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「敵が毒を盛ったことに気づいておらず、毒入り果物を食べそうになるキャラA。一方、読者・鑑賞者は毒の存在を知っている」という情報差のある状況によって、「うぉー!それを食べちゃダメー!」といったドキドキを作り出し、物語に引き込む ~映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の場合

サラー「(すんでのところで毒の存在に気づいて)毒入りだ!」

映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」


◆概要

【「敵が毒を盛ったことに気づいておらず、毒入り果物を食べそうになるキャラA。一方、読者・鑑賞者は毒の存在を知っている」という情報差のある状況によって、「うぉー!それを食べちゃダメー!」といったドキドキを作り出し、物語に引き込む】は「読者・鑑賞者の心を掴んで離さない語り口」のアイデア。


◆事例研究

◇事例:映画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」

▶1

本作の主人公は、インディ(中年男性)。

彼は著名な考古学者で、かつ冒険家でもある。


第2次世界大戦を間近に控えたある日のことだ。

・Step1:インディは米軍から依頼を受けた。曰く「神の力が宿るとされる伝説の遺物『聖櫃』を、ナチスよりも先に手に入れてほしい」。

・Step2:かくしてインディはエジプトへ。そして、友人のサラーの協力を得て聖櫃を探し始めた。


しばらく後、怪しい男がサラーの家に侵入した

・Step3:男はキッチンで、ナツメヤシ(イチゴくらいの大きさの果物)が載った皿を発見。毒を振りかけると、そっと立ち去った。……無論、ナチスの手先である。ライバルたるインディを暗殺してやろうというわけだ。

・Step4:間もなく、リビングのテーブルに皿が並ぶ。

・Step5まさか毒入りだなんて知らぬインディは、サラーと議論しながらナツメヤシを1つ手に取った。

・Step6:彼はナツメヤシを手の中でもてあそびながら、サラーと言葉を交わす。


やがて話がひと段落したところで、

・Step7:インディはナツメヤシを空中に放った。そしてパクッと食べようとするが……口に入る直前、サラーが腕を伸ばしそれを妨害した。

・Step8:見ると、床に猿の死体が転がっている。ナツメヤシをつまみ食いして死んだに違いない。サラーは死体を見た瞬間に危険を察知、インディが食べるのを慌てて阻止したというわけだ。嗚呼、危機一髪!


▶2

ご注目いただきたいのは、Step3である。

私たち鑑賞者はこのシーンを通じて、インディたちに危険が迫っていることを知る

ゆえに、何も知らずにナツメヤシを手に取ったり、もてあそんだりするインディを見て「うぉー!それは食べちゃダメだよ!」とドキドキするのだ。

また、彼がナツメヤシを宙に放った時には「インディは主人公だから、さすがにこんなところで死ぬことはないだろうけれど……えっ?ここからどうやって助かるんだ!?」と画面に釘づけになった人も少なくないと思う。

いずれにせよ、ググっと物語に引きつけられる……!


つまり、【「敵が毒を盛ったことに気づいておらず、毒入り果物を食べそうになるキャラA。一方、読者・鑑賞者は毒の存在を知っている」という情報差のある状況によって、「うぉー!それを食べちゃダメー!」といったドキドキを作り出し、物語に引き込む】というテクニックが使われているわけだ。


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