上映されています。

最後までお読みくださり有難うございました。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?