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わたしの本棚96夜~「ナイルパーチの女子会」

 ママ友さんから薦められて読みましたが、わたしには熱量の大きい本でした。読みやすい文章で、スラスラと一気に読めますが、女性同士の悪口を言うのを聞いている感覚もあって、読んでる最中は、少々疲れてしまいました。それでもラストは希望ともとれ、ちょっとほっこりでした。

 水川あさみ主演でテレビ東京でドラマ化もされて、放映中とのこと。今月は、岨手監督「あのこは貴族」も観ました。どちらも、女性の友人、分断、格差、住み分け、嫉妬を描き、東京に住む女性たちの生きづらさを描いていました。

☆「ナイルパーチの女子会」柚木麻子著 文藝春秋著 1500円+税

 主人公栄利子は、美人で大手商社に勤める優等生のアラサー女性。親の代からの世田谷暮らしで、ご両親と同居。そんな彼女が、のんきなダメ主婦生活を書く翔子のブログを愛読し、いつしか会うようにもなります。同僚杉下の言葉を借りれば、「バックグランドや育った環境が違いすぎる。お嬢様育ちで、仕事に対して真摯な栄利子は、まっすぐで真摯な言葉しか発することはできない。父子家庭からフリーターから専業主婦になった翔子にはそれは眩しすぎて受け取めることはできない」栄利子は、女ともだちが欲しい一心で翔子にストーカーのようにつきまとうほどになり・・・。

 読んでいて、栄利子が痛かったです。友達って、そんなふうに求めるものではないはず、と幾度も思いました。翔子への言動が滑稽でもあり、あげくに職場で派遣社員の高杉真織(杉下の婚約者)から妬まれ、バカにされ、フロア全員の男性と寝ろと言われる姿は哀れでもあります。

「あの子は貴族」も、結局、東京(渋谷)出身の華子は学生時代の親友と、富山出身の美紀も同郷の友人と仲良く、という未来に落ち着き、ゆるやかな連帯、住み分けという表現をされます。「あの子は貴族」は読後感の良い映画で、男性からも好評価なのは、落ち着くところに落ち着くという、わきまえることができる女性たちだからかもしれないなあ、とこの本を読んでいて、思いました。

「ナイルパーチの女子会」も「あのこは貴族」も女どうしの友情の証みたいな感じで、自転車のふたり乗り、が出てきます。「あのこは貴族」では、美紀と同郷の友人のそのシーンは美しく(本物の友だち)、「ナイルパーチの女子会」では、栄利子は翔子とできて、泣いて喜びます。女ともだちができない栄利子が自転車のふたり乗りこだわるのは、見せかけにこだわっている気がして、興ざめしてしまいました。

 表題のナイルパーチは、スズキ目アカメ科アカメ属の淡水魚。たんぱくな味で知られる食用魚だが、ひとつの生態系を壊してしまうほどの凶暴性をもつ魚だそうです。栄利子が、タンザニアまで商談に行く魚であり、生態系というのが女子間のすみわけを表しているのかしら、と思いました。それにしても、女子会に猛烈に憧れる栄利子という女性。女性同士の分断、住み分けを描きながら、栄利子の、女ともだちが欲しいだけ、という純粋な心を思うと、最後には彼女の幸せを願ってしまいました。第28回山本周五郎賞受賞作です。

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