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詩歌

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#詩

さよ

さよ

ナメクジの虹にみちびかれ、古墳が少し急いでる。氷は雲の記憶をいつ許すのだろう/陸続きでない愛情とアクリル板に反転したさよのプネウマ、歩幅にくりかえしひとくくりの人幅を(人掴み)の彩葉を、ひとつひとつ詩音に添えて、これからのことを考えよう、最初の雨は真夜中にクレゾールの匂い、pleats(折りひだ)はplease(お願い)へとつぎの雨まで連鎖するとか、いってしまった橋ととどまっている石の、同

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シ しづむ 私(し)

せみのミにひきしまるシ 詩 紙面 畝る線に沿って南下する
トルトキスルトキ 稜線を少し押さエルと沈むシ しづむ 私(し)
鳴いテル薄膜の内側に差し入レルとき痙攣のみちびく枝枝がしなる
破(わ)れた房のなかへたよりに へたのちが燃やされる されど れ土
海をまたぎ産みをとりつける洞の背景に流れる 響きあう釣りあう 蓋の鳥
鋳型は変異し涙ぐむ種子を撒く飛翔と落下のあわいのなかでしかシは書かれない
つづ

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死滅するものへ

死滅するものへ

睡魔の金属、覚醒の金属、早朝に飛来する燕の金属、
黒と白のコントラストが空の沈殿、廃棄した廃油、焼却した表面、
錆びた切っ先、明らかに、微笑む動物臭、切り捨てられた沈丁花の枝
突然のLINEに、医療従事者の悲しみに、季節を越える光ファイバーに
すべての大きな懐古が欲望の糸口を伝う
研がれた銛の早朝のひかりが
都市の叫びを隠蔽してしまうような
循環障害のクロノス
躁急な、蒼穹な

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殻がない

殻がない

暖かい日差しから細いひとの産毛の呼吸を思い出した
奥浜名湖の岸辺へ帰りたくなる
そこから今切をあこがれる
ポエジィは事象から脱しようとする哲学
だと誰かが言っていた
海を渡る蝶が皮膚に引っ掛かって波が生まれる
わたしは海へむかって歩き出す
乾いた心は形而上学である
たんぽぽの汁を舌先に落としてみると
何かがはじまる
そのなかで魚がはね
死んだものにも影があるように
後ろから大股でや

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受胎

受胎

いともすみやかに接吻は忘れられた

放物線を描いた鳥の
糸柳の髪でしかなく
空の水脈を攪拌する杖がある
石灰質の裸身を人外に晒しながら
生まれなかった姉の
名前を聞いたことがある
幡の終わらない参道に
葬列は乱れ
風に緩やかに呼ばれている
招かれていたのかもしれない
逃避なのかもしれない
むかし
飛行機が墜ちた日のこと
海岸に耳が打ち上げられ日のこと
たくさんの林檎の実が落ちた日のこと

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詩的実験(8)

詩的実験(8)

鉱物質の味のする
赤土の付着した
春生まれのきのこを睡らせる
あるとき
夜から感染するという病気に
罹ったが
放牧されたことばを
葡萄酒で希釈したところ
唐黍の聴力のように
遠くまで届いたので
ペン先から滴る血のように
一度だけあなたに告げた

生まれなかった姉の
歌えないフレーズを
細いからだの毒を
眼のなかの蛹を
鏡をとおして
わたしは置き去りにされのだった

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六月の水道

六月の水道

尾道の日の
裸身の部分を垣間見たとき
河のながれを冷たさと知る
ひかりを裏返しながら
獣の匂い
「いけない いけない
「Vivants Vivants
柵内の庭に
血が渦をまく
打ち寄せる泡が、波が、小石が
花を咲かせる
音が燃えだす
足早に
通りすがりの夜
現像される
追い越される
固定される
いずれ砂漠の手のかたちに
まぶしく残る
丁寧に拭えば
痛みだけが
透きとおり
拍動

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詩的実験(7)

詩的実験(7)

遊歩者(フラヌール)として眼球の後をつけ
身体の少ないあなたを愛した
手袋とそのブロンズの手袋に鼻を押しあて
失ってしまう
カマキリの曲線とアールヌーボーと
宙吊りされる夕暮れがある

おおがさき
とこからかこと 
伏した父から聞きだした

素焼きの器に羽毛を詰めて
霧のなかから鳥が飛び立つ
足元は真っ暗く
紙を燃やしたあとかもしれなかった
あとは盲滅法にひろがる
数学的な

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詩的実験(6)

詩的実験(6)

消えては立ち戻る直線の
思想を石の中に混ぜる
血のようにひろがって
ゆくなかで読んだ
蛇の目をもつ王国の隅っこへと
捨てられた反古に書かれていた
そもそも最初から決まっていたことばしか
口にしなかった
空の根である反射光は
ロータリーを巡り
夜から飛び立つ鳥の
はじめてのくちづけを
出口の見えない通路に
鏡のなかをひかり続ける
ずっしりと重たいのだ
疲労した葉葉の旅路のために

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詩的実験(5)

詩的実験(5)

わたしの空の、鳥の話を始めよう
あたためているのは遅れてきた耳
鶏を懐に抱え頼りなく
天体の血がうちに流れる

空間が全て空と海だった
脱皮したのち、太腿まで水に浸り
草のにおいを洗う
欲望を洗う
つぎの脱皮まで
繰り返し
樹皮に傷つけて きく 
と刻んだ
めじるしだから
皮下出血の部分が
蛇の眼をして
物理学的配置のまま
骨が蕩けるほどに

埋めるか、食すか
区域外に逃

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パピエコレ

パピエコレ

蛇と舌をからめたあとの生臭い息を吐き出す
関節が噛み合わず嘘をつきとおしながら
向こうの岸へと向かう
皮膚呼吸に切りかえたあと糸のようにくだる 
と、
背中をバスが通過した
わたしはアスファルトに埋まっている
     *
貼り絵(パピエコレ)として
海に貼られた冷蔵庫のように軽く
移植臓器はひかりを発するまえに出発する
ときに雲間から、肉や葉や血液を送りつづけ
明確に視覚の境界

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差し向け(試行)

差し向け(試行)

草の焼けるにおい
はちみつの土のにおい
蝋燭の肌のにおい
死人の樹のにおい

招かれて
エゴノキの実のこぼれた庭に
ウサギを埋めたこと
鸚哥を埋めたこと
血はあたたかく
ニワトリの首を絞めました
きっと、わたしも埋められる
   *
ミルクの朝は
森のにおいを含み
炎に委ねて足を垂れる
ぼくはもう逃げない
手のひらを舐めれば
血の味がする

都市を守る
べきものたち

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化学〜風の行為〜

化学〜風の行為〜

取り囲まれるひとりを
不規則な強弱に触れられる
手をとって
顔のない宝石
輝いていたはじめの
裸のままの
海から陸へ、非連続的に
葉擦れの音に代用される
足元のあたり
頭上の手の届かない高さに
海を諭し
水面を慰め
纏わりつく範囲の
核心にかかわらず
拒絶する動線の
鳥は美しく想像され
嚢のなかの宝石が
音素でつながる
#詩

詩的実験(4)

詩的実験(4)

地下鉄のイマージュは
ひとのイマージュと部分的に重ねられ
威嚇的なインゲンを許しながら宝物殿へと納められる
時代を遡り、両腕で抱え込む範囲内へと金貨銀貨をばら撒き
分布状況は足で稼いだ地図へと転移され
核廃棄、減衰体制、挙用、医院と連鎖してゆく

構えたのだが、撃つべき方角が定まらない
安全な方角など、どこにもないのだ
急な傾斜地の農地を降り、岩をよじ登り
小屋から道路へ

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