マガジンのカバー画像

百卑呂シ言行録

306
日常を切り出して再構築したもの。
運営しているクリエイター

#日記

土手道、教師、疾走(2024/05/18)

 土手道を歩いて眼科へ行った。本当は先週行くはずだったけれど、体調を崩して行けなかった。  今回は娘と二人で歩いた。学校の検査で随分視力が落ちたので、新しい眼鏡の処方箋をもらうのである。  眼科まで歩くと三十分かかる。自転車で行くとか云い出すかと思ったが、別段反発せずについて来た。自転車は、屋根のない駐車スペースにカバーを掛けて置いているものだから、一度出すと仕舞うのが面倒でいけない。  土手道を歩きながら「昔、金八先生がこういう道を歩いてたんだよ」と教えてやった。 「何そ

神と婆さん(2024/04/20)

 土手道を歩いて眼科へ行った。  今日は土手に座って弁当を食っているおじさんがあった。先日何もせずに川を眺めていたのと同じ人のようだった。ことによると、この川の神なのかも知れない。そう思ったら急にそんなふうに見えてきた。  眼科は、今日は随分進みが遅かった。  待ち時間はnoteの執筆に充てるので、自分は一向苦にならないけれど、隣に座った婆さんはどうやらじりじりしている様子である。  じきに、車椅子に乗った別の婆さんが名前を呼ばれた。車椅子の婆さんは何だかもぞもぞしたと思っ

椅子と歴史(2023/12/02)

 朝食後に妻子が出かけたから、洗濯物を干して、うさぎが足元に寄ってくるのを撫でていたら11時になった。今日も持ち帰った仕事をやるつもりでいたけれど、何だかやる気が薄れてしまった。  全体、副業はともかく、本業を持ち帰ってやったって何の手当もつかないのだから、いかにもバカバカしい。会社でやり切れないほどの仕事はそもそもできないのである。  と云ってやらないわけにいかないから、最低限のことだけやって終わりにした。 ※  先日イゴールさんが退職した。  地元へ帰るところを見送っ

箸と嫌がらせ(2023/11/26)

 義父にショッピングセンターのフードコートで昼ごはんをご馳走になった。  ラーメンをそう云って待っていると、ベビーカーを押す夫婦が隣に座り、奥さんがビビンパを食べ始めた。箸の持ち方が少しおかしかった。旦那は何も食べずにベビーカーをゆっくり揺すっている。 ※  昔、職場のメンバーで食事をした際、加澤が上司から「箸の持ち方がおかしい。全体、どういう教育を受けてきたんだ? 正しい持ち方は薬指と(以下略)」と随分ネチネチやられていた。あれでは何を食っても一向に美味くなかったろう。

バター、胡散くささ、別れ(2023/11/22)

 昨日トミーが、カントリーマアムの『じわるバター』が美味いと力説してきた。  その力説の仕方が、「じわるバター、美味いんですよ。でもきっと、身体に悪い美味さなんですよ」というので、褒めているのだか貶しているのだか判然としない。  元来が胡散くさい男なのに、云っていることが判然としないのだからますます胡散くさい。あんまり胡散くさいものだから、「身体に悪い」の部分しか頭に残らない。  だからきっと食べずにおこうと思ったけれど、今日、「これ、食べますか?」と『じわるバター』を持って

雨と憤怒(2023/11/18)

 家で仕事をしていて、気付いたら雨が降り始めていた。見ると洗濯物が庭とベランダに干したままだったから、急いで取り込んだ。うさぎのケージが洗って干してあったのも組み立てて入れ、うさぎ自身もベランダから部屋に入れた。  全部片付いたところへ妻から、「雨だから洗濯物入れといて」と電話が入った。  洗濯物を家の中に干して仕事に戻ったら、何だか随分日が照ってきた。  雨雲レーダーを確認すると今日はもう雨雲は来ないらしい。それでまた洗濯物を外に出した。急いで取り込んだのが損をしたようにも

異世界、変な偶然(2023/11/16)

 ある事情で今日の予定がぽっかり空いたから、少し遠目の店回りをすることにした。  店回りは、得意先の店舗スタッフに商品の説明をしたり現場の情報をもらったりするのだけれど、相手の反応はまちまちで、目を輝かせながら色々訊いてくる人もあれば、興味はないけどメーカーが来たからと渋々対応してくる人もある。今日行った店はみんな前者で、気分が良かったからいつもより多めに回っておいた。  夕方、会社へ戻るのに高速道路を走っていて、どうもおかしいようだと気がついた。  もう随分走っているのに

本、BGM、頭蓋骨(2023/11/05)

 司馬遼太郎の『城塞』を読みたくなって、BOOK OFFの100円コーナーへ探しに行った。  以前、山岡荘八の『徳川家康』全26巻をBOOK OFFの100円コーナーで揃えて読んだことがある。あれに比べたら『城塞』の上中下巻ぐらいは余裕だろうと思っていたけれど、行ってみたら1冊もなかった。  状態が良い方の棚にはあったからそっちを買おうとしたら、なんと500円もする。全巻揃えたら1,500円だ。売れる本ほど高値になるのはしようがないが、中古の文庫本にそこまで出すのは何だか面白

時代、修理、バッテリー(2023/11/03)

 娘のシャープペンシルが壊れて芯が出なくなったと云うから見てやった。数年前のホワイトデーに自分が買ってやったものだ。  自分も小学生の頃にシャープペンシルが壊れて、父に直してもらったことがあり、さすがはお父さん、と随分感心したのを覚えている。  今思えば、壊れたといっても折れた芯が口金に詰まっただけのことだったろう。それなら針金を差し込んで掃除してやればすぐに直るのだから、何も感心するほどのことではない。  娘のシャーペンもそのつもりでいたのだけれど、実際に分解してみると

指摘と譲歩(2023/11/02)

「百さん、すみません」と、経理のキャサリンさんが席に来たから少しうんざりした。  この人はフグ田さんの部下である。社内でフグ田さんとは割と良好な関係を保てている――と思う――が、この人とはどうも調子が合わない。  何しろ相手の話を聞かない。話しながら相手を指差す癖もある。恐らく自分と同年代だけれど、よく今までやってこれたものだと感心する。 「百さん、すみません、この◯◯の請求書はインボイス対応のものを出してもらわないと困るんです」  ◯◯は、あるウェブサービスの名称だ。 「

巡り合わせ(2023/10/29)

 日曜だけれど出社して、トミーと車1台で外出した。  用件は特に問題なく片付いて、ホッとしながら職場に戻る途中、トミーがコンビニに寄りたいと云い出した。食事もせずに15時すぎまでいたものだから腹が減ったらしい。  見るとちょうど近くにセブンイレブンがあったから、そこへ寄ることにした。  自分は別段空腹ではなかったけれど、せっかく来たからブラックサンダーでも買うつもりで一緒に入った。  いつも買うひとくちサイズが、ちょうどラスト1個だった。ひとくちサイズはチョコ感200%超え

暗闇、足音(2023/10/27)

 定時を回った後、仕事について思う所あって少々凹んでいると、トミーが「どうしたんですか」と言ってきた。 「うん、凹んでいるのだよ」と言ったら、「大丈夫ですよ」と返ってきた。凹んでいる理由も聞かずにそう云われたって説得力がない。 ※  ひとしきり話して意見を聞いたらいくらか気分が快復したから、帰ることにした。  トミーは片付けたい仕事があるのでもう少し残業していくと云う。 「それじゃぁ、先に帰るよ」と事務所を出たら、誰もいない上階から足音が聞こえた。通常上階にいるのは上の人

鳩、ぬるい蕎麦(2023/10/17)

 目覚めたら、いつもの起床時間を50分も過ぎていたから驚いた。一瞬の二度寝のつもりだったのに、こんなに時間が経過しているようではかなわない。水筒に珈琲だけ準備して、車の中でパンを噛りながら出社した。  今日も遠出の予定だけれど、その前にさっと片付けたい用件があって、ちょうど終えたところへイゴールさんが出てきた。そうして、「百さん、今日は◯◯へ行くのだろう? 一緒に行こう」と言った。  近頃のイゴールさんは、一緒に出かけると車内で上の人をけちょんけちょんに貶す。聞いていたら

公園(2023/10/15)

 娘の友達が二人で遊びに来た。家で遊ばせてほしいと云う。どうぞと上がらせて、妻は近くのスーパーへおやつを買いに行った。  子供らは最初は庭でボール遊びをしていたけれど、じきに室内で遊びだした。自分は2階で読書をしながら、子供らの声を聞くともなく聞いていた。  一人が持って来たゲーム機を取り出して遊び始め、もう一人がそれに加わった様子だが、娘の声だけ聞こえてこない。そっと様子を覗いたら、二人の傍らで紙に絵を描いている。ゲーム機を持たせていないものだからついて行けないのだろうと思