リレーで抜かれた時の気持ちは大人になっても忘れられないものです。

わたし、
リレーでぬかれた事は何度もあります。
でもぬいた事って、
考えてみたら人生で一度もない…。

足がね、遅いのです。
それに輪をかけて
小学生のころはムチムチに太っていたので、まあ、仕方ないのです。

自分がぬいた事がないもので、
誰かをぬくという気持ちは
想像しかできません。


しかし、ぬかれた時のあの気持ちは、
経験しないと分からないものだと思います。

じわじわ、じわじわ、
後ろから自分につめよってくる相手。

もはや恐怖。
後ろなんて振り向いていたら
余計遅くなっちゃう。

そんなことは、分かっている!
だから、
死ぬ気で走ります!
だって自分ひとりの
バトンじゃないんだもの!


わたしが今、ここでぬかれたら、
みんなに迷惑がかかっちゃう!
いやだ!いやだ!いやだ!

くるな、くるな!
なんでなんでなんで!!!
頑張ってるのに!

どんなにわたしが足を動かしても、
足の速い人に教えられた通り、
腕を振って走っても、
どうしても、どうしても、どうしても。


自分よりも後ろから来てるはずなのに、
風のように前を走り去る相手を、
うらめしく思ってしまう事も何度もありました。

みんなのバトンを持って走る。

足の遅い小学生のわたしには、
その事だけでも過酷なことでした。

そして、先日。
うちの娘の小学生生活最後の運動会が
ありました。


六年生なので、
トリのリレーは盛り上がります!


わたしと同じで、
走ることが本当に苦手な娘です。
まるで娘のドキドキが自分に乗り移ったように、わたしの手は震えが止まりませんでした。
(一緒に見ていた、母親も同じでした。)

まもなく娘の番。
走者として、待つ場所が、
前へ前へと近いてくるのです。


そして、
娘にバトンが渡される2.3人前。
娘のチームは大きくリードして一番だったのですが、
ここにきて、その差が
だんだん縮まってきました。

もはやそれは、恐怖。
わたしの心は、
小学生の自分が、
そのにいるのでは?と思うほど不思議な既視感を感じていました。


いざ、娘にバトンが渡されて。
そして、
小学生のわたしも走った同じグラウンドで
娘もわたしと同じ…。


なんとも言えない、
あの経験をしていました。

むすめ、頑張れ!頑張れ!
わたしは今、
あなが感じている恐怖が分かる!
逃げてしまいたい気持ちも分かる!
みんなに謝ってしまいたくなる気持ちだって、知っている!
でも、頑張れ!
ちゃんと思いっきり、頑張れ!!

わあ!っと盛り上がる歓声の中、
後ろから来たはずの相手にどんどん差をつけられる娘。

あれは、30年前のわたし。


もう、涙で前が見えません。


ひとり、涙をぼろぼろ流してしまったわたしは、観衆の中から姿を消しました。


ぬかれても、さらに差をつけられても、
それでも走り続けなくてはならない。

大丈夫。大丈夫。
今感じているその気持ちは、
この先必ず役にたつから。

くそお、くそお、って、
自分をせめて、それでまた、
強くなるよ。

勝つとこも、勉強。
負けることは、もっと勉強になるよ。

娘に心で話かけているつもりだったけど。
もしかしてわたしは、
小学生の自分に言っていたのかもしれません。


「運動会が、お菓子作り大会だったら、
上位狙えるのに!」
「本当だよね!」

帰ってきて、
娘とそんな風に冗談を言いながら
わたしはひとり、思いました。

心が震えるほど、
最高の運動会をありがとう!
あなたの必死な姿にはいつも打ちのめされる。

気分をきちんと切り替えて、
泣きたい気持ちをちゃんと堪えていたのも
見ててわかったよ。

よく、堪えたね。


いつの間に、あんなに大人になったのか。

そんな成長を感じさせてくれた、
娘の小学生最後の運動会。

それは、
わたしにとって、
忘れられない運動会になりました。



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