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わたしの本棚13夜~「少年と犬」

芥川賞と直木賞作品は、発表されると読みます。大阪女性文芸賞の下読みに関わっていることもあり、毎回、選評も読むようにしています。プロの選考を学べます。だから、受賞作品が「文藝春秋」や「オール読物」に全文掲載してくれると一度に両方読めてありがたく、嬉しいです。「少年と犬」は、今年下半期の直木賞作品でした。

☆「少年と犬」 馳星周著 文藝春秋 1600円+税

 馳星周氏の作品は、「不夜城」シリーズと「M」しか読んでなくて、乾いた文体と冷めた結末に上手いなあ、という印象でした。7回目の候補作だそうで、犬をだすのはずるい、と選考委員から意見があったそうですが、それでも可愛く温かい話にならなかった展開は手練れだなあ、と思いました。

「多聞」という犬が被災地の釜石から熊本まで迷い犬となり、犯罪者、農業をする夫婦、外国人、娼婦などの手を渡ってたどり着く話です。ただ、関わった人が死ぬことが多く、友人などは「不幸の犬じゃん」と話してましたが、ラストに光があって、それはそれでよかったのかもと。社会の底辺で苦しんでいる家族たちの間を渡りあるき、いっときでも幸せをもたらしたのですから。

 余談ですが、幼少期に犬を飼っていた記憶は、大人になるといいものだなあ、と最近よく思います。「ナルン」という雑種、「まさ」という柴犬を飼っていたことを、この本を読んで、懐かしく思い出しました。また、故郷の北海道浦河を捨てた男が故郷へ恩返しという馳星周の受賞自伝エッセイ(オール読物9・10月号掲載)も素晴らしく、「少年と犬」の続きで読むと、馳星周氏の別の顔をみた感じでした。

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