見出し画像

なぜ「全部」出来ると言いたがるのか~ニーズに向き合わない専門家~

メンタルヘルスのサービスには様々な問題や改善すべき点があると私は考えております。
その考察の助けになるようにと作成した図が上記のものです。
一般的なサービスは利用者の状況やニーズに基づいて細やかに分けられて、ある種の分業が成立しますから、それぞれの分野はより質の高いもの、効果的なものになっていきます。
そして他分野で確立した手法は別の分野では機能しないということも当然あります。
だから利用者のためにも誰が何を出来るのか、逆に出来ないのかを明確にすることが大切だと考えてきました。
ところがメンタルヘルスの分野では、このような図を示しても「全部」出来るという専門家が多いのです。
より難しいものを扱っているからそれより簡単なものは当然できるという印象でしょうか。
「心の専門家」とされる方々は実はストレスの専門家ではありません。
ましてや広義のストレスケア、人間学としてのストレスケアは別分野だと言ってもよいでしょう。
心が傷ついた方、心にトラブルを抱えた方の支援と、健康な方が前向きに人生を送るうえでかかる負荷(ストレス)に向き合って乗り越えていく支援は同じではありません。
たとえば、私は企業の社長や、従業員の方との面談を定期的に行っていますが、経営や仕事に深く関わる内容となっており、心理の枠では収まりません。ましてや「傷つけない」ということが主眼でもありません。
ストレスは心と身体を一体として扱い、さらには個人と環境要因の関係性を考察していきますので、原因を利用者の方の心の中に求める手法とはかなり異なります。
また必要に応じて特定のボディワーク(リラクセーション法)も駆使していきます。(心理の分野では身体接触はタブーになっております)
そして、むしろ心を見つめすぎてこだわることの弊害を訴えており、具体的で主体性のある行動選択についての支援になります。
自分の専門を語り出せば、誰しも切りがないでしょう。
ここで言いたいのは「全部できる」と言う人がなぜいるのかという問題です。
そこには国家資格(公認心理師)の成立もからんで、どうも利用者のニーズではなくて、専門性を上下関係で見ているのではないかと危惧するのです。
私の師が何でもできるというのは何も出来ないことと同じだと言っておりました。私は心の問題を抱えている人は精神科や提携している地元の臨床心理士に紹介するようにしております。
これからも「全部できる」「なんでもできる」と言ってくる人のなぞを考察していきたいと思っております。
もっとこの業界は成熟しないと利用者は途方にくれるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?