見出し画像

棒ノ折山 △登山の魅力△ (0026)

なんちゃって沢登り気分が楽しめる。東京・奥多摩と埼玉・奥武蔵の境目の山です。
(本記事/ 文字数:約5100字、読了:約10分)


<概要>

山岳名: 棒ノ折山 (ぼうのおれやま)
所在地: 東京都西多摩郡奥多摩町、埼玉県飯能市
「棒ノ嶺」(ぼうのみね)とも呼ばれる。 標高は約969m。
東京側の奥多摩と埼玉側の奥武蔵の両域に属し、山頂は東京都と埼玉県の県境にあたる。
東京側、埼玉側のどちらからでも最寄りのバス停から山頂まで2時間程度で登頂することができる。
関東ふれあいの道。

<棒ノ折山の魅力>

(1)ちょっとした沢登り気分が楽しめる山です。
埼玉側の白谷沢登山口からスタートしますと、白谷沢に沿って稜線へ上がっていくことになります。その途中で沢の中に入り、沢を遡上するように登山道が付けられています。沢を渡渉したり、ゴルジュ(両側を切り立った岸壁に挟まれた細い谷)を通過したり、岩場・鎖場もあります。

(2)バリエーション豊かな自然を楽しめます。
樹林帯の登山道、沢沿いの道、岩場・鎖場や展望のある山頂など様々な登山のエッセンスに恵まれています。上り下りを含めて5時間程度(登りは2時間~2時間半)であり日帰り登山に適した山です。


<登山コース>

※標準的タイムによる目安(休憩含まず)。
(1)白谷沢~滝ノ平尾根コース
さわらびの湯から出発し、白谷沢に入り、山頂から滝ノ平尾根を下って“さわらびの湯”に戻る周遊ルート。
「さわらびの湯」バス停→ 名栗湖・有間ダム→ 白谷沢登山口(30分)→ 白谷沢→ 林道合流地点(70分)→ 岩茸石(20分)→ 権次入峠(ゴンジリ峠)(30分)→ 棒ノ折山・山頂(20分)→ 岩茸石(30分)→ 滝ノ平尾根→ 「さわらびの湯」バス停(90分)
コースタイム/ 約4時間50分
標高差/ 約730m (さわらびの湯:239m、権次入峠:893m、棒ノ折山:969m)

(2)埼玉~東京・越境コース
埼玉側から登り、東京側へ越境して下山するルート。棒ノ折山の山頂までは上記(1)と同じルート。
棒ノ折山・山頂→ 奥茶屋・百軒茶屋方面→ ゴンジリ沢→ 百軒茶屋キャンプ場(90分)→ 「清東橋」バス停(10分)
※「清東橋」バス停から車道を歩いて80分ほどでJR青梅線「川井」駅に着きます。
コースタイム/ 約4時間30分(「清東橋」バス停まで)
標高差/ 約600m (さわらびの湯:239m 棒ノ折山:969m 清東橋:380m)

[登山道の特徴]

コース(1)場合、バス停から舗装道路をすこし上り、有間ダムの堰堤を渡ったさらに先に白谷沢登山口があります。
登山口から林道合流地点までの約1時間強が沢沿いの道になります。渡渉や鎖場があるのはこのルート上の一部です。
川の中に足を入れますし、岩場も滑りやすいので、防水性があり滑りにくい登山靴(トレッキングシューズ)の着用が必要です。
林道合流地点まで上がると休憩適地があります。
ゴンジリ峠から先が山頂への稜線になります。稜線は東京都と埼玉県の県境です。埼玉県側は昔ながらの雑木林、東京都側は植林された杉林とはっきりと稜線を境に分かれています。
山頂は奥武蔵側(埼玉側)は展望が開けていますが、奥多摩側(東京側)は木立で遮蔽されて眺望はありません。山頂の北側は奥武蔵・秩父の山がよく見えます。
「さわらびの湯」バス停へ戻る場合、ゴンジリ峠・岩茸石まで引き返します。岩茸石の地点が滝ノ平尾根(さわらびの湯方面)の分岐になります。 名栗温泉への分岐ルート(「名栗川橋」バス停)もありますので注意が必要です。
滝ノ平尾根は眺望のあまりない樹林帯です。林道と何度か交差して最後に橋を渡るとその先にバス停があります。バス停のそばに日帰り温泉施設「さわらびの湯」があります。
白谷沢を利用する場合、雨天後の増水、また冬季における沢沿いの道の凍結には十分ご注意ください。また登山慣れしていない場合は下りには使用しない方が安心かと思われます。
白谷沢登山口のルートは暖かい時期や夏季などは虫が多い印象です。
白谷沢の岩場・鎖場は注意が必要ですが難度は高くなく、高度感もほぼありません。

コース(2)の場合、山頂から南側へ奥多摩(奥茶屋・百軒茶屋)方面への道があります。
道は細く、最近は登山者の数も少ないため、少々、荒れているところもあります。また植林された薄暗い杉林の中の道になります。
登山道の途中にこの山の名称の由来となった“棒ノ折祠”があります(畠山重忠ゆかり)。
ゴンジリ沢を下り、ワサビ田が出てくるともうすぐに登山口になります。
もうすこし足を伸ばして山行時間を増やしたいなーという場合は、ゴンジリ峠の分岐から黒山方面へ進むと、奥多摩の高水三山へ至ります。高水三山の岩茸石山・惣岳山を通ってJR青梅線「御嶽」駅に出ることが可能です。この場合、棒ノ折山への登山時間と合わせて7時間程度になります。この間はけっこう起伏が多いですが、エスケープルートもあります。

●水場やトレイなど
いずれのコースも途中に水場はありません(ないことはないですが期待しない方がいいと思います)。
トイレは、「さわらびの湯」バス停、「清東橋」バス停にありますが、登山道の途中にはありません。

[難易度・危険箇所など]

とくに大きな難所や危険箇所などはほとんどありません。
JR青梅線「川井」駅と「清東橋」バス停の間のバスの運行本数は非常に少ないです。事前によくご確認ください。

[アクセス]

●埼玉側
西武池袋線「飯能」駅から路線バス(国際興業バス)で「さわらびの湯」バス停までおよそ40分(または「河又名栗湖入口」バス停)。
※バス路線上、途中のJR八高線「東飯能」駅にもバス停がある。
●東京側
JR青梅線「川井」駅から路線バス(西東京バス)で「清東橋」バス停までおよそ15分。※川井駅~清東橋の間のバス本数は非常に少ないです。事前要確認。

[国土地理院地図]

棒ノ嶺

[コースマップ]

西武鉄道のWebサイトでコースマップが提供されています。
奥武蔵 棒ノ嶺/西武鉄道で行くハイキングコース24選 (西武鉄道)

<こんな方にオススメ>

(1)沢登り気分を味わいたい
(2)渓流沿いの道を歩くのが好き
(3)”関東ふれあいの道”の踏破を目指している

 

<補足情報>

[売店等]

「さわらびの湯」バス停そばに売店があります。

[日帰り温泉など]

さわらびの湯 ※公式サイト
名栗温泉「大松閣」 ※公式サイト 要予約
奥多摩側の登山口近くには入浴施設などはありません。JR青梅線「河辺」駅の“梅の湯”がもっとも手近だと思われます。 
リンク先:梅の湯 ※公式サイト

[お食事処]

●奥多摩側
「ちわき」 釜めし 清東橋バス停から徒歩20分程度 ※公式サイト
「なかい」 釜めし 清東橋バス停から徒歩40分程度 ※公式サイト
●奥武蔵側
山の茶屋 ※公式サイト
名栗湖隣接のグランピング施設“ノーラ名栗”内にカフェあり。 (ノーラ名栗) ※公式サイト

[名産品]

「四里餅(しりもち)」 (ちょこたび埼玉/埼玉県物産観光協会)
飯能市 大福のような餅菓子

[付近の山]

高水三山 (奥多摩)
伊豆ヶ岳 (奥武蔵)
蕨山 (奥武蔵)
川苔山 (奥多摩)
武甲山 (奥武蔵)

[お天気情報]

伊豆ヶ岳/山の天気 (tenki.jp)

[そのほかの補足]

飯能駅・駅ビル内の「西武飯能ペペ」に地元名産品の販売コーナーがあります。
同じく駅ビル内に飯能市の観光案内所があります。

 

<私的な雑感>

棒ノ折山は、バラエティーに富んだ風景や地勢に恵まれた、1度の山行で様々な登山の要素を楽しむことができる山だなーという印象です。
ただ、その分、まだ登山慣れしていない場合は山行時間のわりにけっこう疲れることがあるかもしれません。

ほとんどの登山者は白谷沢と滝ノ平尾根を利用した“さわらびの湯”を起点・終点とした周遊コースでの山行でしょうか。そのため東京・奥多摩側への登山道には登山者の数はたいへん少なく、道が少々荒れているところもあります。利用される場合はご留意ください。

下山口に温泉(さわらびの湯)があるのもとても助かります。ただ、”さわらびの湯”には飲食施設は併設されていません(地元名産品の販売コーナーはあります)。ひとっ風呂あびて「さあ、お食事」というわけにはいかないところがネックでしょうか。とはいえ、飯能駅までのバスの最終便の時刻を気にする必要もあります。そのため、現地ではゆっくりとお酒もいただきながらのお食事ともいかないでしょうから、ガッツリ飲んで食べて、ということであれば、飯能駅まで出てからの方がいいかもしれません。飯能駅にはお馴染みのチェーン店系の居酒屋さんもいくつかあります。

個人的には白谷沢の沢沿いの道がお気に入りです。沢の中に足を踏み入れますので、ちょっとした沢登り気分を味わえます(もちろん、本当の沢登りとは異なりますが)。この点、奥多摩の御岳山ロックガーデンや山梨の西沢渓谷と近しい雰囲気ではないかと思われます。

棒ノ折山はちょっと暑い日には涼やかな沢の道でとても気持ちがよいです。渓流沿いの道を歩く山や登山道はほかにもいくつかありますが、両側にそそりだつゴルジュ帯の迫力はなかなか他では体験できないのではないでしょうか。

 

<備考>

棒ノ折山の名称の由来 (Wikipedia)

<参考リンク>

はんのう。いい塩梅 (奥むさし飯能観光協会)
国際興業バス ※公式サイト
西東京バス ※公式サイト
ハイキング(通行情報・登山届など) (飯能市)
登山道情報 (奥多摩ビジターセンター)
関東ふれあいの道 (埼玉県)
※コース1の“水源のみち”がコースに該当します。
飯能警察署 ※公式サイト
山と高原地図 「22.奥武蔵・秩父 武甲山」 (昭文社)
山と高原地図 「24.奥多摩 御岳山・大岳山」 (昭文社)


<バックナンバー>
バックナンバーはnote内マガジン「山の魅力」にまとめております。

[奥多摩]
0004/三頭山  0009/御前山  0010/雲取山  0020/浅間嶺と浅間尾根
0028/御岳山
[丹沢・箱根]
0005/大山  0030/塔ノ岳  0035/金時山
[秩父・奥武蔵]
0023/金峰山  0026/棒ノ折山  0032大菩薩嶺
[八ヶ岳]
0001/編笠山  0007/飯盛山  0014/天狗岳  0017/北八ヶ岳周遊(冬)
[北アルプス]
0012/燕岳~常念岳  0024/涸沢カール  0033/立山
[南アルプス]
0011/北岳
[関東そのほか]
0006/赤城山  0008/大楠山  0018/一ノ倉沢(冬)  0021/男体山(日光)  0025/那須岳  0031/鳴虫山  0034/戦場ヶ原
[東海]
0016/城ヶ崎海岸  0019/幕山  0027/沼津アルプス
[山梨県そのほか]
0022/三つ峠
[長野県そのほか]
0029/黒斑山
[その他の地域]
0002/雨飾山  0003/宮之浦岳  0012/大杉谷~大台ヶ原  0015/苗場山

 

<ご留意点>
(1) URLはリンク先の運営方針等によりリンク切れなどになっている場合があります。ご容赦ください。
(2) 詳細な情報等はリンク先へご確認、お問い合わせ等をお願いいたします。
(3) 各項目は本運営者の自己の裁量で掲載させていただいております。なお、リンク先およびその記載情報等について、正確性、信頼性、安全性、有用性や合法性等を保証するものではございません。また、本ページへの掲載は、運営者のリンク先の掲載情報への賛意等を意味するものではございません。ご理解ください。
(4) 本ページの掲載内容は、諸般の事情により運営者の判断で変更されることがございます。ご了承ください。
(5) サービス改善や向上などのご意見等がございましたら、お聞かせいただければ助かります。よろしくお願いいたします。
(6) 不定期更新です。 毎月一度を目安に更新を予定しております。
(7) カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
(8) 情報は掲載日時点の内容です。
(9) 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
(10) 自治体により登山届や各種装備の義務化などの条件がありますのでご留意ください。詳細は各自治体や警察等にご確認くださいますようお願いいたします。
(11) 今般の新型感染症の影響で各種施設等の利用については制限などが行われている可能性があります。ご利用の際には詳細について事前に各種施設等へご確認などをお願いいたします。

(2022/10/16 上町嵩広  改訂:2024/01/17)


この記事が参加している募集

#アウトドアをたのしむ

10,366件

#山であそぶ

1,835件