これは危険がアブナイ?(11)
今回もDマンションで1月に開催された定期総会の議案書を見て行きます。
「管理会社との委託契約更新」、「新年度事業計画&予算」、「新年度役員選任」等々、本来、定期総会で決議されるべき議案が決議されなかったDマンション管理組合・・・
今回は、具体的に「エレベーターリニューアル工事」事業案の・・・どの辺りが煮詰不足なのか?どうすれば良かったのか?辺りのポイントを・・・雑感としてお話したいと思います。
「理事会一任」は危険かも?
前々回のブログで取り上げた「マンション総合保険」の事業案も同じなのですが・・・
これまで経常的に行ってきた(例えば管理委託している事業等)を除くと・・・新年度事業計画案は、最終的に「理事会一任」で実施がベースになっています。(=新年度の理事会による「理事会一任」の比重が超高い!)
各事業の「具体的な仕様&予算(=見積金額+予備費)、何時?誰に?」等が、完璧に揃っている事業案が見当たらないのです。・・・このブログで「煮詰めが甘い!」と再三お話している理由はこの辺りにあります。
例えば「エレベーターリニューアル工事」に関しては、「(エレベーターメーカーによる)スタンダードプランの採用を考えております」と書いてありますが・・・「スタンダードプランで注文する」とは書いていません。(これでは「検討した結果、他のプランになった」も通用してしまいます・・・そんなアホな!)
「総会決議」と「理事会決議」の違い
管理組合の「事業実施を決定する機関」のは「総会」です。
対して「理事会」は「総会で決議されたこと(=事業)を粛々と執行する機関」に過ぎません。
「総会」では、実施する事業を・・・できる限り具体的に決議すべきです。執行機関に過ぎない「理事会」に(本来「総会」が担うべき)大きな裁量権を与えるのは考えものだと思うからです。
例えば、事業を実施した後(何年か後?)に不幸にも「あの事業は失敗だった!誰が発注した!」と物議が起きたとします・・・
仮に具体的な内容が「総会」で決議されていたら、「あの事業は組合員全員で決めた事業」となります。この場合は「皆で決めたのだから・・・仕方ないな」となります。
ところが「具体的には○○年度の理事会が決めた事業」となれば話が変わります。「○○年度の理事会メンバーは?理事長は?誰だ!」となり・・・管理組合のために一生懸命がんばって職責を全うされた当時の理事役員が、管理組合内で後ろ指を指される事態に陥ってしまいます。
しかもDマンションの場合は・・・
理事役員の任期は1年で、新年度理事役員に今年度の理事役員は誰も残りません。任期1年にはメリットもありますが、継続性が担保できないデメリットもあります。
新年度事業計画や予算が「理事会一任」のまま決議されたら・・・右も左も分からない(前年度の状況を何も知らない)新年度理事会は、管理会社(フロント担当者)の思うままハンドリングされてしまうかも?
管理組合の目線で見ると・・・これは、やっぱり「危険がアブナイ!」と思えてきます。
「エレベーターリニューアル工事」内容
その前に・・・
「総会議案書」に添付された見積書を見ると(マンション総合保険も同様に)日付は2021年12月上旬になってます。
第1号議案の理事会開催日に(2020年も2021年も)12月と1月に理事会を開催した記載がないので・・・どうやって理事会で審議して事業計画に入れることになったのか?全く理解できません・・・(笑)
添付の見積書をチェック!
「総会議案書」には、「エレベーターリニューアル工事」の見積書が3パターン添付されていました。
いずれも現行のエレベーターメーカーによる見積書でした。「ベーシックプラン」(見積金額:約1000万円)、「スタンダードプラン」(見積金額:約1200万円)、「デラックスプラン」(見積金額:約1300万円)以上3つの見積書です。
3つの仕様の違いは何かというと・・・内装の仕上げが違うだけです。
「ベーシックプラン」に加えて「スタンダードプラン」は、「かご内」の内装(仕上げ)をリフレッシュするプラン、「デラックスプラン」は「かご内」と「乗り場の扉」の内装(仕上げ)をリフレッシュするプラン・・・となっていました。
もし仮に現行メーカーによる「エレベーターリニューアル工事」を事業提案するなら・・・
議案書には「3つのプランの中から「スタンダードプラン」を速やかに発注します。(予算:不測の事態に備えた予備費○○円を含めて○○円、修繕積立金会計から拠出)なお、実施時期・内装色等の決定方法・工事に伴うエレベーター停止期間等々の工事会社との打ち合わせ等は理事会一任願います」くらいは最低限度記載する必要があるでしょう。
リニューアル工事中は・・・
工事期間中(約3~4週間くらい?)は、エレベーターが使えません。
マンション内にエレベーターが複数基設置されている場合は、問題が少ないのですが・・・地上10階でエレベーター1基のDマンションでは住民にとって大きな問題です。
この問題も・・・総会決議する前に住民に充分認知してもらって決議すべきでしょう。
工事期間中の(特に上階の住民や高齢者等のエレベーター必須の住民に対する)ホスピタリティのある対策を予め検討し・・・
議案書には「リニューアル工事に伴ってエレベーター停止期間がこんな感じで発生します。皆さんには不便が生じますが、管理組合として○○のための予算を確保し対策いたしたく思います」・・・くらいのことは書いておかないとNGでしょう。
仮に対策が思い浮かばなかったとしても・・・少なくとも「エレベーター停止期間が○日生じる」ことは議案書に記載すべきです。(たぶん、理事会でそんな検討はしてないだろうなあ・・・)
「エレベーターメンテナンス契約」も
現行と同じメーカーによる「エレベーターリニューアル工事」であっても・・・「エレベーターメンテナンス契約」が変わる可能性が高いと思います。でも、その辺りの記載は何もありません。
「エレベーターリニューアル工事」を機に・・・これまでの「フルメンテナンス契約」(=停電バッテリーやロープ等の将来必要になる高額な部品交換も月額保守料に含めた契約)を「継続できません!」と申し出るメーカーが増えています。(この場合は「POG契約」と呼ばれている契約に移行)
これも踏まえて、総会決議すべきでしょう。(煮詰め不足!)
なお「増えている」と書いたのは・・・ウラ?が取れていないからです。
三菱・東芝・日立・フジテック・OTIS(≒Panasonic)の国内主要エレベーターメーカー5社のうち、私は今のところ・・・2社しか確認が取れていないのです。(2社は、私が関わっている複数のマンション管理組合の「エレベーターリニューアル工事」でメーカーから上記の申し入れがありました)
たぶん・・・他の3社も同じだと思います。
次回は・・・「エレベーターリニューアル工事」をメーカーに依頼するパターンと「独立系」と呼ばれるメーカー以外に依頼するパターンがあることをお話したいと思います。 (つづく)
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