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「このキャラは意外にも○○だ」というエピソードは、複数人分を並行して描く

龍「だから……あれよ!あなたが……あなただけが悪いわけじゃ……」

アニメ「八月のシンデレラナイン」(第5話)


◆概要

【「このキャラは意外にも○○だ」というエピソードは、複数人分を並行して描く】は、創作の技術の1つである。


複数人分を並行することで、各キャラの相違を際立たせることができる。また、1人ずつバラバラに描くのとは違う面白さが生まれることもある。


◆事例研究

◇事例:アニメ「八月のシンデレラナイン」(第5話)

▶1

本作は、とある高校の女子生徒たちが「女子硬式野球部」を立ち上げ、部員を集めたり、練習場所を探したり、特訓したり……様々な苦労を乗り越えて、やがて全国大会に出場するに至るという物語である。

主人公は。彼女は幼い頃から野球に親しんできた。中学時代には全国レベルの選手として活躍した経験を持つ。また、持ち前の明るさでチームを引っ張るムードメーカーでもある。

一方、というキャラ。彼女も野球経験者でその実力は翼に勝るとも劣らない。だが性格は真逆。かなりストイックで、自分にも他人にも厳しいのだ。


……とまぁ以上が基本的な設定である。

しかし、翼はいつでも明るいわけではないし、龍だって常時ぴりぴりしているということはない。例えば、第5話を見てみよう。


▶2

第5話、翼たちは初めての練習試合で大敗を喫した。無理もない。負けて当然だ。だって、翼と龍以外の部員はほとんど全員がど素人なのだから。


さてこんな時、翼はどうするだろうか?

彼女の性格から推測するに、積極的に皆のメンタルをケアしたり、「今日からまた頑張ろうね!」と鼓舞したりしそうなものだ。ところが意外や意外。彼女は1人で打撃練習を始めてしまった。延々と、黙々と、バットを振る。

……現実逃避である。そう、翼は怖いのだ。惨敗したことで、皆が野球を嫌いになってしまったらどうしよう!皆が退部すると言ったらどうしよう!現実を知るのが怖い!だから皆に声をかけられない。


一方その頃、

意外にも……彼女は、試合でミスしたことを気に病み落ち込んでいた茜(部員の1人)に声をかけていた。「だから……あれよ!あなたが……あなただけが悪いわけじゃ……」と不器用ながらも必死に励ます。その結果、茜は笑顔を取り戻した。


▶3

つまり第5話では、

・翼:天真爛漫でいつも陽気だが、じつは繊細なところもある

・龍:いつもストイックで他の部員から恐れられているが、じつは面倒見がいい

……という2人の意外な部分が並行して描かれているのだ。


そして、この<並行して>というのが重要だ。

第1に、並行して描かれているからこそ2人の性格の違いが顕著になる。

第2に、私たち鑑賞者は「なるほど!この凸凹コンビが支え合ってチームを引っ張っていくわけだな!」と感じ、「この先が楽しみだ!」とワクワクしてくるのである。

もしも別々に描かれていたらこうはいかないだろう。


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