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恋愛経験のない母のもとに生まれて

私の母は、父とお見合いで出会った。
母はそれまで恋愛したことがなかったそうだ。
恋愛したことがない母に
恋愛の話をした私は愚かだったというほかない。

母に恋愛の話などしなければ
違った人生だったかもと思うこともないわけじゃない。

母は恋愛したこともないので
失恋したこともないと言っていた。

そんな母に失恋がつらいということがわからない。

中学の頃、誰か私に教えてほしかった。
恋愛経験のない人に恋愛の相談はするなということ。

私は中学の時、同級生の男子にこくられて
それまで彼のことは別に意識してたわけじゃなかったので
先輩から言われて驚いた というのが真実だった。

で 先輩は
好きな人がいるの?と聞いてきたが
特別好きな人がいるというわけでもなく
ちっちゃい片思いをしていたけど
両想いになる見込みはなかった。

先輩は好きな人がいないんだったら
あいつと付き合ってみたら?と助言した。

中学生の男女の付き合いなんて
一緒に帰ったり、交換日記したり
そんな他愛のないことだったけど

特別何にも意識してない男子が
私を好きだというのをきいて
世界が変わった。

私も少女漫画のヒロインに
恋愛小説のヒロインになった気分だった。

ある日、彼が映画に行こうといった。
そして 母にボーイフレンドと映画にいくと伝えた。
母はけげんな顔をした。
何を言っていいかわからないといった感じだった。

それから、母は私の日記やら机の中やら
あさるようになった。
本人はわからないつもりでも
私は察知していた。

母は母なりに心配していたのだろうけど
母が心配するようなことは
中学生の私たちには縁遠いものであったので
母の行動は、正直ウザかった。

なので、机に鍵をかけた。
鍵はいつも持ち歩いたので
彼女が私の机の中を見ることは皆無だった。

恋愛でどんなにつらいことがあっても
嬉しいことがあっても
母には話さなかった。
話しても理解できなかっただろうであるから
それは正しかった。

でも 恋愛してからの母は 私の敵になった。
母は恋愛が理解できないから
私の行動も志向も理解できないのだ。

ドラマで、お母さん役の人が
何か困っていたらお母さんにいうのよ。
おかあさんはあなたの味方だからって
いうセリフがあるが

うちの母は、絶対味方にはならない。
それは理解していた。

だからもうちょっとうまくやればよかったのだ。
私は本当に後悔した。

それが一番顕著に表れたのは
結婚したいと心から思える人に出会った頃だった。

彼は山陰の神社の長男でゆくゆくは神社を継がなければならない身の上で

勿論、私もその気であったので

母に彼のことを伝えたところ

激怒激怒 大反対。
学生の頃2年東京で半同棲で過ごし
彼が地元に戻ったので
2年3ヶ月、遠距離恋愛になった。

その2年3か月の間、母はずっと反対していた。

彼から電話がかかってくれば
反対!

私が彼に会いに行けば
反対!!

私が自分のそばから離れていくのが反対!

私は母のものじゃないのに
母とは娘の幸せを喜んでもらうものじゃないの?

私はその母の反対の威力に負けて
ついに彼に別れを切り出してしまった。

ああ 勿論、母の反対だけじゃなく
他にもいろいろ理由はあったけど

母が猛反対しておらず
もしかして、賛成して味方になってくれたり
電話でも快く取り次いでくれたり
彼に会いにいくときに
何かお土産物をもたせてくれたりしたら

私は多分彼と別れようなんて思わなかっただろうと
時々思うことがある。

仕方ない。
縁がなかったのだと何度も何度も泣いた。

彼と別れて、縁あって結婚したが
縁なくて離婚してしまった。

結婚した男性のことはすっかり忘れてしまったが
遠距離した彼のことは今でもよく思い出す。

彼が継いだ神社は有名な名前なので
Instagramでフォローしてるから
時々見るのだけど

御朱印が近頃流行っているせいで
彼の神社の御朱印を拝むことがあり

最近、彼が御朱印の文字を書いていることがわかった。
時が経っても、筆跡はあまり変わらない。
彼に会えなくなって、もう何十年とたったけど
Instagramを通して
彼の筆跡を見ることができるなんて。

縁なくて、別れたけど
別に母を恨んではいない。

あの頃の純粋に恋愛していた私を
母はすっかり忘れているし
そんなことがあったことも覚えていないだろうが。

時は戻せない。
私は離婚して、東京でベリーダンサーとなったり
哲学と思考の合うつれあいと一緒に住んだり

時々、実家の母に会いに行ったり。

こっちの人生のほうが性に合っているんだろう。
実は私は性格がきつくて、エネルギーも強くて
第六感も強くて

そんな自分を愛せて、今は幸せなんだもの。

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