「ぼくはそうは思わない」～こめられた思い・「逆ソクラテス」読書感想文

　読書の秋２０２０という企画があって、以前、第２夜で書いた「逆ソクラテス」を再投稿します。この夏、上半期読んだ小説のなかで、もっとも心を揺さぶられた小説でした。とにかく、小学生が主人公なのですが、微笑ましく笑えて、泣いて、哀歓でした。とても好きな小説です。

☆逆ソクラテス　伊坂幸太郎著　集英社　１５４０円＋税

　この夏、コロナの影響で自粛生活中に読んで感動した一冊です。ママ友さんに紹介されたのですが、教師という職に関わる人、全てに読んで欲しい１冊です。 

「僕はそうは思わない」小学生が主人公の５編からなる短編ですが、どれも哀歓あって、すとんと心に響きます。特に幼少期、先生、という第３者の大人から認められた体験は、のちに大きな財産になります。それを安斎くんという転校生を中心に主人公たちが級友のために仕掛けるという第１話は、安斎くんの謎の素性とともに哀愁を帯びて特に心に残りました。２話、３話にでてくる「ゴットファアザー」の名台詞遊びも可愛くて、わくわく感がたまらないです。 　

　伊坂幸太郎さんの著作は「ゴールデンスランバー」のような疾走感あるミステリー調のものから「重力ピエロ」のような少し重くせつないものまで、本当に幅が広いと思います。そして、新たに加わった感がある、小学生主人公のこの一冊。大人になっても忘れてはいけないものを気づかせてくれる、郷愁と切なさと、かつて子どもであった全ての大人たちに感涙の本だと思います。 １０月４日、この本が今年の柴田錬三郎賞受賞のニュース！　祝・受賞。 

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