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うだ すいか
2020年6月20日 02:18
足音さえ心做しか重たかった。日は翳り、月に叢雲。薔薇は棘を秘めている。奇麗なものは儚くて、陰を宿している。大人びた背筋がそう語っていた。そうだ、その陰に惹かれて、馬鹿みたいに焦がれて、それが全てだと思った。全てだった。美しくなど、無くとも良かったのだ。正しく無くとも。「2人分の道が無くっても。」「それはさぞ」頼もしいこった。低い声が震えた気がして、次には水音に融けた。夏草がひたひたと凪ぐ。青緑の匂