オバケレインコート(ショートショート)
夜道を歩いてると、自動販売機の横にオバケがいた。どうしてオバケだと分かるのかと言うと、こんな大雨なのに傘もなにも差さずに立っているし、目玉が1つしかなかったからだ。
「風邪引くよ?」
「怖くないの?僕は一つ目小僧だぞ」
「逆に心配、ずぶ濡れじゃないか」
「オバケは風邪ひかない。ここに立っていれば、人間を驚かせる」
「この自販機はあまり使う人いないよ。ほら、濡れないようにしないと」
「余計なお世話だ」
私はオバケを無視して、鞄の中ならレインコートを取り出した。
「私も今着ている物だ。そこらのレインコートとは質が違う。ここに何時間立っても濡れることはないよ」
「こんなの着てたらオバケに見えないじゃないか」
「だからいいんだ。人間だと思って近づいてきた瞬間、フードを取って驚かせば」
「成る程いいアイデアだ」
「ちょっとそれを着てる姿を写真に撮らせてよ▪▪▪。そう、いいね!撮すよ▪▪▪」
後日、私は宣伝部にその写真を持っていった。
「いいでしょこの写真。謳い文句は、我が社が誇る絶対濡れない化け物じみた性能!名付けてオバケレインコート!」
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