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made in ハーフ|国境なきビジネス【前編】

今年の初夏ぐらいに中国では最低賃金が上昇し、北京や上海などの主要都市の最低賃金の時給は約400円までに。中国政府は近々、中国全土の最低賃金を主要都市と同じくらいまで引き上げる見込みだとして、弊社の中国パートナー企業達はため息を漏らすこの頃。

中国のアパレル生産業の裏側には多くの韓国人オーナー達が存在しているのはご存知だろうか?生産や検品など中国でそこそこクオリティーの高い品質を手掛けている多くの工場のオーナーは韓国人や在中韓国人だったりしていて、彼らは先代からの家業だったりする。

中国生産で韓国で商売をされているメーカーも数多い。工賃や人件費の安さが魅力で中国進出をしたはずが、韓・中関係の悪化などで物流が止まることはしばしば。日本に住みながら韓・中と仕事を始めて15年以上になるが、韓国や中国はいろんな意味ですごい。アグレッシブさで言えば、特に中国は韓国の数倍すごいと感じる。政治的理由で翌日には韓国行きの通関を一斉に止めたり、急に通達なく通関を厳しく引き上げたり現地では日常のように定期的に起こる。そして、しばらくして緩和すると、以前と同じく通関させてくれる

「通関させてくれる」この表現が正しい気がする。日本だと考えられないが、韓・中の対立問題はものすごいスピードで物流に影響するのだ。だが、そこには現地人の私情は一切含まれていない。

日本のニュースでも流れていた韓国内での日本製品を買わない運動とかって、現地の大衆の人々の私情はほとんど含まれていない。「日本製品は買いません!」とインタビューに応じている人はデモなどに参加しているような極わずかな少数の人であって実際は全くそんなことはない。私は韓国で生まれ、長年 韓国にも事業の拠点を置いているが、一度もリアル反日の韓国人に出会ったことがない。

だけど、韓国の多くの店から日本製品が棚から下されたのは事実だ。その多くは商品供給元からの指示や通達だったりする。販売者達は商品供給元からの知らせを無視することはなかなか出来ない。商品供給元もそうせざるを得ない。これは、連盟や組合の顔色伺いに近い。下手をすると「自国愛のない企業」として仲間外れをされてしまうため、目立った行動は避けたいだけなのだ。少数の消費者も自国愛のない人として周りから思われるのが嫌なだけで、決して日本が嫌いとアピールしたいわけではない。

中国から韓国への物流が止まった際もここには両国の取引先同士の私情などは1ミリも含まれていない。当たり前の話でビジネスだからだ。日・中・韓すべての政治的問題は実際に関わったり利用する人々の感情は一切関係なく、上の上の上にいる偉い人と言われている人達のパワハラに過ぎない。

なので日本製品を棚から下ろした人々はただただ偉い人達のご機嫌斜めさが落ち着くのを待つしかなく、政治的理由が緩和され何かが再開された時、最も関わっている人達は素直に「ようやく再開させてくれてありがとう!」と思う。クソ!ボケ!バカヤロー!再開おせーわ!なんて現状を吠えても何も変わらない現実を知っているからだ。

中国進出したアパレル業界の韓国人達は、オラオラな中国でも昔は人件費の安さがメリットだったけれど、このスピードでの賃金上昇だと、将来的に中国生産は厳しいと口を揃えて言う。

アグレッシブな企業だと早速ベトナムやフィリピンなどに進出し、従来通りの生産コストを目指す企業も目立っているここ数年だが、新しい地で、その国の特徴を掴み現地人にスキルを教えて行くには設備投資の他に時間という投資も必要だったりするから私ならやる気が失せるが、また一からやり直しでも彼らはやる。物は言いようで、新たな地での開拓は早い者勝ちだったりするから、そこに新しい可能性とチャンスを見ているのかも知れない。

特に長年の家業だった生産業達は自分達の得意な分野から離脱することはあまりしない傾向が強い。ネットで安く物が買える時代になった背景の一つには、このような生産業達の土を這うように延びて前進していく生命力のおかげだったりもすると俯瞰するこの頃だが、私は生産国や生産単価に執着するのはもはや時代遅れだと思っている。

made in ハーフ|国境なきビジネス【後編】に続く...



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