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顔の無い僕と君の悲しいお話

もしも大好きな君に出会えたら、一緒のおうちに住んでみたいな。
夜はゲームしたりしりとりしたり、
体を洗ってあげたり、名前も無い変な踊りをしたり、
二人無言で床に転がったり、
枕を投げ合ったり、たくさん褒めて撫でたりしたい。
いっぱい遊ぼうね。


朝はおはようって出会ってハグをして、別れて戦場へ行って、
死戦をかいくぐりながらたまに遺書みたいなお便りを送ったりして、
やっと再会できた時には、手を取り合って確かめて、
ささやかなパーティーとして、ロウソク灯して食事を分けて、
安らかな休息をお祈りしよう。


休みの日は散歩や遠足に出かけて、
山と川と草原と海と街を走り回ろう。
木陰でタコさんウインナーと卵焼きとおにぎりを食べて、
それから花や鳥や虫の観察をしようね。
君が虫を嫌がって逃げるのを笑って眺めたい。


心の狭い私は、時には君のこと読めなくて怖くなって、
怯えて怒ってしまうんだ。
嫌な言葉で困らせたなら、ごめんなさいも伝えたいから、
離れても耳だけは少し貸してね。
君の形が分からなくなっても、
それでも好きだってことは分かりたいの。

君の言葉もたくさん受け取りたいんだ。
いっぱい交換したいんだ。
君のエゴも絶望も触りたい。
そうして生きている君の肉体が動くのを、
眠りにつくまでただ眺めているね。
君がここに居ることは、何よりも強い喜びなの。

名前の無い
顔の無い
ここに居ない君と
どこへも行けない僕の
存在できない物語をここに

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