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父の昔の悔しさを癒しお別れする熊本の旅

先日熊本へ旅行した。父は、あまり長い間歩くことができないので今回の旅行は、宿を楽しむということで温泉が充実した宿を選びチェックイン15時を目指しチェックアウトも11時の予定で行程を組むことにした。滞在時間が長めなのでホテルに行く途中で部屋での飲み物とお菓子を買い出しした。いつもビールの銘柄にはあまりこだわりがない父が珍しくこの時ビールの銘柄の希望を言った。父は2つの銘柄のビールを希望した。

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うちの父は、金の卵世代で苦労をしたらしい。家も貧乏でお金が足りなくなると親から親戚にお金を借りてくる様言われた事も多々あったそうだ。子供だと貸してくれる事をわかって意図的に俺が行かされてたと父曰くである。新聞配達をしそのお給金は全て家に入れていたそうだ。5人兄弟の4番目。高校を出ず働きに出たのは父だけだ。そうなったのはどうしてなのだか父は語ろうとはしない。


少し観光して早めにホテルに入った。少しゆっくりして温泉に入ろうという事になった。

私と母は、もちろん温泉を楽しむため到着後少しゆっくりして温泉に向かった。岩盤浴などもあり2時間ほどゆっくり温泉を楽しんだ。

温泉から出てきて部屋に戻ると父はビールを飲みながらピスタチオを食べていた。ピスタチオは、どうしたのだろうと聞くと父は話し始めた

「一番上のお姉ちゃんが働き始めた頃土曜日にビールとピスタチオを買って来て一人で家で飲んでたのをみてたんだ。お姉ちゃんに欲しいとせびると働いて自分で買いなさいと言われとにかく悔しかったんだ。それを思い出したので今回の旅行では、部屋でゆっくりビールにピスタチオを堪能しようと思って買って持っておいたんだ」

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その姉は昨年亡くなった。いろいろ事情があり私もそのおばさんとは20年以上会っていなかった。その間おばさんは離婚し子供と二人で狭い部屋で暮らしていたようだ。病気になり働くこともできず近所付き合いもなく子供はバイトをしながら暮らしていたという。その子から昨年突然連絡が欲しいとのメッセージが来た。聞いた連絡先に電話をした父は、姉が亡くなったことを知った。全く近所付き合いもなく、親戚づきあいもなかった為誰に連絡していいのか分からず葬儀の仕方もそして葬儀をするお金もなく困って連絡が来たようだった。

父が葬儀を取り仕切り姉・兄・弟含め親戚に連絡しみんなで見送った。今後のことについては、その子にどういう方法があるのか色々伝えゆっくり説明しどうしたいか考えるように諭した。父はその時その子が礼服がないというので買ってやり自分が持っている数珠を一つプレゼントし大事にするようにと言っていた。とても優しかった。最後に年末年始や困ったことがあったらこれからは、自分に連絡するようにと声をかけていた。姉を弔うよりも残された子供が一人にならないように後悔しないようにと親戚付き合いのない子に細かいことまで伝えることで精一杯だっただろう。押し付けがましくないように本人の意思を尊重するようにと注意しているように見えた。

そんなことが去年あり父はもしかしたらこの旅のこのホテルの部屋でビールにピスタチオを食べながら静かに姉を弔っていたのかもしれないと思った。銘柄を希望したビールの1つはあの時姉が好きだったピスタチオの隣にあったビールだったのかもしれない。葬儀の中、子供のことを優先し親戚との連絡をし色々な手配を取り仕切り弔うことがきちんとできなかった父はやっと弔いの時間を取れたのかもしれない。孤独な姉が唯一何かあった時に連絡するようにと言ったのが姉でも兄でもなく弟のじぶんだった。そのありがたさと信頼の重さを感じながら….

旅には色んな形がある。観光をする。その土地の歴史を知る。いつもと違う経験をする。温泉でゆっくり・おいしいものを食べるなど様々だ。

そして今回の父の様に時間と空間と知らない土地にいるという安心感と開放感を感じて自分を整理する旅というのもいいのかもしれない。

#旅行 #親孝行 #旅 #温泉


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