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秩父御岳山 ♣マイナー登山道を往く♣(0004)

山頂からの両神山の眺望と岩場・鎖場が魅力。木曽御嶽山の王滝口からの登拝道を開いた普寛上人の出身地が現在の秩父であり、上人が同様に開山した地元の山。
(本記事/ 文字数:約5500字、読了:約11分)


<趣意>
あまりメジャーではないマイナーな登山道。ちょっと気になってはいたもののなかなか行く機会のなかった山道を歩いてみました。

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<概要>

山岳名: 秩父御岳山 (ちちぶおんたけさん) 
所在地: 埼玉県秩父市・秩父郡小鹿野町
秩父山地(埼玉・東京・長野・山梨の県境周辺)の一座。
御嶽山にちなんで「秩父御岳山」と呼称されている。
山頂からは両神山がよく見える。標高は約1080m。

<秩父御岳山の魅力>

季節にもよりますが、比較的、人が少なくて静かな山です。
秩父の山に対する全般の個人的印象ですが、けして標高が高いわけではないのですが、見晴らしや眺望のよい山が多いなーという感想です。 秩父盆地という地形ゆえでしょうか。

秩父御岳山も、両神山や荒川の流れの景色が思い出に残りました。 両神山のノコギリのような横に広がる山容がよくわかるのが印象的でした。

秩父の山は、鄙びた山里の中ののどかな山という個人的イメージです。 山の中に山があるという奥多摩、海辺に近い突き抜けた山という丹沢とはまた違った山の雰囲気を感じます。 それぞれに特色があって東京在住者ですと日帰りでいろいろな山を楽しむことができるところが嬉しいです。

比較的に落葉広葉樹が多い森、盆地の縁を囲む山、そしてかつては養蚕が盛んであった町の雰囲気などのためでしょうか。 のどかな里の山歩きと豊かな郷土食を味わうことができる小旅行気分を楽しめる場所だなーという気がします。


<登山コース>

※歩行時間はすべて標準的タイムによる目安です。
「落合」バス停を起点に普寛神社そばの登山口から山頂を目指し、「三峰口」駅ちかくに下山するルート。

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「落合」バス停から出発です。
国道140号線(秩父往還)を秩父の奥へと先に進んでしばらくすると普寛神社があります。 普寛上人を祀った神社です。上人はこの秩父・落合が出身だったそうです。

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神社の前の道を上がり右手(東側)へ伸びる林道を進むと、すぐに左へ折れる道がありますのでそちらへ入ります(林道をまっすぐ進むと杉ノ峠に向かいます)。 車両進入防止のための柵がありますが、人間が通るには問題ありません。

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すぐに沢(王滝沢)が出てきますので沢沿いに登り上げていきます。 沢沿いの道にはロープが張ってあったり階段が設置されています。 数年前に大きな崖崩れがあったため一時期は閉鎖され、新しい登山道が構築されました。

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斜面はけっこう強めです。 細い道をずっと登り続けます。 途中には休憩に適した平地やスペースがほとんどありません。 ひたすら登り続けて1時間強(目安)、林道の合流地点までようやく登り上げます。 ここでいったん一息つけます。 左手の林道のすぐ先には「普寛トンネル」があります。

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トンネルの脇を巻くようにして御岳山への登山道が続いています。 
このときはまだ紅葉がすこし残っておりました。 雰囲気としては冬枯れが始まっており静かで少々肌寒い空気でした。

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ふたたび少々キツめの道を登っていくと、ようやく尾根が見えてきます。 杉林の斜面を登りきると尾根に出ます。 尾根からは北方面の秩父の風景が目に入ってきます。

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尾根に出て右手(東側)へ山頂に向かいます(左手(西側)も尾根が続いていますが登山道ではありません)。 木立の向こうに御岳山の山影が見えます。 この先はやせ尾根の登りが続きます。 鎖の付いた岩場が出てくると、もうすぐ山頂です。

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やがて山頂にある小さな祠が見えてきます。 
山頂にたどり着いてぐるっと見回すと、西側(山頂を登ってきた背後)に、横に広がった両神山がよく見えました。

山頂も狭く、休憩には適しておりません。 山頂の東側にすこし開けた斜面があるので休むにはそこがいいかもしれません(その斜面もけして広くはないですが)。

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下山します。
「強石」(杉ノ峠)、「猪狩山(鞍掛山)」(古池)、「三峰口駅」(贄川)に下りていけます。 このときは三峰口駅へと向かいました。 

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下り始めは、尾根が細く傾斜も少々あります。 両側がガケですのでちょっと注意して下りた方がよさそうです。 20分ほど(目安)下りていくと、斜面は緩やかになっていきます。

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猪狩山との分岐から三峰口駅へ下りていきます。 山頂近くは広葉樹の林ですが三峰口駅へ下りる道は暗めの杉林になります。 杉林が終わり、麓に近づいてくると再び広葉樹が増えてきます。

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途中で東側の展望が開けた眺望スポットがあります。 荒川の蛇行する様子がよく分かります。
そのまま広葉樹の林を抜けると、墓地が現れてその先が登山口になります。 登山口の先にはトイレがあります。

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登山口の先の集落は、かつては「贄川宿」と呼ばれた宿場町であったそうです。 江戸時代には三峰神社への参拝道として栄えていたとのことです。 道の緩やかなうねりと道沿いの家の造りが当時の雰囲気の名残を感じさせます。

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登山口から10分強歩けば三峰口駅です。 途中、野生の猿を見かけました。 荒川にかかった白川橋を渡ります。 ここではバンジージャンプを体験することができます。
三峰口駅に着きました。 ここが今回の終着点となります。

[行程表]

※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
落合バス停→ 普寛トンネル(80分)→ 山頂(30分)→ 猪狩山分岐(30分)→ 贄川登山口(70分)→ 三峰口駅(15分)
コースタイム/ 約3時間50分
標高差/ 約760m (普寛神社:404m 秩父御岳山:1080m、贄川登山口:324m)

[登山コースの補足]

道標が要所に設置されていますので迷うことはあまりないと思います。
秩父鉄道はこれまで交通系ICカードの利用はできませんでしたが、2022年3月12日から利用可能開始となっています。
登山口は、贄川(三峰口駅)、強石バス停(杉ノ峠方面)、古池バス停(猪狩山方面)、落合バス停のそれぞれそばになります。
今回のルートは冬季(12月~3月)は路面凍結などにより通行禁止とされています。
●水場やトイレなど
登山道上に水場はありません。
トイレは、落合の普寛神社そば登山口、下山した贄川の登山口にあります。

[難易度・危険箇所など]

とくに大きな難所や危険箇所はほとんどありませんが、一部(山頂域)、岩場・鎖場やヤセ尾根であったりガレ場があるので足元に注意が必要な箇所もあります。

[アクセス]

●往路
西武秩父線「西武秩父」駅から路線バス(秩父市営バス)で「落合」バス停まで約40分弱。
●帰路
贄川登山口から秩父鉄道「三峰口」駅まで徒歩15分程度。
※補足
秩父鉄道「三峰口」駅から落合バス停までのバスに乗れますが、バスの始発バス停は西武線の「西武秩父」駅になりますので、利便性を考えて西武秩父駅から乗車した方がいいかもしれません。
西武秩父線「西武秩父」駅と秩父鉄道「御花畑」駅の間は徒歩移動(約5分)です。なお一部の西武秩父線の便では西武秩父駅で秩父鉄道で乗換可能な場合があります。
《参考》
池袋駅~西武秩父駅の間は指定特急が運行されています(特急料金要)。池袋駅~西武秩父駅まで約80分。
リンク先:
特急ラビュー特設サイト (西武鉄道)

[国土地理院地図]

秩父御岳山

<こんな方にオススメ>

(1)両神山や秩父山地の展望がある山に登りたい
(2)ちょっとした岩場・鎖場を体験したい
(3)秩父山地の山岳に興味がある

 

温泉

<補足情報>

[売店等]

西武秩父駅には併設された秩父名産品等の大型のモールがあります。
リンク先:
「ちちぶみやげ市」 (祭の湯)
西武秩父駅前にはコンビニエンスストアがあります。
落合バス停の手前(約500m)にある道の駅「大滝温泉」の施設内に売店があります。

[お食事処]

珍達そば」 ※公式サイト 西武秩父駅/ラーメン
野さか」 ※公式サイト 西武秩父駅/豚丼
「高砂ホルモン御花畑」 (食べログ) 御花畑駅/ホルモン焼肉
「高砂ホルモンお花畑駅前」 (食べログ) 御花畑駅/ホルモン焼肉
「安田屋 秩父店」 (食べログ) 西武秩父駅/わらじカツ
いのしか亭」 ※公式サイト 三峰口駅/ジビエ料理

[日帰り温泉など]

道の駅 大滝温泉 ※公式サイト 落合バス停近く
祭の湯 ※公式サイト 西武秩父駅併設

[山小屋などの宿泊施設]

秩父市、秩父郡には多くのホテルや旅館等があります。
宮本家 ※公式サイト
秩父観光協会 ※公式サイト
小鹿野町観光協会 ※公式サイト

[名産品]

肉のみそ漬け(おもに豚)
しゃくしな漬
蕎麦

[付近の山]

四阿屋山
両神山
武甲山
雲取山
熊倉山
妙法ヶ岳

[お天気情報]

両神山/山の天気 (tenki.jp)

[そのほかの補足]

●秩父観光情報館
「西武秩父」駅そばにある。観光情報を提供。

 

私的雑感

<私的な雑感>

率直な感想ですが、意外に傾斜がけっこーキツいです。
標高も高くないですし、初めて登ったときは「まあ、里山のちょっと登り応えがあるくらいだろう」と甘く考えておりました。 しかし、尾根までほぼ登り一辺倒で上がらされます。 普寛トンネルの林道合流地点以外はあまり休憩適地はありません。

山頂に登れば両神山の独特の山容がきれいによく分かります。
個人的には、蛇行する荒川の流れとその西側に広がる街並みや田畑の風景が面白いなぁーと感じます。

三峰口駅から直接アクセスできるところも便利だなと感じます。 
埼玉・秩父の山は駅から直接アクセスできる山がなかなか少ないですし、バスの本数も多くはありません。 そういうわけで個人的には秩父の山はちょっと足が遠のきがちです。

秩父は山だけではなく、下山した後の観光的スポットや郷土食も様々なものがあり、東京在住の私には東京の日常を離れて小旅行気分を味わえる、とても魅力的なローカルだなぁーという印象です。

 

<山旅のお土産>

●秩父もち
大福や団子などのモチ系の和菓子が個人的には好きです。
「秩父もち」はいわゆる大福系のモチ菓子です。

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「ふわふわ」と形容されることも多いと思うのですが、個人的にはむしろ「とろんとろん」という感想でしょうか(ふわふわ感も大いにありますが)。 とにかくすごく柔らかい。 半分、「液体か?」というイメージです(ちょっと極端な言い方かもしれませんが)。
餅の中のつぶあんも甘さ控えめで餅の味と食感が損なわれないので、どちらかというと餅が主役のように思えます。

お店は明治8年創業。 本店は西武秩父駅から徒歩10分足らずの近い距離にありますが、西武秩父駅併設の土産物のモール「ちちぶみやげ市」でも販売されています。

水戸屋本店 (食べログ)

 

<備考>

普寛上人 (コトバンク)
木曽御嶽山 (Wikipedia)
●お得な切符

「秩父フリーきっぷ」 (西武鉄道)
「秩父漫遊きっぷ」 (西武鉄道)

<参考リンク先>

秩父観光なび (秩父市)
ぶらっとちちぶ (秩父観光協会)
ジオパーク秩父 ※公式サイト
秩父多摩甲斐国立公園 (環境省)
西武バス ※公式サイト
秩父鉄道 ※公式サイト
西武鉄道 ※公式サイト
山と高原地図「22. 奥武蔵・秩父 武甲山」 (昭文社)
山と高原地図「 雲取山・両神山 奥秩父」 (昭文社)
登山・登山道に関する情報 (埼玉県)
秩父警察署 ※公式サイト
小鹿野警察署 ※公式サイト


<関連記事>

秩父御岳山周辺についての上町嵩広の関連記事です。一部、外部サイトの記事もあります。

 

ご留意点

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(6) 不定期更新です。 隔月一回を目安に更新を予定しております。
(7) カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
(8) 情報は掲載日時点の内容です。
(9) 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
(10) 今般の新型感染症の影響で各種施設等の利用については制限などが行われている可能性があります。ご利用の際には詳細について事前に各種施設等へご確認などをお願いいたします。

(2022/03/24 上町嵩広  改訂:2024/01/24)

 

<バックナンバー>
バックナンバーはnote内のマガジン「マイナー登山道を往く」にまとめています。

0001 「石砂山」
0002 「三峰山(丹沢)」
0003 「最乗寺から明神ヶ岳(箱根)」
0004 「秩父御岳山」
0005 「都留アルプス」
0006 「芦生の森」
0007 「ヤビツ峠・イタツミ尾根から七沢温泉」