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白井健康
2020年1月22日 11:29
心象実験 中洲に鳥は群れ水面のひかりが茫洋と遠ざかる蝶から蛹へ向こうの橋をトラックが渡ってゆく終えることができずに知らない場所から知らない場所へと飛び立つ発見を無数のはじまりを犬歯のような白さでつづけるそらと水と足元の占有権を主張しない余分なもののとどまる成立の一切交わらない真珠貝が真珠を異物として抱えているように発酵した記憶が鞄の底の見えない螺旋が悩ま
2020年1月16日 11:11
受胎 いともすみやかに接吻は忘れられた 放物線を描いた鳥の糸柳の髪でしかなく空の水脈を攪拌する杖がある石灰質の裸身を人外に晒しながら生まれなかった姉の名前を聞いたことがある幡の終わらない参道に葬列は乱れ風に緩やかに呼ばれている招かれていたのかもしれない逃避なのかもしれないむかし飛行機が墜ちた日のこと海岸に耳が打ち上げられ日のことたくさんの林檎の実が落ちた日のこと
2020年1月15日 12:58
詩的実験(8) 鉱物質の味のする 赤土の付着した春生まれのきのこを睡らせるあるとき夜から感染するという病気に罹ったが放牧されたことばを葡萄酒で希釈したところ唐黍の聴力のように遠くまで届いたのでペン先から滴る血のように一度だけあなたに告げたが生まれなかった姉の歌えないフレーズを細いからだの毒を眼のなかの蛹を鏡をとおしてわたしは置き去りにされのだった 内
2020年1月14日 00:17
六月の水道 尾道の日の裸身の部分を垣間見たとき河のながれを冷たさと知るひかりを裏返しながら獣の匂い「いけない いけない「Vivants Vivants柵内の庭に血が渦をまく打ち寄せる泡が、波が、小石が花を咲かせる音が燃えだす足早に通りすがりの夜現像される追い越される固定されるいずれ砂漠の手のかたちにまぶしく残る丁寧に拭えば痛みだけが透きとおり拍動
2020年1月12日 11:58
詩的実験(7) 遊歩者(フラヌール)として眼球の後をつけ身体の少ないあなたを愛した手袋とそのブロンズの手袋に鼻を押しあて失ってしまうカマキリの曲線とアールヌーボーと宙吊りされる夕暮れがある おおがさきとこからかこと 伏した父から聞きだした 素焼きの器に羽毛を詰めて霧のなかから鳥が飛び立つ足元は真っ暗く紙を燃やしたあとかもしれなかったあとは盲滅法にひろがる数学的な
2020年1月12日 11:49
詩的実験(6) 消えては立ち戻る直線の思想を石の中に混ぜる血のようにひろがってゆくなかで読んだ蛇の目をもつ王国の隅っこへと捨てられた反古に書かれていたそもそも最初から決まっていたことばしか口にしなかった空の根である反射光はロータリーを巡り夜から飛び立つ鳥のはじめてのくちづけを出口の見えない通路に鏡のなかをひかり続けるずっしりと重たいのだ疲労した葉葉の旅路のために
2020年1月9日 10:48
詩的実験(5) わたしの空の、鳥の話を始めようあたためているのは遅れてきた耳 鶏を懐に抱え頼りなく天体の血がうちに流れる 空間が全て空と海だった脱皮したのち、太腿まで水に浸り草のにおいを洗う欲望を洗うつぎの脱皮まで繰り返し樹皮に傷つけて きく と刻んだめじるしだから皮下出血の部分が蛇の眼をして物理学的配置のまま骨が蕩けるほどに 埋めるか、食すか区域外に逃
2020年1月6日 12:10
パピエコレ 蛇と舌をからめたあとの生臭い息を吐き出す関節が噛み合わず嘘をつきとおしながら向こうの岸へと向かう皮膚呼吸に切りかえたあと糸のようにくだる と、背中をバスが通過したわたしはアスファルトに埋まっている *貼り絵(パピエコレ)として海に貼られた冷蔵庫のように軽く移植臓器はひかりを発するまえに出発するときに雲間から、肉や葉や血液を送りつづけ明確に視覚の境界
2020年1月5日 10:35
差し向け(試行) 草の焼けるにおいはちみつの土のにおい蝋燭の肌のにおい死人の樹のにおい 招かれてエゴノキの実のこぼれた庭にウサギを埋めたこと鸚哥を埋めたこと血はあたたかくニワトリの首を絞めましたきっと、わたしも埋められる *ミルクの朝は森のにおいを含み炎に委ねて足を垂れるぼくはもう逃げない手のひらを舐めれば血の味がする 都市を守るべきものたち
2020年1月4日 10:22
化学〜風の行為〜 取り囲まれるひとりを不規則な強弱に触れられる手をとって顔のない宝石輝いていたはじめの裸のままの海から陸へ、非連続的に葉擦れの音に代用される足元のあたり頭上の手の届かない高さに海を諭し水面を慰め纏わりつく範囲の核心にかかわらず拒絶する動線の鳥は美しく想像され嚢のなかの宝石が音素でつながる #詩
2020年1月2日 11:34
詩的実験(4) 地下鉄のイマージュはひとのイマージュと部分的に重ねられ威嚇的なインゲンを許しながら宝物殿へと納められる時代を遡り、両腕で抱え込む範囲内へと金貨銀貨をばら撒き分布状況は足で稼いだ地図へと転移され核廃棄、減衰体制、挙用、医院と連鎖してゆく 構えたのだが、撃つべき方角が定まらない安全な方角など、どこにもないのだ急な傾斜地の農地を降り、岩をよじ登り小屋から道路へ
2020年1月1日 10:49
オートマチック 偉大なる裏切り者の、そして協力者の、交差する線上に膨らむ卵状の耳朶の、すこし塩分を含んだ井戸水の、朽ち果てた鶏舎の、解放される暖簾の玉が貴方の目的地へと、嫌われていると書かれた手紙の、全裸の雪原に鶴は飛来し、天気が回復するとか崩れるとかの、読み始めたのではなく読み終えるのではない詩の、髪の毛を噛んだ前歯の、水銀は転がる奴隷のように、ふたつ並ぶ神社が、よく砥がれた月の狂気を、退屈