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わたしの本棚86夜~「漱石先生ぞな、もし」

 今月12日に亡くなられた半藤一利氏のエッセイです。「日本のいちばん長い日」は原作を読み、映画(2015年、原田真人監督)をみました。残念ながら、氏の書物で読んだのは、この2冊です。亡くなってから、その業績の大きさをテレビニュースやインターネット記事で知りました。戦前の日本に今の日本の状況が似ていると憂いていらしたそうで、自分の考えは右派の保守だと思っていたら、いつのまにか左派と言われるほど、日本の状況は変わってきたと警鐘をならされていました。

 「昭和史をずっと見てきますと、私たち日本国民の中にはものすごい攘夷の精神というものがありまして。敵を追っ払う、協調ではなく、すぐ攘夷の精神をむき出しにするんですよ。そういう意味で“熱狂”しやすい。私たちは熱狂する時代を、自分たちで作っちゃいかん。常に冷静にみる、誠実であれということだと思います」テレビニュース(1月17日サンデーモーニング)でのコトバから。

☆漱石先生ぞな、もし 半藤一利著 文春文庫 437円+税

 この文学エッセイは、軽く、少しトリビアな感じで、漱石好きにはたまらない一冊です。奥様が漱石の孫という環境もあり、鏡子夫人をはじめ、親戚とのエピソードや、「坊ちゃん」「吾輩は猫である」のモデルの詮索など面白おかしく書かれています。鏡子夫人に対しては、「思うこと、いいたいことをズケズケといったが、悪意はこれぽっちも感じられなかった」と評されています。昭和史を研究してきた著者が、動乱の昭和の原点は、明治の中でも日露戦争以後十年の時代である、と言い切り、その時代を小説家として生きた夏目漱石の知られざるエピソードを発掘した軽妙なエッセイでした。新田次郎文学賞受賞作。文庫の値段は1996年の値段です。謹んでご冥福を言お祈りします。

 

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