「『帰宅すると、母が男といた』というシーンを2度繰り返す→1度目は浮気→2度目も浮気に違いないと思いきや、そうではなかった」とミスリードすることで、読者・鑑賞者に驚いてもらう ~映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」の場合
◆概要
【「『帰宅すると、母が男といた』というシーンを2度繰り返す→1度目は浮気→2度目も浮気に違いないと思いきや、そうではなかった」とミスリードすることで、読者・鑑賞者に驚いてもらう】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。
◆事例研究
◇事例:映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
▶1
本作の主人公は、フランク(16歳の少年)。
フランクは幸福な家庭に生まれ育った。
・Step1:ところが父の事業の失敗をきっかけに、すべてが暗転。特に、母の言動は大きく変わってしまった。
そんなある日のことだ。
・Step2:フランクが学校から帰ると、自宅には母、そしてバーンズ(父の知人)がいた。2人はなぜか寝室にこもっていた様子。しかも落ち着きがない。フランクの顔を見て明らかに動揺している。……浮気だ!浮気していたのだ!
・Step3:フランクはショックを受ける。
後日、またもやフランクが学校から帰宅した時のことだ。
・Step4:自宅のソファに、男物のコートと帽子が置かれていた。フランクは目を疑う。そっ、そんな……。
・Step5:間もなく、寝室から見知らぬ男が出てきた。また浮気だ!フランクは叫んだ「出てけ!誰だか知らないけれど今度来たら……」。
だが、何だか様子がおかしい。
・Step6:寝室から出てきた男は冷静な口調で「フランク、落ち着くんだ。私はカズナーという者だ。寝室に来てくれ。皆がきみを待っている」。
・Step7:寝室には、両親と母方の祖母がいた。重苦しい雰囲気……。そう、両親は離婚することになったのだ。フランクの知らぬところで離婚話が進んでいたらしい。カズナーは離婚を仲介するために雇われた弁護士だった。
・Step8:フランクは呆然とする。
▶2
ご注目いただきたいのは、Step4-5である。
学校から帰ると男の気配……。
Step2とそっくりのシチュエーションだ。フランクのみならず、多くの鑑賞者も「嗚呼、また浮気か」と直感し、「フランクがかわいそうすぎるよ!」と心を痛めたに違いない。
ところがすぐに、それは誤解であり、じつは両親は離婚することになったのだと明かされる。
「えっ、離婚!?」「事態はそこまで進んでいたのか!」と驚いた鑑賞者は少なくないだろう。何しろ直前まで「また浮気か」と思い込んでいたのだ。離婚だなんて不意打ちだ。そりゃ驚くに決まっている。もちろんこれは意図的なミスリードであり、私たち鑑賞者を驚かせるために仕組まれたものだ。
つまり、【「『帰宅すると、母が男といた』というシーンを2度繰り返す→1度目は浮気→2度目も浮気に違いないと思いきや、そうではなかった」とミスリードすることで、読者・鑑賞者に驚いてもらう】というテクニックである。
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