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帽子は手放せない

 

 癖毛というのか天パーというのか、おまけにアホ毛も目立ち、寝癖がつくとなかなか元にもどらず、片方角の折れた鉄腕アトムみたいになってしまうことも屡々なのだ。


 そんな訳で。帽子は必須アイテムである。

 この夏は、シュマグをイスラムゲリラみたいに頭に巻いていたのだが、最近は専らワッチキャップである。が、それもチト飽きてきたところ……引き出しの奥から、買ったことも忘れていたキャスケットが出てきたのだ。
 たぶん、多少は金回りに余裕がある頃に購ったのだろう……アメリカ製の黒のスエードの、なかなかご機嫌な奴であった。しめしめ……この冬はこいつで行けそうである。

 思えば、ガキの頃は帽子など大嫌いであった。幼稚園の頃の帽子、小学生時代の体操着の帽子……特に高校あたりでは学生帽がウザッタク、校門を潜る時だけ、チョコンと頭に乗せていたくらいである。なにせ、色々うるさい学校で、校門あたりで教師が見張っていたのだから……

 そんな僕であったが、たぶん……小説を書くようになってからだろうか、性格がどんどんと捻くれてゆき、それと並行するみたいに癖毛も気になり出したのだ。
 元来面倒臭がり屋の身としてあれば……床屋の類いは二十歳過ぎてから二、三回位しかお世話になっていない。基本、のび放題だし……あまりうるさくなるとカミソリのついたヘアカッターでジャキジャキ切ってしまうのだ。多少切りすぎても……ま、じきに伸びるだろうという楽観であった。
 
 中には、ドライヤーを使って丹念にセットする御仁も多々いるのだろうが、僕は真っ平である。伸びすぎたなら後ろでポニーにするし、前髪がうるさければ、カチューシャを使う。

 取り合えずは伸び放題が基本だったのだが……いかんせんその分洗髪が厄介なのだ。えい!……とばかり短くカットしたはいいが、どうもカッコがつかない。シュマグを巻き始めたのもこれが切っ掛けだったと思う。

 いずれにしても、帽子さえあれば、寝起きの髪そのままでも、なんとかなる。勿論、ワックスなんぞも使ってはいるが……なんとか様になるのは一時なのだから、やむを得ない。

 しかし不思議なもので、帽子が習慣になってしまうと……つい被るの忘れて外出ようものなら……何というのか、パンツを穿かないでジーンズを身に着けているような不自然を覚えてしまうのだ。誠に居心地が悪く、落ち着かない。

 てな訳で……この冬は、偶然見つかったキャスケットで癖毛を押さえ込む予定である。庇をちょっと傾け、利き目である左目でよく物が見えるように被る。これが僕の定番である。

 さて……チャリに乗って、ちょっと走り回ってくるか……

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