『昆布を用いた正月飾りの全国調査』報告会
2024年5月24日、札幌市内の書店で「昆布を用いた正月飾りの全国調査」の報告会が開催されました。
報告者は、元利尻町立博物館の学芸員・西谷栄治さんと北海道武蔵女子短期大学の齋藤貴之・准教授。
西谷さんについては、フェリー会社時代、お名前は、よく存じ上げていましたが、直接、お会いしたのは、今回が初めて。
また、齋藤准教授には、初めてお会いしましたが、私の義父(明治の文豪・幸田露伴の研究者)が、晩年、同大学で教えていたことがあり、お二人にご縁を感じ報告会に出席させていただくことにしました。
西谷さんからは、九州北部西海道を調査され、同地域では、「お正月飾り」や「鏡餅」、「棒掛け」「お手掛け」などに昆布が使用されていることが報告されました。北海道とは、全く異なる様式です。
昆布は、北海道でも九州でも“縁起物“とされています。
昆布は、「よろこんぶ」の語呂合わせから「喜ぶ」「養老昆布(よろこぶ)」ことから、お祝いの意味や不老長寿の願いが込められています。
また、昆布は、「よろこんぶ」として結納や結婚式などおめでたい席に欠かすことができないものとされ、鎌倉・室町時代から今日まで続く“縁起物“なのです。
歳神様
九州などでは、「歳神様」を迎える風習があるそうです。
北海道では、聞いたことがありません。
「歳神様」は、お正月(元旦)に家々に新年の幸せをもたらしてくれる神様で、人々は、たくさんの幸せを授かるために「歳神様」をお迎えしてお祝いするために前述した「お飾り」などに昆布を使用する風習が生まれたとのこと。
「歳神様」をお迎えするのが正月ということなのです。
齋藤准教授からは、特に兵庫県における昆布の食以外の利用について詳しい報告がありました。
昆布の生産と消費(北海道は、全国で41位と低い)や昆布ロードの歴史と昆布の食文化の広がりについてお話があり、とても興味深いもので、兵庫県以外でも地域によって正月飾りの昆布利用が様々な方法があることがわかりました。
個人的見解ですが、昆布は、北海道で〆縄に使用されることはあっても「鏡餅」の上に載せされることはないと思います。
2013年、「和食」が、「世界無形文化遺産」に登録され、和食には欠かせない“ダシ“としての昆布が注目されると“食べる文化“は、広く内外に知られるようになりましたが、“飾る文化“は、あまり知られていないのが現状です。
鳥取の小豆雑煮
お正月の風習ですが、私の高祖父は、約100年前、鳥取県より北海道へ移住してきました。
同じ頃、利尻島にも多くの鳥取県人(因幡衆と呼ばれた)が移住し、お正月の風習も島に持ち込まれたといいます(麒麟獅子舞は現在も継承されている)。
その風習とは、“お正月にお雑煮として“小豆雑煮(ぜんざい)"を食べるというもの。
島では、現在でも、その風習が残っているかは、未確認ですが、鳥取県では、現在でも、その風習が行われていることをネットで確認できました。
北海道民からすると、とても不思議なお正月の風習です。
“鳥取系“の我が家(鳥取・鹿野出身の因幡衆)では、残念ながら、その風習は継承されていません。
今後、個人的に昆布を飾る文化について注目していきたいと思います。
参考・引用文献
・レジメ 『九州北部西海道の昆布飾文化』(個立利尻Dしま博物館 西谷栄治)
・資料 『兵庫県の昆布の食以外の利用にみる地域性』(北海道武蔵女子短期大学 齋藤貴之)