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デンマークの教育を知る。

デンマークの社会について探究をつづけるスタッフが、教育について紹介します。

みなさんは「デンマーク」と聞いてどのようなイメージを抱くでしょうか。
福祉国家、アンデルセンの生まれた国、人魚姫像が残念な国(たしかに小さいけど…)、チューリップの国(それはオランダ)、など?

最近は「幸福度ナンバー1の国」「ヒュッゲの国」として名を聞くことも多くなりました。
また、教育に関していえば、フォルケホイスコーレ*(全寮制の成人教育機関)に留学する日本人が増えてきたことから、実体験を聞く機会もよく見られます。
*フォルケホイスコーレの日本語での紹介はこちらが詳しい。公式ウェブサイトはこちら。

誰にでも開かれる教育

デンマークの教育は、
・就学前教育(幼稚園)
・初等・中等教育(小・中学校)
・後期中等教育(高等学校)/職業教育(職業別の専門校)
・高等教育(大学)
から主に成っています。

特記すべきは、大学も含め、教育費が無料な点。
大学では、その上SUと呼ばれる就学支援金(約10万円)が支給され、博士課程は研究職と見なされるため、給与が支払われます。

デンマークは日本と同じく天然資源に乏しい国で、人を育てることが国の成長に欠かせないことを早くから認識し、投資をし、充実化を図ってきました。
教育はいつでも、どこでも、誰にでも開かれている。
人あっての国、の姿勢が見て取れます。

義務教育

デンマークの義務教育は、小学校と中学校にあたり、年齢にすると6、7歳から16歳となります。
ただ、ここでいう義務教育の意味は、学校へ行く義務ではなく、教育を受ける義務。
そのため、基準を満たしていればホームスクーリングという形でも可能です。
実際は、8割程度の生徒が公立の小・中学校(フォルケスコーレ)へ通っています。
また、近年わずかながら増えているという私立学校に通う場合でも、国から80%ほどの補助が出るため、教育費で諦めることはありません。
自身の望む教育を受ける権利がしっかりと保障されているのです。

フォルケスコーレ(公立の小・中学校)

フォルケスコーレでは「生徒が民主主義社会の一員としての役割を全うできるよう、教育すること」を目的に据えています。

学年は0~9年生の10年制。
0年生は学校への導入段階として設けられている学年で、保育士の資格をもつペタゴーが担当します。従来は選択制でしたが、2009年から義務教育に組み込まれました。
9年生修了後には10年生があり、希望すれば一年長く学習できます。
また、到達度によっては、再度同じ学年で学ぶこともあります。その判断は、本人と親と教師との話し合いで決定。実際、クラスに年齢のちがう子がいるのはごく普通で、本人も負い目を感じることはありません。

▶︎ 少人数教育
法律では「1クラスは28人以下であること」とされていますが、実際は20人ほどの少人数教育です。
これは、教育が画一的な人間をつくるものではなく、生徒それぞれの個性を引き出すためのもの、と考えられているから。
一貫して子どもの成長に携われることから、クラス替えがなく、担任の教師も変わらない、という点にもあらわれています。(希望すれば、クラスの変更は可能)

▶︎ 科目
科目は、国語にあたるデンマーク語(全学年)、英語(1~9年生)、宗教(全学年)、歴史(3~9年生)、社会(8、9年生)、数学(全学年)、自然科学(1~6年生)、地理学(7~9年生)、生物学(7~9年生)、物理学/化学(7~9年生)、体育(全学年)、音楽(1~6年生)、ビジュアルアーツ(1~5年生)、デザイン/木工細工・金属細工/家庭科から1科目以上(4~7年生)となっています。
5年生からはドイツ語かフランス語のどちらかを学び、交通安全教育、健康/性/家庭教育、職業教育も教えられます。

▶︎ グループワーク
フォルケスコーレのみならず、デンマークの教育を語るときに欠かせないのが「グループワーク」。
ディベートやディスカッション、プロジェクトワークなどの「考えて」「話し合って」「実際に動いて」「一緒に学ぶ」といった授業がよく行われます。
(余談ですが、私がデンマーク留学時に受けた授業でも、最終試験以外はすべてグループ単位でした。たとえば、指示された資料を読む際も、グループ内でまわし読みし、互いの解釈を共有し、全員の前で要約をプレゼンテーションする、といった具合です。レポートについても最終レポート以外は常に4人ほどで共作していました。)

▶︎ 卒業試験
デンマークでは入試がなく、卒業試験という形で実施されます。
義務教育の場合は9年生が受け、筆記試験と口頭試験で構成されています。
ちなみに、これに限らずデンマークにおける試験は、筆記と口頭の両方で行われます。口頭試験の試験官には、担当の教師に加え、他校から派遣された教師(センサーと呼ばれる)があたり、公平性を保つようにしています。
評価は合格か不合格かではなく、7段階のスコアで示され、高等教育に進む際に考慮されます。

▶︎ その他
そのほか、日本とのちがいを考慮しながら、フォルケスコーレの特徴を挙げてみます。
⚪︎制服はない、校則もない
 「髪を染めてはいけない」「ピアスをしてはいけない」といった規則はありません
⚪︎机の配置は”コ”の字型が多い
 お互いの顔を見合え、対話、参画のしやすい空間になっています。教師にとっても動き回り、個々の状況を把握しやすい環境です
⚪︎給食はない
 給食や購買はなく、各自ランチボックスを持参します。サンドイッチ、野菜スティック、果物などシンプルなものが多いです
⚪︎飲食の自由
 授業中の水分補給はもちろん、軽食程度なら授業中でもとれます。あえてその時間を確保する先生もいます
⚪︎掃除はしない
 掃除は専門のスタッフが行うため、生徒や教師は行いません
⚪︎部活動はない
 部活動はなく、興味があれば地域のクラブに参加します(そのため、教師は教科指導に注力できます)
⚪︎行事が少ない
 学校行事は修学旅行くらいで、運動会、文化祭、合唱コンクールなどはありません
⚪︎パソコンの使用は当たり前
 校内には無線のインターネット回線が整備され、特に高学年はパソコンを使って授業を受けることが多いです(デンマークは国としてもITのインフラが発達しています)

そして、101カレッジ。

OECDの調査によると、GDPに占める教育への公的支出の割合は、デンマークは6.3%、OECD諸国の平均は4.4%、日本はデンマークの半分程度の3.2%となっています(2014年)。

教育への投資は将来への投資であることは、言うまでもありません。
教育は社会をつくる、といっても過言ではありません。
そして、私たちの教育の場は学校だけではありません。

101カレッジの第2、3フェーズでは、探究型の学びも行っていく予定です。
自身の「なぜ」からはじまり、「知りたい」を求め、「おもしろい」を感じる学び。
その経験から人生が大きく変わったひとりとして、自分発の学びが人生を彩る、と断言できます。

一緒に見つけ、拓いていきましょう。

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